20/04/19
退職金・一時金はこう活用せよ! 老後のお金のプロが教えるダメな使い方・良い使い方
人生の大きな転換点は「定年退職」でしょう。そして、その後の経済的な人生設計は、「退職金」から始まります。
そもそも退職金って何かご存じでしょうか? アメリカなどには、退職金という制度はありません。日本の終身雇用からできたのが退職金制度です。じつは、退職金は給料の後払いなのです。
アメリカの企業は終身雇用という考え方はしていないので、退職金はありません。そのかわりと言うわけではありませんが、401kという日本の確定拠出年金と同じような投資型の年金積立システムを導入しているのが一般的です。海外企業では年収が高いというのも、この退職金制度がないからですね。
日本の企業の退職金は、「終身雇用で長期間働いてくれたので、定年後も困らないように」と、給料を積み立ててくれたお金です。
しかし、その終身雇用も崩れてきたことで、退職金もどんどん減ってきました。とは言え大切な老後資金です。退職金を計画的に使うことは、とても重要です。
退職金の平均額はどのくらい?
退職金は、どのくらいの人が受け取れるのでしょうか。またその平均額とはどのくらいなのでしょうか。
厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」によると、退職金制度がある企業の割合は80.5%です。従業員1000人以上の企業は92.3%、300〜999人の企業は91.8%、100〜299人の企業は84.9%、そして30〜99人の小規模の会社ですと77.6%になります。とくに退職金を出さないといけないという法律はありませんが、社内規定で退職金を出すことが決まっている会社が多いのです。
退職金の金額は、勤続35年間以上の退職一時金制度のみの大卒・大学院卒の場合は1897万円、高卒の管理・事務・技術職の場合は1497万円となっています。
中小企業の場合は、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」によると60歳定年退職のモデル退職金は、大卒1203.4万円、高専・短大卒1106.6万円、高校卒1126.8万円となっています。
NGな退職金の使い方
退職金は、かなりまとまった金額になります。人生の中でも初めて手にする大金かも知れません。さてこの退職金は、どのように使われているのでしょうか?
ダイヤモンド・ザイが行ったアンケート調査では、1位は貯蓄で、2位は生活費として取り崩すというものでした。旅行に使う人も多く、4位に国内旅行と7位に海外旅行がありました。両方を合わせると2位になるでしょう。
大事な退職金、何に使うのがいちばん正解なのでしょうか。私が考える退職金の3つのNGな使い方3つについて解説をしていきたいと思います。
●退職金のNGな使い方1:旅行で使う
現役時代は、まとまった休みというのは取れませんでした。定年を機会に旅行へ行きたいというのは、よくわかります。いままでお疲れ様と言う意味で、自分へのご褒美はいいことですね。それに気持ちの切り換えにもなりますので、それ自体はいいことだと思います。しかし、ここで大盤振る舞いは禁物です。
たとえば、退職金1500万円のうち、思い切って世界一周クルージングに行って、700万円を使ってしまったとします。いい思い出は残ったものの退職金は半分になってしまい、これからの老後の不安が残ったというのでは大変です。
退職金は、老後の大切なお金です。何事もほどほどが一番です。
●退職金のNGな使い方2:金融機関に運用の相談をする
退職金の運用はとても重要だという記事をよく見ます。しかし、運用の初心者には、いきなり資産運用するようにといわれても難しいですね。だれか専門家に相談をしたくなり、銀行などの金融機関に相談をしてしまいがちですが、じつはこれもダメです。
銀行などの金融機関で勧められるのは、手数料の高い商品ばかりです。金融機関も儲けの大きい商品を勧めるのは当然ですね。気持ちはわかりますが、契約者側に立つとそれは不利な商品と言えます。たとえば、「外貨建て変額保険」「退職特別プラン」と言うふれこみの投資信託と定期預金の抱き合わせ商品やファンドラップなどの商品です。これらの商品は、手数料が割高になっています。
さらに、退職金をドンと一括で運用に回すのもリスクが高くなります。失敗したときには、勤労収入がないので、取り返すのはとても困難になります。たとえば、退職金のほとんどをFX(外国為替証拠金取引)につぎ込んで、消えてしまったという話もあります。
老後資金は、とくにリスク分散することが大切です。
●退職金のNGな使い方3:パチンコ・賭け事・風俗
定年後は、毎日が休日です。どうしても時間を持て余し気味です。ついゴルフ、パチンコ、競馬などといったギャンブルやキャバクラなどの風俗といった、楽しめることに走りがちです。女性の場合には、友人たちとのランチなどが増えるということも入ってくるでしょう。
息抜きは大切だと思いますが、あまり頻繁だと無駄遣いになってしまいますね。気がついたら、退職金がかなり減っていた…なんてことにならないよう、注意してください。
Goodな退職金の使い方
3つのGoodな使い方について解説をしていきたいと思います。
●退職金のGoodな使い方1:住宅ローンの完済
人によっては低金利時代に住宅ローンを返済する必要はなく、ずっと負債を持っていた方がいいという意見もあります。しかし、私は、その意見には賛同しません。やはり借金は借金です。住宅ローンは完済するのがいいでしょう。
住宅ローンを返済しないで、退職金を運用し、運用益の鞘当てにするというのは、やめた方がいいと考えます。借金をしながら運用をするというのは悪手です。定年後は勤労収入が低下しているので、運用環境が悪くなったときに元本を減らす可能性があるからです。定年後も住宅ローンが残っている場合には、老後破綻につながる可能性が高くなります。
●退職金のGoodな使い方2:投資
NGな使い方2のところで、「銀行などの金融機関に相談をして投資するのはやめなさい」と述べましたが、退職金の資金運用が悪いと言うことではありません。投資経験が豊富な方が運用するのは賛成です。ぜひ運用をして資金寿命を延ばしてください。
定年後はリスクができるだけ低い運用を心がけるようにしたいですね。もちろん手数料の安い商品を選んで、複数の資産に分散して投資してくださいね。
●退職金のGoodな使い方3:年金の繰下げ受給の資金にする
退職金を年金の繰下げ受給に使うという方法もあります。えっ?と意外に思ってしまうかもしれませんが、とても効果が高い方法です。
年金の繰下げ受給をすると、受給額が年8.4%、5年間で最大42%増額できます。定期預金の金利が0.001%だと考えると、年8.4%増は超効率のいい利回りです。資産運用をするとしても、2〜3%で運用できれば成功という時代です。そういう意味でみると、年金は金融商品ではありませんが、とてもいい運用法だといえます。
私が勧めるのは、退職金を生活資金に回して、年金を繰下げ受給するという方法です。
検討をしてみてください。
まとめ
まさにNGな退職金の使い方をして、失敗したという話はとてもよく聞きます。退職金というのは、余裕資金ではなく大切な老後資金なのです。NGな使い方をした人は、大金が入って舞い上がってしまったのでしょう。
退職金を受け取ったときは、冷静になって、まずは将来のプランニングをしましょう。そうすることで、退職金の本当の使い道が見えてくるでしょう。
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長尾 義弘 NEO企画代表
ファイナンシャル・プランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
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