19/05/10
「退職貧乏夫婦」の4つの罠。退職金持ち夫婦になるには?
「定年退職、お疲れ様でした!」
そしてもらった退職金。
「退職金が1500万円もある!」
人により金額はさまざまですが、こんな大金を持つことは、久しくなかったのではありませんか?
これまでは、教育費や住宅ローンなどと、まとまった金額が出ていくことはあっても、入ってくることはそうなかったはず。まとまった金額が入ってきて感激する方もいるでしょう。
まとまったお金があるというのは、安心します。そして気持ちが大きくなりますね!
しかし、ちょっと待ってください! その至福に満ちた気持ちはわかりますが、冷静になってください。
退職金は「ご褒美」ではないのですから。
退職金を「ご褒美」だと勘違いしていませんか?
退職金の本来の意味は、「給与の後払い」です。企業会計上では「退職給与債務」になっています。
退職金を受け取った人の大きな勘違いとしてよくあるのは、退職金を「余裕資金」と思ってしまうことです。
大きな金額ですから、無理もありません。しかし、退職金は余裕資金ではありません。大切な「老後資金」なのです。
ですから、「余裕資金」だと思っていると「老後貧乏」の道をまっしぐらに突き進んでしまうことになります。
以下、そんな老後貧乏に落ちいった夫婦の例を紹介します。
退職貧乏夫婦の罠1:世界一周クルージングの罠
今度の老後生活に備えて、ここでちょっと息抜き…というのは、もちろん大切なのですが、一気に使うのは禁物です。よくあるのが、仕事が忙しくて長期の旅行などができなかったから、ここで思い切って世界一周のクルージングに出かけよう! というものです。
お気持ちはよくわかりますが、よく考えてください。
世界一周のクルージングですと、200万円ぐらいかかります。夫婦で行くと約400万円です。
退職金が1500万円だったとすると、その約3割近くを一気に使ってしまうことになります。老後、まだ20年、30年とあるにもかかわらず、たった数カ月で使ってしまっていいお金ではないでしょう。
退職貧乏夫婦の罠2:「かわいい孫のために」の罠
「孫破産」という言葉を聞いたことがありますか?
孫の面倒を見るのは、老後の楽しみの一つでもあります。孫と一緒に遊んで「孫疲れ」したという話もよく聞きます。しかし、遊ぶだけならまだいいのですが、孫が可愛いあまりに多額の出費をしてしまい、老後の資金計画が大きく狂ってしまうことがあります。これが、孫破産です。
たとえば、孫が可愛くて子どもの住宅購入の頭金に300万円援助したり、孫たちとの家族旅行のお金を祖父母がすべて負担したり(一家6人、1回で約20万円)した話を聞いたことがあります。
このように、孫のためにいろいろと出費がかさんでいって、気がつくと老後資金がどんどん減っていった。それが「老後破産」への引き金になってしまうこともあります。
孫が可愛いのはわかりますが、ほどほどにしないと身体も資金ももちません。
退職貧乏夫婦の罠3:定年後の独立開業・起業の罠
定年後に夢を実現することは、とてもいいと思います。
「蕎麦打ちが趣味だから、定年後は蕎麦屋を開きたい!」「ずっと商社マンで頑張ってきた人生、海外からの買い付けのノウハウは持っている。定年後は輸入代理店で起業したい!」などと定年後の夢を持って、独立開業・起業する方もいます。
しかし、借金をしてまで、退職金を全部つぎ込んでしまうのは、とても危険です。成功すれば、第二の人生を楽しく過ごせるかも知れませんが、もし失敗をした場合、老後生活が厳しくなります。老後資金は一度減らしてしまうと取り返すことはとても難しくなりますので、ご注意ください。
退職貧乏夫婦の罠4:退職金を運用で増やすときの罠
退職金が銀行口座に入ると、銀行から連絡がくると思います。しかし、だからといってのこのこ銀行に行ってはいけません。
銀行では、外貨建ての保険や、投資信託、または退職金プランという、はじめだけ高利率の定期預金などを勧められます。しかし、これらは決してお得な商品ではありません。手数料が高く元本を減らしてしまうことが多いのです。
また、退職金を「余裕資金」だと考えて、全額まとめて株式投資、投資信託を買って増やそうとする人がいますが、これも危険です。全額をリスク商品につぎ込んで、元本を大きく減らすことになっても、それを取り返すのは難しいのです。
「退職金持ち夫婦」になるには、どうすればいいの?
では、どうすればこれらの罠にはまることなく、「退職金持ち夫婦」になることができるのでしょうか?
大切なのは、退職後のお金の流れを知ることです。具体的には、退職後1年間に入ってくるお金(年金など)がいくらかということと、1年間に出ていくお金がいくらかということ。つまり1年間の収支です。
収支が赤字ならば、退職金などを毎年いくらずつ取り崩していくかのかがわかります。これがわかれば、何年間で貯蓄が足りなくなるのかもわかるということです。あとは、きちんと足りるようにするために、支出をどう抑えればよいかを考えればいいのです。
たったこれだけのことで、まずは「退職貧乏夫婦」になることは避けることができます。
収支の把握は、豊かな退職生活を過ごすための第一歩。ぜひ実行して「退職貧乏夫婦」の道を歩まないようにしてください。
【関連記事もチェック】
・お金持ち夫婦は絶対しない、7つの間違った節約習慣
・お金のプロ直伝「老後資金は貯めるな!」の真意とは(ゲスト:長尾義弘)|マネラジ。#85
・お金持ち定年、貧乏定年。その分かれ目はどこか(ゲスト:長尾義弘)|マネラジ。#86
・株・投資信託で増やすvs公的年金を増やす 老後資金の貯め方徹底比較
・老後資金は貯めるな!公的年金をできる限り増やす裏技は山程ある
長尾 義弘 NEO企画代表
ファイナンシャル・プランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう