23/10/07
推しがいる幸せ、推し活をする楽しさ~推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来
あなたには「推し」はいますか?「推し活」をしている方はいますか?モニタス「推し活に関する意識調査」によると、アイドル、二次元キャラクター、俳優などに推し活をしている人の割合は約3割にのぼるそうです。
今回ご紹介する本は、多種多様な「推しカルチャー」をベースに、エンタメとコンテンツビジネスに焦点を合わせて分析・考察を加えた内容になっています。ピンク地に「推し」の大文字がバーンと目立つ、書店に平積みされていると目を引く表紙ですね。
かつてはオタクのサブカルチャー
一昔前は、マンガやアニメが好きな人はオタクだというイメージがありましたね。オタクはネクラで話が合わないという偏見を持たれ、一般の人に遠巻きにされていました。その頃の王道はテレビのトレンディドラマや映画で、ゲームやアニメ、マンガはオタクや子供向けのサブカルチャーだと軽んじられていました。
時代は変わり、限られた人のひそかな趣味だったゲームやアニメ、マンガはいつの間にか大勢の人々が楽しむエンタメの主流になっていました。オタクは、好きなものがしっかりとある人たちだと世間に受け入れられるようになり、今では彼らの持つ膨大な知識量が尊敬されるようにまでなっています。
2000年代頃の男性のオタクは、キャラクターやタレントへの愛着を「萌え」という言葉で表現していました。「推し」はもともと女性ファンが使っていた言葉で、彼女たちは推し活を行い、特定のタレントがグループ内で成長する様子を見て喜んでいました。価値観の変化やコロナによる環境の変化を受けて、今では男性も推し活を行うようになりましたが、いったい「萌え」と「推し」は何が違って推し活とは何をすることなのでしょうか。
「萌え」から「推し」へ
「萌え」は自分だけがファンでいる対象で、「推し」は周囲にもその良さを伝えたい対象を指します。推し活とは、支持するキャラやタレントをさまざまな形でフォローすることです。「好きな対象を応援すること」と言い換えられますが、「推し」という言葉には「応援」や「好き」だけでは表現しきれないほどの熱と感情が含まれており、今ではアイドルやタレントだけでなく、スポーツ選手や歴史上の人物、果ては車の種類や食べものに至るまで、いろいろな対象に幅広く使われる言葉になっています。他人に強く薦めたいほどの熱意で好きなものを推すのはとても楽しいことですね。
社会に理解してもらえなかったかつてのオタクたちは、好きな対象に「萌え」、ひっそりと見守ることで満足していました。人の好みが多様化してさまざまな価値観が認められるようになると、好きなものの良さを思う存分広めたいと、人はどんどんアピールするようになりました。社会の変化にともなってファンの意識と行動が変わってきたのです。
「萌え」から「推し」へのファン心理の変化は、恋愛観や結婚観の変化にも関係します。おひとりさまでも幸せでいられる今は、趣味や好きなことに集中できる人たちが推し活を日々の活力にしているともいえるのです。
新たなエンタメコンテンツの変化
最近のエンタメ業界は大きく動いています。たとえば社会現象になった『鬼滅の刃』は、作品のよさに加えて、ビジネス面で流通戦略が成功したのもメガヒットの大きな原因でした。制作会社が放送収益よりも視聴数を優先して全国局での同時配信とインターネット配信に踏み切った結果、国をあげての一大ブームとなり、原作や映画、グッズなどの巨大な経済圏が形成されました。
映画作品では、劇場版『鬼滅の刃』のほかにも『名探偵コナン』シリーズや『シン・エヴァンゲリオン』といったアニメの大作が、大々的な宣伝で集客する従来の方法から、ファンにSNSで発信してもらう方法に変えて大ヒットしました。今やコンテンツは、個人的に楽しんむだけではなく、ユーザーが自ら発信して他の人と一緒に盛り上がるツールになっています。ファンが推し活で作品に関与することでメディアの宣伝法が変わり、その熱量を受けてクリエイターはより質の良いコンテンツを作りだす。21世紀の経済を回しているのは『推しエコノミー』だといえるでしょう。
人々の行動は、内的体験の「萌え」から外的体験の「推し」にソーシャル化しました。「推し」とは消費するだけでなく関与する対象で、推し活動は「私はこの人や作品が好きで応援します!」という人々の表明です。たとえば阪神タイガースや浦和レッズのファンであることがその人のアイデンティティーだというように、その活動は一種の自己表現なのです。
今の私たちは「推し」のオープンサポーター。自分が好きなものを堂々と応援して積極的に関与していく今のファンは、「推し」を身近に感じられて毎日が生き生きしています。好きな対象は多ければ多いほど幸せなもの。今の流れに乗って、推し活で人生を彩り豊かなものにしていきましょう。
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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