20/07/27
60歳貯蓄ゼロ・退職金の残金ゼロの人が取るべき生存戦略はコレだ
60代は、もっとも貯蓄金額が多くなる年代です。それは退職金とか保険などの積立金が満期になる時期だからでしょう。
金融中央広報員会「知るぽると」の「家計の金融行動に関する世論調査(令和元年)」によると、60代の平均貯蓄金額は2203万円です。
「えっ、そんなにあるの!では、老後資金2000万円問題は大丈夫な話なんだ。でも、本当かな?」と思ってしまいますね。
そうです、この数字はあくまでも平均の数字で、中央値は1200万円です。さらに金融資産を保有していない世帯を含むデータをみると、貯蓄がない人が23.7%、100万円未満が3.5%、100万円〜200万円が4.0%です。
つまり、10人に3人が200万円以下の貯蓄しかありません。定年退職を迎えて、老後資金のことを考えると暗いです。老後のことを考えたくないというのもわかりますね。
では、60歳で貯蓄がなくて、老後はどうすればいいのでしょうか?
ハッキリ言って、このままでは、とても明るい老後を送れるとは言いがたいです。
しかし、安心してください。貯蓄ゼロ、退職金ゼロでも明るい老後を過ごせる方法があります。
詳しくシミュレーションをしながら解説をしましょう。
「スッカラカン」と照れ笑いのAさんの老後は?
ここで、老後資金ゼロ、退職金ゼロというAさんに、なぜゼロになってしまったのか、経緯を伺いました。
Aさんは、電気製品部品の会社の経理課長です。子どもは2人で、やっと2人とも大学を卒業。子どもは2歳違い、二人とも私立の大学だったので、学費だけで蓄えが底をついてしまいました。
しかも、住宅ローンの支払いもあったので、50代は節約をしながら何とか乗り切ったというのが、本当のところです。老後資金は気にはなっていたものの、それを貯める余裕はまったくなかったのです。こんな家庭はけっこう多いのではないでしょうか。老後資金がゼロというのは、けっして珍しくはないといえます。
60歳で定年退職しました。一応、退職金は700万円ありました。しかし、住宅ローンが約650万円残っていたので、退職金を使って全額返済して、残りの50万円は、九州へ温泉旅行に行ってすっかり消えてしまいました。実質、これで退職金もなくなり、貯金もなくなり、ゼロからのスタートです。
「もう、スッカラカンですよ。ハッハッハ」と乾いた照れ笑いをするAさん。
はたしてこの状況から、どうすればバラ色の老後を過ごすことができるのでしょうか? 具体的にシミュレーションしてみましょう。
再雇用で、65歳までに900万円の貯蓄を
Aさんは幸いにも60歳から再雇用されています。収入は月30万円です。妻もパートを続けるので、月に15万円の収入があります。対して、月の生活費は約30万円ですので、これで月に15万円の老後資金を貯められます。
60歳から65歳までの貯蓄額は、15万円×12か月×5年=900万円となります。また、65歳での年金の予定受給額は夫婦あわせて250万円あります。
65歳以降も仕事を続けると
2021年4月から高年齢者雇用安定法が改定されて70歳まで就業機会を確保することが努力義務化されます。Aさんが65歳になるころには、70歳までの仕事を続けやすい環境になっているかもしれません。
ですので、Aさんは70歳まで契約社員で継続をして働いたとします。ただし給与は下がり月額20万円で週3日の勤務です。月10万円で妻も同じく働いています。なんとか毎月の生活費と同じ30万円です。貯蓄を取り崩さずに生活ができます。
次に公的年金を見てみましょう。60歳のときに65歳での受給額が250万円だったのが、65歳まで働いたので、厚生年金が増えています。65歳での受取金額が夫約10万円の増額、妻約5万円の増額ですので、夫婦の受給額が265万円になりました。
なお、厚生年金の増額の簡単な計算方法は下記の通りです(簡易計算で参考例です)
夫:30万円×(5.481/1000)×60ヵ月=9万8658円
妻:15万円×(5.481/1000)×60ヵ月=4万9329円
70歳まで働くと年金が386万円に
65歳以降も働くことができたので、年金は受け取らずに繰下げ受給をすることにしました。70歳まで繰り下げると42%の増額になりますので、受取金額は約376万円になったのです(265万円×1.42%=376.3万円)。
2022年から75歳まで繰り下げることができるようにはなったのですが、さすがにここから繰下げ受給をすると生活費が困ってしまいます。70歳から受け取ることにしました。
65歳から70歳の間も厚生年金に加入しながら働いたので、厚生年金の受給額もアップします。
夫:20万円×(5.481/1000)×60ヵ月=6万5772円
妻:10万円×(5.481/1000)×60ヵ月=3万2886円
夫婦の合計で約10万円のアップになります。繰下げ受給でアップした年金額376万円に、アップした10万円をあわせると386万円になります。つまり年金の受給額だけで月額32万円の収入があります。
60歳から65歳までの間に貯めた老後資金の900万円は、もしもの時の予備費にします。この予備費は、介護が必要になったときに使おうという考えです。もし2人とも介護が不要で元気だったら、美味しいものでも食べるのに使えばいいでしょう。また、まだ考えなくてもいいのですが、葬儀代などでも必要になるお金でもあります。
60歳・貯蓄ゼロ・退職金ゼロからのスタートで、バラ色の老後を実現
Aさんの公的年金は、60歳・貯蓄ゼロ・退職金ゼロからスタートして、以下のように増やすことができました。計算がちょっと複雑になってきているで整理します。
・65歳の夫婦の年金額=250万円(月額約21万円)
・65歳まで働いたので厚生年金が増えて、夫婦の年金額=265万円(月額約22万円)
・70歳まで公的年金を繰り下げたので、夫婦の年金額=376万円(月額約31万円)
・70歳まで働いたので厚生年金が増えて、夫婦の年金額=386万円(月額約32万円)(この金額で受給開始)
・65歳までの貯蓄額=900万円
60歳時点で貯蓄ゼロ・退職金ゼロだったAさんは、70歳まで働き、年金を繰り下げたことで、70歳以降は月額約32万円の年金を受け取れるようになりました。生活費が変わらず月30万円だったとしても、毎月2万円の余裕がある計算です。しかも、貯蓄が900万円もあります。
たとえ60歳の時点で貯金がゼロであっても、長く働くことと、年金をうまく使いこなすことで老後生活はバラ色に変えることが可能なのです。
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長尾 義弘 NEO企画代表
ファイナンシャル・プランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
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