24/06/16
相続放棄しても、もらえるお金は意外と多い
相続はいつ発生するのか予想ができません。まだ元気だから先のことだと思って、相続について何の知識もないままだと相続時に慌ててしまいます。特に財産については、何をどれくらい所有しているのか親子間で情報を共有できていないケースがよくあります。相続財産はプラスの財産ばかりではなく、マイナスの財産もあります。場合によっては、相続放棄を検討した方がいい場合もあるでしょう。
今回は、相続放棄を選んだ場合にもらえるお金、もらえないお金をとおして、相続の知識を深めていきましょう。
相続の方法は3つ
相続が発生すると、相続方法を選択しなければなりません。相続の方法には3つあります。
・単純承認…すべての権利や義務を引き継ぐ。
・限定承認…相続で得た財産の限度で債務を引き継ぐ。
・相続放棄…すべての財産を引き継ぐことを放棄する。
このうち、限定承認や相続放棄は、相続開始があったことを知ったときから3カ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったとみなされます。しかし、相続財産を放棄する予定であっても、相続財産の扱い方しだいでは、単純承認したものとみなされることがあります。
相続放棄をしても受け取れるお金
相続放棄をしても受け取れるお金とは、言い換えれば「相続財産にはならない」ものです。相続放棄をしても、本人が亡くなったことで遺族に支払われる性格のものは、相続放棄しても受け取ることができます。
●受取人が指定されている死亡保険金
受取人が指定されている死亡保険金は、相続人固有の財産とみなされるため、相続放棄をしていても受け取ることができます。
●遺族年金
公的年金に加入中に亡くなった、または加入していた人で条件を満たした人が亡くなったときに、遺族に対して支払われる年金です。「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。遺族年金を受け取るためには請求が必要です。
●死亡一時金
死亡一時金は、死亡の前日において、国民年金の第1号被保険者として保険料を36月以上納めた方が、老齢基礎年金、障害基礎年金を受け取ることなく亡くなったときに、遺族の方に支給されるものです。死亡一時金の支給される額は、亡くなった人の保険料納付期間に応じて決まり、12万円~32万円の範囲になります。また、3年以上付加年金を納めている場合には、8500円が加算されます。ただし、遺族が遺族基礎年金を受給する場合には、死亡一時金は支給されません。
●寡婦年金
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者としての納付期間が10年以上ある夫が年金を受けずに死亡したとき、その夫に生計を維持されていた婚姻期間が10年以上ある妻に、60歳から65歳までの間に支給される年金です。支給される年金額は、夫が受けられたであろう老齢基礎年金の額の4分の3です。寡婦年金と死亡一時金の両方の条件を満たしていてもどちらかを選択することになります。
●未支給年金
年金受給者が亡くなった場合に、まだ受け取っていない年金のことを未支給年金といいます。年金は後払いのしくみなので、最後の期間分は亡くなった本人は受け取ることができません。請求をすることにより、亡くなった人と生計を同じくしていた一定の親族に支給されます。国民年金、厚生年金・共済年金、企業年金、国民年金基金の年金があります。
●葬祭費・埋葬料
葬祭費は、国民健康保険、後期高齢者医療に加入していた方が亡くなったときに、申請により喪主に葬祭費が支給されます。金額は2~5万円で、お住まいの自治体で異なります。
一方、葬祭料は健康保険や健康保険組合に加入していた被保険者によって生計を維持されて、埋葬を行う方に支給されるものです。5万円が支給されます。
●香典・ご霊前
葬儀や法要に際し、喪主が受け取るお金なので相続財産になりません。
●祭祀財産
位牌、仏壇、お墓といった祭祀財産は亡くなった方が購入していても、相続財産として扱わず、祭祀を承継する人の財産となります。
もらうと相続したとみなされるお金
民法では、相続財産を処分したり、隠匿や消費したりする場合、単純承認をしたものとしてみなされます。知らなかったばかりに、相続放棄ができなくなることもあるので、注意しておきましょう。以下は相続放棄をするならば、受け取ってはいけないお金やしてはいけない行為です。
●受け取ってはいけないお金
・受取人が亡くなった人になっている死亡保険金
・受取人が亡くなった人となっている入院給付金や手術給付金
・払い過ぎていた税金や保険料の還付金
・未払い給与
・本人が亡くなった場合に遺族が受け取る旨の規定がない死亡退職金
●してはいけない行為
・亡くなった人の預貯金の解約
・実家の解体や売却
・入院費の支払い
・亡くなった人が住んでいた住宅の契約解除や敷金の受け取り
・亡くなった人の資産からの借金や税金の支払い など
上記は、生きていれば本人が受け取るはずであったお金なので、相続財産になります。また、亡くなった人の預貯金の解約や不動産の売却は処分行為に当たります。
相続放棄は慎重に
相続放棄をした後は原則として撤回することができません。しかも「自己のために相続開始があったことを知ったとき」から3カ月以内という早い段階に家庭裁判所で手続きを行わなければなりません。仮にプラスの財産が多いことが後から判明しても、相続放棄をしなかったことにはできないのです。また、相続放棄をすると、死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が使えません。
相続放棄するにしても、単純承認するにしても、相続財産の調査や把握ができていない段階では、適切な判断ができません。あまり考えたくない事柄かもしれませんが、もしもに備えて事前に大方の財産を把握しておくことが大切です。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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