20/05/09
介護保険料を滞納した人の末路
誰もが40歳になると介護保険の加入者となります。介護保険に加入することで、今後介護が必要になった時に自己負担分の支払いだけで介護サービスが利用できるようになるのです。だからこそ、介護保険料を納めることは大事な義務なのですが、時に滞納してしまう人がいます。では、介護保険料を滞納するとどうなってしまうのでしょうか?時系列で見ていきましょう。
介護保険のしくみと保険料
介護保険とは、介護を社会全体で支え合うしくみとしてできた保険制度です。40歳になるとすべての人が加入します。65歳以上は第1号被保険者、40歳~64歳は第2号被保険者として区分されます。
介護保険サービスは、要介護認定を受けることで利用できるようになります。要介護認定は市区町村の介護保険を担当する窓口、もしくは、地域包括支援センターに申請します。要介護認定を受けたら、担当のケアマネージャーがケアプランを作成してくれて、介護サービスの利用がスタートします。要介護認定は、要支援1~2、要介護1~5の7段階となっています。
介護サービスは、要介護度によって1ケ月あたりの利用限度額が決められています。また、利用者の所得によって自己負担の割合が変わります。通常は1割負担ですが、受け取る年金額が多かったり、年金以外の収入があったりと所得が多い人は自己負担割合が2割、もしくは3割になります。また、1ヶ月あたりの利用限度額を超えた場合は全額自己負担となるので注意が必要です。
介護保険に加入すると介護保険料を支払いますが、会社員は加入する健康保険と一緒に給与天引きとなり、自営業など国民健康保険の加入者は、国保の保険料と一緒に徴収されます。65歳以上の年金を受給している人は、年金の受給額が年額18万円以上の人は年金からの天引きとなり、年額18万円未満の人は送られてくる納付書で支払います。また、手続きをすれば口座振替も可能です。
介護保険料を滞納するとどうなる?
介護保険料が給与や年金からの天引きになっていればいいのですが、納付書で納めている場合、期限内に支払いができないことがあるかもしれません。また、口座振替でも口座への入金がなければ引き落としができなくなります。このように、納付期限内に介護保険料が支払えず滞納してしまうケースが起きています。
介護保険料は納付期限までに納めないと、その翌日から延滞金が加算されます。そして、市区町村から督促状が届き、場合によっては郵送や電話、訪問などによる催告が行われます。それでも滞納を続けると、滞納処分として財産の差し押さえが行われるのです。また、介護サービスに給付制限(本来のサービスが制限され本人負担が増える措置)が課せられます。
では、介護保険料を滞納したらどうなってしまうのでしょうか。給付制限を時系列で見ていきましょう。
●1年以上1年半未満の滞納
1年以上介護保険料を滞納すると、介護サービスを利用する際、本来なら自己負担分のみの支払いで済むところ、全額自己負担になってしまいます。ただ、後から申請すれば、給付制限になっている分(1割負担の人は9割、2割負担の人は8割、3割負担の人は7割)が払い戻されます。申請で払い戻されるとはいえ、先に全額を自己負担しなければいけなくなるのは金銭的にきびしい措置ですね。
●1年半以上2年未満の滞納
介護保険料を1年半以上滞納すると、さらに給付制限がきつくなります。1年半未満の滞納では介護サービスが全額自己負担になっても、後から申請すれば払い戻しがありました。けれども1年半以上滞納した場合は、本来払い戻される分から強制的に滞納する介護保険料が差し引かれるようになります。つまり、結果として介護サービスが高額になってしまうのです。
●2年以上の滞納
介護保険料は給付期限を過ぎて2年経過すると時効となります。時効になると、滞納した分は後から納付できなくなります。また、時効になった期間に応じて一定の間、介護サービスの自己負担の割合が引き上げられます。1割・2割負担の人は3割負担となり、元は3割負担だった人は4割負担になってしまうのです。さらに、1ヶ月間に支払った介護サービス費が一定額を超すと超えた分が払い戻される「高額介護サービス費」の利用が停止となってしまいます。
こうして介護サービス費の負担が非常に重くなるばかりか、場合によっては滞納処分で財産を差し押さえられることもある点は留意しておきましょう。
介護保険料を払えない場合は減免も
失業などで収入が大幅に減った、生計を担う人が死亡や病気で収入が著しく減少した、あるいは災害によって損害を受けた場合など、特別な事情があるときは、市区町村に申請すれば介護保険料が減免、あるいは免除になります。また、生活が非常に苦しい場合、条件に当てはまるケースであれば、介護保険料を減額してくれる自治体もあります。
どうしても介護保険料を納めることができなくなったときは、滞納せずに、すぐに市区町村の介護保険を担当する窓口へ相談しに行きましょう。滞納すればするほど、介護サービスが高額になっていきます。しかし、すぐに相談すれば何かしらの対応をしてもらえるのです。介護保険料の支払いが苦しくなったら、決して放置しないこと。市区町村に相談すればペナルティは避けられることを覚えておいてくださいね。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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