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24/03/08

相続・税金・年金

年金の繰り下げ受給で損する人、得する人

年金の繰り下げ受給で損する人、得する人

厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)によると、公的年金・恩給のみで生活している高齢者世帯(=公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯)は44.0%。そんな老後の収入の柱となる公的年金は、「年金の繰り下げ受給」によって年金額を最大84%増やすことができます。しかし、繰り下げ受給にも、知らないと損をするいくつかの留意点があるのは事実です。そこで今回は、「年金の繰り下げ受給ってありかも」と思っている人が知っておきたい、繰り下げ受給を上手に活用するための基本を解説します。

75歳まで繰り下げることで年金額は最大84%アップ

老齢年金の受給は、原則65歳からですが、60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて請求ができるほか、66歳以後75歳までの間に繰り下げることもできます。

●65歳の年金額180万円の人が繰り上げ・繰り下げをすると年金額はいくらに?

では、本来もらえる年金額(65歳到達時点)が180万円の人を例に、繰り上げと繰り下げで年金額がどのくらい変わるかを見てみましょう。

繰り上げ請求をすると、年金額は、繰り上げをした期間1ヶ月につき0.4%「減額」されます(1962年4月1日以前生まれの人は0.5%)。したがって、60歳に到達してすぐに繰り上げ請求を行う場合の減額率は24.0%(0.4%×60ヶ月)。60歳から受け取れる年金額は136.8万円ということになります。

それに対して、繰り下げ受給では、1ヶ月繰り下げるごとに年金額は0.7%「増額」されます。したがって、70歳まで繰り下げた場合の増額率は42.0%(0.7%×60ヶ月)で、75歳だと84.0%(0.7%×120ヶ月)。65歳で180万円もらう予定だった年金額は、255.6万円と331.2万円へ、それぞれ大きく増やすことができるのです。

繰り下げ受給を選択する人はこれから増えていく?

2022年度末時点で繰り下げ受給を選択している人の数は、老齢基礎年金が受給権者の2.0%にあたる約67万人、老齢厚生年金は受給権者の1.3%にあたる約37万人でした。

<各年度末時点における繰り上げ・繰り下げ受給状況>

厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より筆者作成

まだまだ広く利用されているとは言えないものの、年々繰り下げをしている人の割合は高まっており、今後さらに増えていくことが予想されます。その理由を3つ紹介します。

●繰り下げ受給が増えていく理由①:65歳より前に厚生年金をもらえる人がいなくなる

厚生年金保険への加入歴が1年以上ある、1961年4月1日以前生まれの男性、および1966年4月1日以前生まれの女性は、65歳の到達より前に「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れる場合があります。

特別支給の老齢厚生年金は繰り下げ受給をすることができません。65歳に到達して支給される本来の老齢厚生年金については、新たに請求手続きが必要ですが、それまで年金をもらっていたのに、繰り下げをする(受給をいったん中断する)ことは、普通は考えにくいです。このような理由からも、1961年4月2日以後生まれの男性が65歳に到達する2026年4月以降はさらに、繰り下げ受給は本格化していくものと予想されます。

●繰り下げ受給が増えていく理由②:65歳以降も働いている人は年々増加している

繰り下げをしている期間の生活費が確保できているかどうかは、繰り下げを検討する際に留意しなければならない重要なポイントの1つです。

しかし、これは「貯蓄等が少ない=繰り下げ受給はやめた方がいい」というわけではありません。現役期間中は、子育て等であまり老後のお金を貯めることができなかった人も多いはずです。そのような人は、就労の継続と組み合わせて繰り下げを考えてみてはいかがでしょうか。実際、65歳以上で働いている人は年々増えており、約1,000万人を数えます(総務省統計局「労働力調査」2023年平均結果)。

厚生年金保険に加入しながら働くことができる人は、この間に年金額を増やせる点も忘れてはいけません。目安として、標準報酬月額20万円で65歳からの5年間働くと、働かなかった場合よりも年金額は66,000円(5,500円/月)程度増える計算です。65歳以降の就労と繰り下げ受給については、後ほど改めて詳しく解説をします。

●繰り下げ受給が増えていく理由③:さかのぼり受給もしやすくなった

健康上の理由で働けなくなることや、繰り下げをしている間にお金が必要になることもあるかもしれません。実は、繰り下げをしている人は、過去5年間にさかのぼって本来受け取るはずだった年金額を一括で受け取ることもできるのです。

しかし、そのルールでは、71歳に到達した時点で請求を行うと66歳からの5年間分しか一括で受け取れません。そこで2023年4月から新たに、1952年4月2日以後生まれの人(または2017年4月1日以後に受給権が発生した人)を対象に、「特例的な繰下げみなし増額制度」が導入されました。この例では、66歳の時点で繰り下げ受給の申出があったものとみなして、65歳に到達した時点から66歳までの1年間の増額率(0.7%×12ヶ月=8.4%)を反映させた5年分の年金額を一括で受け取ることになります。そして、請求をした後(つまり71歳以後)は、8.4%の増額率が反映された年金額を受け取るという形です。

<特例的な繰下げみなし増額制度のイメージ>

日本年金機構「特例的な繰下げみなし増額制度」より

ただし、過去分の年金を一括で受給する場合には、税金や社会保険料、医療・介護保険等の自己負担割合に影響する場合があるので、注意してください。

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繰り下げ受給で知っておくべき5つの留意点

繰り下げ見込み額は、「ねんきんネット」や「公的年金シミュレーター」で簡単に調べることができるほか、簡易的な金額は「ねんきん定期便」にも記載されています。さらに、66歳から74歳で年金を受給していない人には、毎年誕生月(1日生まれは前月)の初旬に、「繰り下げ見込額のお知らせ」が届きます。これらは、老後のマネープランを考える際や、請求を行うタイミングを決める際に役立ちますが、繰り下げ受給で損をしないための5つの重要なポイントを見ていきましょう。

