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20/07/19

トレンド

メモによって自分を知り、人生のコンパスを持つ『メモの魔力』

2019年に最も読まれ、今なお売れ続けているビジネス書『メモの魔力』。著者の前田裕二さんは、本文中で
“僕にとって、メモとは生き方そのものです。
メモによって世界を知り、アイディアが生まれる。
メモによって自分を知り、人生のコンパスを持つ。”
と語っています。
メモが世界や人生に結びつくなんて、ちょっと壮大すぎる気がしますね。でもこの本を読むと、著者の言葉に納得できます。

「記録」ではなく「気づき」のためのメモをとろう

ひとつのことについてメモを100個以上取ることもあるというメモ魔の著者。彼のメモの取り方は独特です。
ふつう、メモといったら実際に起こったこと、つまり「ファクト(事実)」を書き留める「記録のためのメモ」ですが、著者はファクトのほかに「抽象化」と「転用」も書き加えます。

「抽象化」とはファクトについて「なぜ?」と考えること。深掘りしていくことで気づきが導き出され、ファクトがアイデアに変わります。さらにそのアイデアを行動につなげることが「転用」。メモから生じた気づきをアクションに移す作業は、自分の考えを現実化させることになりますね。

このように<ファクト→抽象化→転用>という一連の流れから新しいアイデアを生み出すのが、著者流「知的生産のためのメモ」の取り方です。

自己分析してやりたいことをはっきりさせよう

メモは自己分析をする時にも有効です。「自分はどんな人間か?」「どうなりたいのか?」と自問すると漠然とした答えが出ますが、そこで終わらずに「なぜそう思うのか?」と深掘りしていくことで、本当の自分の内面が見えてきます。さらにそこから自己実現のためにとるべきアクションもわかります。

例えば、「自分の長所」について分析する場合、「がまん強い」と答えた場合には(ファクト)、「なぜ自分はがまん強いのか?」というように「なぜ?」を繰り返すことで(抽象化)、自分の本質が浮き上がってきます。自己分析を重ねることでやりたいことが明確になり、具体的に行動に移す(転用)ことができるようになるのです。

また、メモを書くことは夢の実現化につながります。よく「夢は口に出したり紙に書いたりすると叶うもの」と言われますが、それは単なる言い伝えではなく、きちんとした理由があります。夢という願いを強く持つことで、達成方法を考える問題意識が芽生え、周囲がそれを知ることで、サポートしてくれる確率が上がるというわけです。

このように、知的生産のためのメモの取り方を活用すれば、自分をより深く知ることになり、夢を叶えるための一歩を踏み出すことができます。

メモの取り方より大切なこと

記録のための簡単なメモに慣れている私たちにとって、知的生産のためのメモを取るのは少し面倒ですが、どんなことでもできるだけたくさんメモしていくことが大切。次第に本やテレビ、映画といった情報コンテンツや「世の中で流行っているもの」「自分がいいと感じるもの」といったさまざまな内容に応用できるようになります。
ものごとを抽象化することで本質を見分けることができるようになると、目標達成能力がぐんと向上します。

身の周りの情報から知的生産を行いたいという気持ちが強ければ強いほど、たくさんメモを取ろうとし、より多くの気づきが生まれます。この本には知的生産を生み出すメモの取り方が解説されていますが、いいアイデアを得るためには、なによりもまずメモへと向かう自分の情熱が大切だということがわかります。

メモは、事実を掘り下げて考えることで、クリエイティブなアイデアが見つけられる宝の箱。活用次第で大きな自己実現ツールになりえるという、メモの隠れたポテンシャルを知る内容になっています。

『メモの魔力』
(幻冬舎)

小野寺 理香 おのでら りか

読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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