23/12/29
お金が尽きると夢が尽きる~『夢と金』
「夢」と「お金」のどっちが大切かと聞かれたら、どちらだと答えますか。「もちろん夢!」と言いたいところですが、現実はなかなかシビア。お金がなければ夢を追うどころか、生きることすらできなくなってしまいます。夢を叶えたければ、夢とお金のどちらかではなく、どちらもあきらめてはいけません。
今回ご紹介する一冊は芸人、絵本作家など幅広い活躍をしている西野亮廣さんの著書『夢と金』。多種多様なことを学んで知識を増やし、ユニークな発想を次々に実践に活かしている彼が、お金について独自の切り口から語っている本です。
高く売るために、富裕層を知れ
人口が減る一方の日本では、商品は前ほど売れなくなりました。利益を得るには高く売る必要があり、高額購買者であるお金持ちが頼りです。
日本に3%弱しかいないと言われる純資産1億円以上の富裕層は、高級な腕時計や外車など途方もない額の買い物をします。一般人には、彼らはお金があり余っているからいくらでも無駄遣いできるように見えますが、そういうわけではないのだそう。高級品を持っていると周囲は立派な人、お金持ちと認識します。それがビジネスやプライベートにプラスに働く場合、ステータスとなるブランドの価値に富裕層はお金を出すというわけです。
また、飛行機のファーストクラスはとても高くてリッチな人しか乗れないため、全部エコノミー席にすれば大勢の人が乗れるのにと思っている人もいるでしょう。しかしファーストクラス席をなくしてしまうと、エコノミー席料金をぐんと上げないと飛行機は飛べなくなることをご存知でしたか。
富裕層が高い買い物をするおかげでその他大勢の一般人が商品やサービスを安く利用できる仕組みは、実はいろいろなところにあるのだそう。やっかみ半分でついひがんでしまいますが、私たちは知らないところでお金持ちの恩恵にあずかっているんですね。むしろ彼らに感謝しなくてはいけません。
富裕層向けビジネスを展開するには、そうした世の中の仕組みを理解し、彼らがなにを考えて行動するのか、どうすれば気持ちよく高い買い物をするのかを知る必要があります。ここでも学びと知識がものをいいます。
時間は資源
お金を貯めることは大切ですが、すべてに優先するわけではありません。残業が多いと仕事は進みますが、やりすぎると自分の時間が失われて摩耗してしまいます。ハイスペックを目指すあまりにオーバースペックを求めてはいけません。完璧なレベルまで作り上げるよりも、多くの人が満足するレベルでとどめることも必要なのです。
交通費を節約するために長距離を歩いたり、タクシーや新幹線に乗らなかったりする人も要注意。お金の代わりに貴重な時間を使っていることに気づくべきです。
お金も時間もどちらも大切な資源。なにを優先するかで自分の人生は大きく変わっていきます。目先のことではなく将来を見据えて行動するのがよいでしょう。
知らないことを知れ!
「知らないことを知れ!」「早く努力をしろ!」という熱いメッセージも込められています。
知識がないと困ったり損をしたりことはたくさんあります。知らないからといって諦めずに、どんどん勉強して、行動して、試して、失敗して、経験にすることが大事だと彼は言います。
お金のこともそうです。お金についてよく学び、知る必要がありますが、日本の学校ではお金の教育をしないため、社会に出てからも途方に暮れている人は大勢います。親や教師でさえお金のことがわからず、子どもに教えられません。正しい知識を持たないため、日本人はお金がないと絶望してしまいがち。自分の夢をかなえて幸せな未来をつかむためにも、お金の知識は必要です。
これまでいち早くネット上での資金調達を展開してきた彼。2023年は「シングルファミリーの学生に『夢と金』を1000冊贈りたい!」という趣旨でクラウドファンディングを企画し、なんと5時間半で目標額に達したそうです。その考え方と活動が多くの人の賛同を得ているからでしょう。
すべてが手詰まりのような現在でも、彼のようにしっかり結果を出す人がいると、こちらも心強い気持ちになってやる気が出てきます。お金とその先にある夢を両方手にすることが大切だと行動で示して、読む人のモチベーションを高めてくれる、力強い一冊です。
夢と金
夢と金(幻冬舎)
【読書ブロガー小野寺理香のブックレビュー】記事
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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