20/10/29
せまりくるAI×データ時代で日本はどう生きるか~『シン・ニホン』
新型コロナウイルスの影響で、ずいぶん世の中の流れが変わりましたね。今後どうなっていくのか誰にもわからず不安が募る一方です。閉塞した社会の中で目指す方向性を見失ったという人が増えており、かくいう私も途方に暮れています。
これまで考えもしなかったニューノーマルが打ち立てられつつある中で、日本そして世界はどうなっていくのか、自分はどう行動していけばいいのかを悩んでいる人に指針を示してくれるのが、今月ご紹介するこの本。
444ページもある分厚いビジネス本ですが、発行部数は発刊8ヶ月で13万部を超えています。
映画『シン・ゴジラ』の決めゼリフ
少子高齢化や年金問題、一極集中による地方の衰退など、重い課題を抱える日本社会。国際的な競争力も落ち、もはや誰も経済大国と呼ばなくなりました。目覚ましい躍進を遂げる米国、中国、インドとの発展力の差は広がるばかりで、お先真っ暗のように思えます。
ただ、現状がひどいということは、逆に伸びしろが大きいということにもなります。
著者は、『シン・ニホン』という題名を映画『シン・ゴジラ』からとったそうです。本文中にゴジラは登場せず、パニックシーンもありませんが、竹野内豊さん演じる総理大臣補佐官の「この国はスクラップ&ビルドでのし上がってきた。今度も立ち上がれる」というセリフがこの本のテーマとなっているからです。
戦後の荒廃から何度も立ち上がって「JAPAN as NO.1」と呼ばれるまでになった日本。きっとこれからも持ち直せるに違いないという観点から、現行の課題整理や未来を創る方法が示されます。
せまりくるAI×データ時代
急速に進化を遂げる情報科学技術。これからはビッグデータと人工知能を掛け合わせた「AI×データ」が世界を劇的に変えていくといいます。
その流れに乗るためには「ビッグデータの活用能力」と「データ処理技術」、そして「サイエンティストとエンジニア」が必要ですが、日本はどの要素も満たせていません。グローバルなビッグデータを持つGAFAのような企業はなく、世界トップレベルの情報科学系の人材もいないのです。
それでも、日本の持つ車や家電などの実用的な技術やロボットに関するデータは大きな強み。「AI×データ」の活用により日本の再生が期待できます。将来それが可能となるように、長期的ビジョンによるリソース配分と人材育成が国の緊急の課題になっています。
とりあえずやってみよう精神で
ウィズコロナ時代に入り、先の見えない毎日がいつまで続くのかと漠然とした焦りを感じている人は多いでしょう。途方に暮れて悲嘆したくなりますが、より良い未来に向けて現状を変えるには、今できることをするしかありません。
AI技術の進歩につれて「AI vs 人間」の構図が注目されています。AIが人間の敵という意味ではなく、「AIを使いこなせるかそうでないか」が問われるということです。AI活用に必要なスキルは、情報科学の知識を持つデータサイエンス力やデータを使いこなすエンジニア力、データでビジネス課題を解決するビジネス力。そういった専門的な能力だけではなく、母国語、世界語、問題解決能力といった基礎的な力も必須となります。
AI×データ時代に求められる人材は、夢をデザインし、複数の領域をつないでカタチにできる人。ビッグデータでは拾えない自分のニッチな発想で社会を進歩させることができるかもしれません。悩んで動かないだけでは事態は何も変わらないため、とりあえずやってみようという精神が大切です。
日本は目下厳しい状態にありますが、嘆くよりも将来に目を向けて立ち上がろうという本書の対応策には、希望とやる気が生まれます。
現状を踏まえて未来を予測し、行動することは成功要素の一つ。鬱々とした日々を送る人に、問題点を整理することで現状の不安を払拭させ、未来への目標を明確にする助けとなる一冊です。
『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』
(ニューズピックス)
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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