24/08/17
【2024年度最新版】年金は生涯いくら払って、いくらもらえるのか
「どうせ年金を払っても元は取れない」と見聞きしたことはありませんか?確かに、毎月の年金保険料は負担ですし、年金だけで老後の生活をまかなうのは難しいでしょう。しかし、本当に年金を払っても元は取れないのでしょうか。
今回は、生涯で支払う年金保険料の金額と、老後にもらえる年金額を紹介します。
国民年金の保険料と年金額は?
日本の公的年金には、国民年金と厚生年金があります。国民年金は、20歳から60歳までのすべての人が加入する年金。厚生年金は、会社員や公務員が勤務先を通じて加入する年金です。以下、2024年度の金額をもとに、保険料と年金額を紹介します。
●国民年金の保険料は生涯いくら払う?
国民年金の保険料はみな同じで、2024年度は月額1万6980円です。仮にこの金額を20歳から60歳までの40年間(480か月)にわたって納めたとすると、国民年金保険料の総額は1万6980円×480か月=815万400円となります。
国民年金保険料を自ら納める必要があるのは、フリーランスや個人事業主、学生、無職などの人(国民年金の第1号被保険者)です。国民年金保険料を未納にすると、その分もらえる年金額が減ります。
●国民年金(老齢基礎年金)の年金額は?
国民年金からもらえる老齢年金を老齢基礎年金といいます。老齢基礎年金の金額は、国民年金保険料の納付月数が480か月に達していれば、誰でも満額受け取ることができます。
2024年度の老齢基礎年金の満額(67歳以下)は年81万6000円です。仮に、65歳から90歳までの25年間にわたってこの金額を受け取った場合、総額は81万6000円×25年=2040万円となります。
・国民年金保険料(40年間)…815万400円
・老齢基礎年金(25年間)…2040万円
ですから、受け取れる老齢基礎年金の金額は払った国民年金保険料の約2.5倍。かなり得ですね。
厚生年金の保険料と年金額は?
厚生年金の保険料や受給額は、毎月4月〜6月の給与の平均額(報酬月額)から算出する「標準報酬月額」によって決まります。つまり、給与の額によって保険料や受給額が変わります。ここでは、
・月収(標準報酬月額)30万円
・22歳(社会人)から65歳までの43年間働いた
と仮定して計算します。
●厚生年金の保険料は生涯いくら払う?
月収30万円の場合の厚生年金保険料の自己負担額は月2万7450円です。なお、厚生年金保険料の中には国民年金保険料分も含まれているため、この金額を負担するだけで国民年金保険料も全額払っていることになります。ですから、会社員や公務員は国民年金と厚生年金の両方から老齢年金をもらうことができます。
22歳から65歳までの43年間、月収30万円で働いた場合の厚生年金保険料は
2万7450円×12か月×43年間=1416万4200円
です。
●受け取れる年金額の合計は?
厚生年金からもらえる老齢年金を老齢厚生年金といいます。老齢厚生年金の金額(年額)は「平均標準報酬月額×給付乗率(0.005481)×加入月数」で計算します。したがって、給与の金額や加入期間などによって年金額は異なります。
仮に22歳から65歳までの43年間、月収30万円で働いた場合に65歳からもらえる老齢厚生年金の年額は
30万円×0.005481×516月=84万8458円
となります。
65歳から90歳までの25年間だと、老齢厚生年金の金額は、
84万8458円×25年=2121万1450円
です。
これに加えて、国民年金からも老齢基礎年金(25年間・2040万円)がもらえます。
・国民年金+厚生年金
保険料総額: 1416万4200円
65歳〜90歳に受け取る年金総額:2040万円+2121万1450円=4161万1450円
受け取れる年金額は払った保険料の約2.9倍となり、国民年金だけの場合より得です。
また、年金総額も国民年金だけの場合の約2倍になります。
今回、90歳まで生きると仮定していますが、何歳まで生きるかは誰にもわかりません。確かに、年金をもらい始めてすぐに亡くなったら、元は取れません。
しかし、国民年金は約10年、厚生年金(国民年金含む)は約8年でもらえる年金額が支払う保険料を上回ります。つまり、年金をもらい始めて、10年生きれば元が取れる計算です。
厚生労働省「令和5年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳となっています。また、2023年時点で65歳の人の平均余命は男性19.52年、女性24.38年です。ですから、65歳から受給しても元が取れる可能性は十分にあるでしょう。
年金を繰り下げるとさらに増える
年金の受け取りは原則65歳からですが、66歳~75歳の間に遅らせることができます。これを「繰り下げ受給」といいます。繰り下げ受給で、受給開始を1か月遅らせるごとに、受け取れる年金額が0.7%ずつ増加。最大で75歳まで繰り下げることで年金額が84%増加します。
<年金の受給率>
(株)Money&You作成
上の試算と同じ条件の人が仮に年金を繰り下げた場合、年金額は次のように増加します。
●70歳から受給開始する場合
【国民年金】
(年額)81万6000円×142%=115万8720円
(90歳までの20年)115万8720円×20年=2317万4400円
【国民年金+厚生年金】
(年額)166万4458円×142%=236万3530円
(90歳までの20年)236万3530円×20年=4727万600円
●75歳から受給開始する場合
【国民年金】
(年額)81万6000円×184%=150万1440円
(90歳までの15年)150万1440円×15年=2252万1600円
【国民年金+厚生年金】
(年額)166万4458円×184%=306万2602円
(90歳までの15年)306万2602円×15年=4593万9030円
年金を70歳まで5年間繰り下げることで、90歳までの20年間にもらえる年金額の総額は国民年金で約280万円、国民年金+厚生年金で約570万円増加します。65歳時点でもらえる年金額との「損益分岐点」は81歳。以後は長生きするほど年金受給額が増えます。
一方、75歳まで10年間繰り下げることで、90歳までの15年間にもらえる年金額は、70歳からもらうときよりも国民年金で約65万円、国民年金+厚生年金で約130万円少なくなります。これは「90歳まで」という制限があるからで、さらに長生きすれば、計算上は92歳(厳密には、91歳11か月)で70歳受給の金額を追い抜きます。
先の厚生労働省「令和5年簡易生命表」によると、90歳まで生きる人の割合は男性26.0%、女性50.1%となっています。今後さらに寿命が延びるのであれば、75歳までの繰り下げのほうが有利になる可能性があるでしょう。
なお、今回の計算では考慮していませんが、繰り下げ受給を行い年金額が増えることで、税金や社会保険料が上がるため、手取りの年金額は繰り下げ受給の年金の増額率ほどは増えない可能性がある点も押さえておきましょう。
「どうせ年金を払っても元は取れない」はない
生涯で支払う年金保険料の金額と、老後にもらえる年金額を紹介しました。年金はもらい始めて10年程度で元が取れ、一生涯にわたって受け取れます。「どうせ年金を払っても元は取れない」はないことがお分かりいただけたでしょう。ですから、老後の不安があるならば、まずは年金保険料を未納にせず、年金を増やす手立てをとって、年金を充実させていきましょう。
【関連記事もチェック】
・年金収入のみの場合、所得税・住民税がかからないのはいくらまで?
・【やらないと大損】年金生活者が忘れてはいけない5つの手続き
・新たに年金・低所得者世帯に給付金がもらえる?対象となる条件は
・「やらないと損」年金をもらっている人が忘れてはいけない3つの手続き
・「ねんきん定期便見たら数十万円増額してた」年金額が増えた驚きの理由
頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう