20/08/02
学生時代の年金保険料未払いはヤバい! 年金額が10万円近く減る
「大学生は収入がないんだから、国民年金の保険料は自動的に免除されている」と思っていませんか?それは大きな勘違いです。大学生であっても20歳以上であれば国民年金の保険料を納付する義務があります。その大きな勘違いが、将来の年金額にどんな影響を与えるかを計算してみましょう。
また、2019年10月から国民年金法施行規則の一部が改正され、20歳になる人の国民年金加入手続きの見直しがありました。今回はその改正内容と、国民年金保険料を払えない学生の救済措置である「学生納付特例制度」についてもご紹介します。
学生でも国民年金の保険料を納付しないといけない
国民年金法では、「日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者」は、国民年金の被保険者になるとしています。つまり20歳になったら強制的に加入することになっていて、職業や収入額に関係なく保険料の支払い義務が生じます。ですから、大学生であっても20歳を迎えた月分から、国民年金保険料1万6,540円(1カ月)(令和2年度保険料額)を納めないといけないのです。
例えば、2000年8月10日生まれの人なら、学生であっても、2020年8月分から国民年金保険料を納めないといけないことになります。
ただし、厚生年金に加入している人は、国民年金保険料を払う必要はありません。
2019年10月から何が変わった?
2019年9月以前に20歳になった人は、自分で国民年金の加入手続きをしないといけませんでしたが、2019年10月以降に20歳になった人は、手続きをしなくても、「国民年金加入のお知らせ」、「国民年金保険料納付書」などが届くことになりました。つまり、20歳になると自動的に国民年金に加入したことになるのです。
なので、20歳になったときに、配偶者の扶養となっている人は、配偶者の勤務先に連絡をし、国民年金第3号被保険者の手続きが必要となります。
保険料を納めなかったら将来の老齢年金はどれだけ違うか
納付書が届いているにもかかわらず、「大学生は国民年金保険料を払わなくていい」と勘違いして無視した場合、保険料を納めなければならないのに納めていないこと(未納)となり、将来65歳から受け取る老齢基礎年金の額は、満額からその納めていない月数分減ってしまいます。
以下に具体的な金額を示しましょう。
●保険料をすべて支払った場合
65歳から受給できる老齢基礎年金の年額は、単純に20歳~60歳の40年間480カ月の間に納めた保険料の月数で決まります。
計算式は、年金を受け取る年の老齢基礎年金の満額に納付月数をかけます。学生の間の国民年金保険料もしっかり納めていた場合、令和2年度の老齢基礎年金の満額は、78万1,700円なので、78万1,700円×480カ月/480カ月=78万1,700円となり、年間約78万1,700円の老齢基礎年金を受け取ることができます。
●20歳から22歳になった3月の大学卒業まで保険料を払っていない場合
浪人せずに大学入学した8月生まれの人が、22歳の4月に就職して厚生年金に加入し続け60歳を迎えました。しかし大学生の間の国民年金保険料を納めなかったら、65歳からの老齢基礎年金額はいくらになるのでしょうか。
令和2年度の満額、78万1,700円で考えると次のようになります。
78万1,700円×(480カ月-32カ月)/480カ月≒73万円となって、満額と比較すると年間で約5万2000円少なくなります。
●2年間浪人して大学に入学し、24歳の4月から働いた場合
同じく8月生まれの人が、2年浪人して大学に入学し、20歳から24歳で卒業する3月までの国民年金保険料を納付しなかった場合は、
78万1,700円×(480カ月-56カ月)/480カ月≒69万円となり、年間約9万2000円も減ってしまいます。
この人が90歳まで生きたとすると、9万2000円が25年間もらえないのですから、満額受給していた場合より合計で約230万円も少なくなってしまうことになります。
収入がある程度見込める間の年間9万円は、それほど大きくない金額かもしれませんが、全く労働収入がなくなって、年金だけが頼りとなってからの年間9万円は暮らしに大きな影響を与えます。
未納保険料は、2年しか遡って納付できないので、収入が安定したからと30歳になってから未納分を納付したいと思っても、それはできません。
学生納付特例制度の申請を忘れずに!
収入が全くない大学生に、月1万6000円以上(令和2年度の国民年金保険料は1万6,540円)の保険料が払えるわけがないと思いますよね。そのために、救済措置として「学生納付特例制度」があります。
「学生納付特例制度」は以下の要件を満たしている学生を対象とした、国民年金保険料の納付が猶予される制度です。
・大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校、専修学校などに在籍していること
・前年所得の目安が、118万円+扶養親族等の数×38万円以下であること
つまり独身で、アルバイト収入しかないなら、年収183万円以下(平成31年度の場合)の大学生などはこの特例を申請することができて、承認されるとその間は保険料を納める必要がなくなります。その上、10年以内であれば国民年金保険料を遅れて納付(追納)することができるので、30歳までに過去の分を納付すれば、将来の老齢基礎年金を満額にすることが可能です。
日本年金機構「学生納付特例制度のポイント」(令和2年度版)より
学生納付特例制度への申込み方法
2019年10月以降に20歳になった人には、「国民年金加入のお知らせ」などと一緒に、「学生納付特例制度の申請書」が送付されます。国民年金への加入は手続き不要となりましたが、学生納付特例制度を利用するなら自ら手続きをしなければいけません。このタイミングで申請しておきましょう。なお、申請は毎年度必要です。
もし申請を忘れてしまっている場合でも、2年1カ月前までさかのぼることができます。
例えば:令和2年8月に、平成30年4月から令和3年3月までの期間を申請したい場合、
①平成30年度分(平成30年7月~平成31年3月)
②令和元年度分 (平成31年4月~令和2年3月)
③令和2年度分 (令和2年4月~令和3年3月、将来期間は年度末まで申請可。)
の3枚の申請書が必要となります。
お気づきのとおりこの例では、平成30年6月以前は時効により「学生納付特例制度」への申請できません。また、未納保険料は、2年しか遡って納付できないので、残念ながら、平成30年4月から6月までは未納となってしまいます。早めの手当がとても重要であることがわかってもらえると思います。
申請書の提出先は、住所票を登録している市区町村役場の国民年金担当窓口、または年金事務所です。 在学している学校等に学生納付特例事務法人が設置されている場合は、学校等に申請書を提出することもできます。
まとめ
大学生のときは将来の年金のことなど全く考えもしていなくて、今の暮らしが精いっぱいなのはよくわかります。でも50歳以降の方の相談を受けていると、大学生のときに支払っていなかった国民年金保険料を、何とか今から払える方法はないかと相談をされる人が多くいらっしゃいますが、それはありません。
老齢基礎年金の魅力は「一生涯、死ぬまで受け取るができる」という安心感です。その安心を、若い時代の勘違いから失うことがないようにしてほしいと願っています。
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小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。
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