20/05/24
年金が減額になる「繰上げ受給」、あえて繰上げ受給すべきなのはどんな人?
現在の年金制度では、年金がもらえるのは原則65歳です。
しかし、もう少し早くもらいたいという人には繰上げ受給、まだまだ支給は後でもいいという人には繰下げ受給という制度があります。
繰上げ受給をして受給開始年齢を早めると、毎月の年金額が少なくなります。逆に繰下げ受給をして受給開始年齢を遅らせれば、毎月の年金額が多くなります。
65歳からもらうか、早めるか遅らせるか悩むところです。
そこで、繰上げ受給について理解をし、どのような人が繰上げ受給を選択したら良いかを考えていきたいと思います。
繰上げ、繰下げ受給の制度を確認
国民年金から支給される老齢基礎年金を原則の65歳から受給開始している人の受給額の満額は年額で78万1700円、月額だと6万5141円(令和2年度)です。ここを基準に繰上げ受給と繰下げ受給を選択することができます。繰上げは60歳から、繰下げは70歳までできます。
繰上げ受給を希望する人は、1か月ごとに0.5%ずつ減額されます。仮に65歳から満額受給できる人が60歳から受給する場合、0.5%×60か月(5年)=30%が減額されます。年額で54万7190円、月額では4万5599円となります。
反対に繰下げ受給を希望する人は、1か月ごとに0.7%ずつ増額されます。同様に70歳から受給する場合、0.7%×60か月(5年)=42%が増額されます。年額で111万14円、月額では9万2500円となります。
総額でどのくらいもらえるの?
一見、繰下げ受給の方が年額が大きいためお得に感じますが、もらえる総額が肝心です。繰上げ受給をすれば、当初は繰下げ受給よりも年金額は多くなります。しかし、長生きすると、やがて繰下げ受給の年金額が繰上げ受給の年金額を追い抜きます。
何歳まで生きるかがわかれば、計算しやすいのですが、残念ながら寿命は神のみぞ知るです。ですから、おおよその計算をしてみたいと思います。
本来年金額は物価スライド制で変動するため、今後もらえる金額を確定することがはできませんが、令和2年度の国民年金の満額、年78万1700円を基準にもらえる総額を表にまとめてみました。
75歳時点では、まだ繰上げ受給をした人がもっとも年金を受け取っています。しかし、80歳時点では65歳から受給した人、85歳時点では70歳から繰下げ受給をした人の年金の総額がもっとも多くなるのです。
つまり長生きするならもらえる総額は繰下げ受給をした方がたくさんもらえるという事になります。
繰上げ受給に向く人は?
とはいえ、このような計算で年金受給年齢を考えようとしても、寿命がわからないため運試しのようになってしまいます。長生きの自信があったり、年金をもらわなくても十分な収入があったりすれば繰下げ受給も良いと思います。また、いつでも受給開始ができるので気持ちは楽です。
繰上げ受給となると、一度受給を開始してしまえばずっと低い年金額のまま固定されてしまうため悩むところですが、以下のような人は繰上げ受給すべきだと思います。
①働けない人
体調や環境によりこれから収入を得ることが難しい人は早めにもらって生活の安定を図っても良いでしょう。
②充分な貯蓄がある人
充分な貯蓄があり年金に頼らず生活できるのであれば、早めにもらって貯蓄の減りを遅らせるのも良いでしょう。
③お金の運用をしたい人
まとまった自分の資金を運用に回して将来の生活に備えたいのであれば、年金を早めにもらって生活費に充てると良いでしょう。
④年金額が少ないと得する人
年金の金額が大きいと税金や介護保険や健康保険の社会保険料の負担が大きくなります。
年金額が少ないことで税金や社会保険料が少なくなったり、別居であっても子の扶養に入れたりすることもあります。その場合は年金額を少なく抑えるため、繰上げ支給を選択すると良いでしょう。
⑤自分の寿命が短い可能性がある人
健康状態に不安があったり、持病があったりして寿命が短い可能性がある人は早めに受給しても良いでしょう。
繰上げ受給の注意点は?
繰上げ受給には、年金額の減額以外の注意点もあります。
繰上げ受給を開始してしまうと、障害認定を受けても障害基礎年金を請求することができません。また、受給開始後配偶者が死亡してしまった場合は、65歳までは遺族年金か自分の年金のどちらか多い方の支給になるため、遺族年金が多い場合は自分の年金をもらう事ができません。さらに、もらえるはずの寡婦年金がもらえない(すでに寡婦年金を受け取っている人は支給停止)になってしまいます。
金額ではなく生活の質を考える
年金は単純に年額の損得ではなく、自分の老後生活を支えるためのものとして考えるといいでしょう。そのためには自分や配偶者の現状を把握することが必要です。
健康面、精神面、環境面、経済面、税金面などの多方面から現状を把握しましょう。もらえる総額の損得を考える前に、「生活の質を保つために年金を活用する」という意識が大切です。
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廣木 智代 ファイナンシャルプランナー(CFP)
結婚後、家業のスナックで手伝いをしていたが母の引退と共に廃業。家計の苦しさを埋めるための我が家の保険の見直しをきっかけに、お金に賢くなるお手伝いをするべくCFP資格を取得。心と体とお金の健康バランスを軸に、個別相談、セミナー、執筆を展開中。最近はラジオCRT栃木放送にて「賢くなる座談会」を放送中。FP Cafe登録パートナー
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