24/11/02
中年期は不幸で老年期は幸せ?~『残酷すぎる幸せとお金の経済学』
日々過ごしている中で「ああ、幸せだなあ」「なんて不幸なんだろう」などと感じることがありますね。では幸福とはなにかと問いかけたら「仕事で認められること」「家族が元気でいること」「趣味に没頭すること」など、返ってくる答えは人それぞれに違います。たとえば私は温泉につかったりおいしいものを食べたりしている時に極上の幸せを感じますが、温泉に興味がない人にはどうということではないでしょう。
幸せは主観的なものとして、古くより哲学や倫理学、心理学のテーマになってきましたが、近年では経済学視点の新しい研究結果が次々と発表されています。今回ご紹介する本『残酷すぎる幸せとお金の経済学』では、私たちが日常生活で直面する、お金・仕事・結婚・子育て・離婚・環境・老後といったいろいろな要素がどれだけ幸福度に影響するのかを経済学の理論を用いて解説しています。どうして経済学?と意外に思うかもしれませんが、アプローチを変えたことで驚きの事実が明らかになりました。
女よりも男はつらいよ
幸福の度合いは性別によって異なり、男性と女性で幸福度が高いのは女性の方です。男性は社会や仕事への責任が幸せに影を差し、非正規雇用で年収が低い独身男性は、経済的理由から幸福度が一番低くなっています。また、既婚男性も、離婚や死別でパートナーを失うと一気に不幸度が増してしまいます。
家族構成では、一般的に「子どもは人生を豊かにする」と言われますが、実際には真逆で、子供のいる家族はいない夫婦よりも幸福度や生活満足度が大きく低下するという衝撃的な結果が出ています。親に愛情がないというわけではなく、子供を育てるためにお金と時間がかかるのが原因で、子供の数が増えるほど親の幸福度は下がっていきます。
育児の負担が大きい今の状態のままでは、日本は今後もなかなか出生率が上がりそうにありません。
中年期は不幸で老年期には幸福に!
年齢別の幸福の度合いは、世界145カ国のどの国でもU字型のグラフになるという調査があります。青年期までは楽しく過ごしても、就職活動の頃に厳しい現実に直面して幸福感は下がります。社会に出て収入を得たり結婚したりするとまた幸せになるものの、仕事の忙しさや結婚のしがらみでやがて幸せは減るように。さらに職場で責任が増し、先の人生に夢を見出せず、体力が落ちていく中で親の介護などの深刻な悩みが具体化する中年期には、ストレスや不安で幸福度がどんどん下がり、一番不幸だと感じる年齢は、世界中でほぼ共通して48.3歳頃となっています。しかし、その後はUカーブを描いて上昇していき、日本では82歳以上になると幸せが最高値に達します。中年期の不幸感は心配ですが、その後は右肩上がりに幸せになっていくのは嬉しいことですね。
日本人は将来への不安が強い国民性で、誰もが老年期の生活を心配していますが、統計を見る限りは悲観しすぎなくてもよさそうな気がします。老後の貯金は必要ですが、我慢と節約ばかりせずにさまざまな経験をして人生を楽しむことも、幸福度を上げるために大切ではないでしょうか。
お金と幸福度の複雑な関係
収入が高ければ幸福度は上がりますが、年収1000万円を超えると幸福度はさほど上がらなくなるというのが従来の通説でした。ところが最近の調査で、そうした年収の壁は特になく、財産が多ければその分幸せになるという事実が明らかになっています。つまりお金持ちであればあるほど幸福で、たいていのことはお金で片が付くというリアルな真実が浮かび上がってきます。
とはいえ、出世すれば誰もが幸せになれるわけではありません。管理職に昇進すると責任感の重圧でメンタルを病む人が増えるため、健康を害して不幸になることもあるのです。また、経済成長で豊かになった社会では幸福度は上がりそうですが、逆に子供に負の影響をもたらす可能性があるという結果も出ています。物質的な豊かさは必ずしも幸福につながらず、今の子供にとって生きづらい世の中になっていることが判明しました。
幸せになるために必要なのは
人それぞれに千差万別の人生を過ごしていますが、万人に共通する幸せは人間関係と健康と仕事(お金)になります。心身ともに健康で友人や家族、同僚との関係が良く、仕事が充実して達成感があり、経済的安定をしていると、私たちのストレスは減り、幸せを実感できます。
毎日の生活をより幸福なものにしたければ、自分が幸せ・不幸せになる原因と理由を知ることが大事です。この本は、私たちの人生に影響を与える様々な要因を経済学の視点から深掘りした上で、幸福への新しい道を示しています。ぜひ手に取って、自分の幸せな人生に向けてお役立てください。
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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