<「繰下げ見込額のお知らせ」のイメージ>

日本年金機構「老齢年金の繰下げ受給を希望している方へのお知らせ」より

●繰り下げ受給の留意点①:遺族が受け取る未支給年金に増額は反映されない

繰り下げをしている期間に亡くなった場合、「未支給年金」という形で、遺族はなくなった人が本来受け取るはずだった年金を、一括で受け取ることが可能です。この一時金に相続税はかかりませんが、受け取る遺族にとっては一時所得扱いになります。

未支給年金の金額には、繰り下げをしたことによる増額分は反映されず、亡くなった人の65歳時点の年金受給額をもとに計算されます。また、未支給年金は、請求した時点から5年以上前の年金は時効により受け取ることができません。つまり、繰り下げをしている状態で、72歳で亡くなった場合、遺族は65歳から67歳まで2年分の年金は時効で受け取ることができないのです。

さらに、次のような場合にも注意が必要です。70歳まで繰り下げをして、42%増額された年金を受け取り始めて3ヶ月後に亡くなった場合、遺族が65歳から70歳までの一時金を受け取ることはできません。未支給年金の対象はあくまで、亡くなる直前の年金支給日以降、亡くなった本人が受け取っていない年金額(通常の未支給年金)に限ります。

したがって、健康上の問題を抱えている人は特に、ご家族への影響も考えながら、受給の開始時期を検討するようにしましょう。

●繰り下げ受給の留意点②:遺族年金の受給権が発生して予定よりも受給が早まる

66歳以前に遺族年金を受ける権利がある人は、繰り下げ受給自体ができません。

さらに、66歳以後繰り下げを行っていても、例えば配偶者が亡くなって遺族年金の受給権が発生すると、その時点で増額率が固定されてしまいます。したがって、繰り下げをする場合には、夫婦どちらかが先に亡くなった場合のマネープランも、できれば試算しておくことが望ましいでしょう。

なお、障害年金を受ける権利が発生した場合も、同様の取り扱いです。

●繰り下げ受給の留意点③:繰り下げをしている間は加給年金や振替加算が受け取れない

厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人は、扶養する65歳未満の配偶者や子どもがいると、「加給年金」が老齢厚生年金に加算されます。さらに、加給年金の対象となっていた配偶者が65歳に到達すると、今度は配偶者の老齢基礎年金に「振替加算」が上乗せされます。しかしながら、繰り下げをしている期間は、どちらも受け取ることができません。

配偶者に係る加給年金の額は、特別加算額の173,300円(2024年4月から)と合わせて408,100円。決して安い金額ではないことが分かります。加給年金は、老齢厚生年金を繰り下げている間に単独で受け取ることもできないだけでなく、繰り下げることもできません。したがって、歳の離れた配偶者を扶養している場合や、対象となる子どもがいる人は、繰り下げよりも加給年金を受け取った方が有利になると考えられます。

そこで1つの解決策は、老齢基礎年金だけを繰り下げる方法です。繰り上げ受給の場合には、請求すると老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が同時に繰り上げとなりますが、繰り下げ受給はどちらか一方だけの繰り下げもできるので、このオプションも試算に追加してみるのもよいでしょう。

●繰り下げ受給の留意点④:繰り下げをしても増額の対象にならない部分がある

先ほど紹介したとおり、65歳以降も厚生年金保険に加入しながら働くことで、将来の年金額を増やすことができますが、実はこの部分は繰り下げによる増額の対象になりません。その理由は、繰り下げで増額の対象となる年金は、「65歳に到達した時点の老齢年金」だからです。

さらに、厚生年金には「在職老齢年金」と呼ばれる制度があります。これは、老齢厚生年金の額と給与(賞与を含む)の合計額が月50万円(2024年度)を超えていると、老齢厚生年金の一部または全額を支給停止とするルールです。

在職老齢年金による支給停止の対象となった場合、繰り下げによる増額の対象となるのは、あくまで「年金を請求したならば受給できた額」に限られます。したがって、支給停止となった部分は、増額の対象にはなりません。

<在職老齢年金と繰り下げ加算額の関係>

日本年金機構「2023年度全国年金委員研修資料」より

●繰り下げ受給の留意点⑤:手取り額は額面通りには増えない

老齢年金の額が増えると、税金や社会保険料の負担額も大きくなる可能性があります。税金や社会保険料は、所得や年齢、家族構成、居住地によっても異なりますが、手取りベースの損益分岐点が、額面ベースの損益分岐点よりもさらに先の年齢となる点には注意が必要です。その他、医療・介護保険等の自己負担割合が高くなる場合もあります。

しかし、額面上の増額率に及ばなくても、繰り下げることで手取り「額」が増えることはたしかです。その他の年金(企業年金等)や所得、貯蓄額が少なく、公的年金からの収入が老後の生活の柱となる人は特に、金額そのものが増える点を重視した方がよいと言えるでしょう。

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繰り下げ受給から人生100年時代のマネープランを考えよう

今回は、人生100年時代のマネープランを考える上で知っておきたい、「年金の繰り下げ受給」を上手に活用するための基本を解説しました。まだまだ利用している人は少ない繰り下げ受給ですが、これまで繰り下げ受給の障壁となっていた経過措置もなくなるなど、今後さらに活用を検討する人が増えていくことはほぼ間違いありません。

何より大切なのは、繰り下げ受給を自分には無関係と思わないことです。今回紹介した5つのポイントに留意してもらう必要はあるものの、繰り下げ受給を考慮したマネープランを立てることによって、家計の見直し、NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用した資産形成など、講じるべき対策にゆとりを持って臨むことができるようになります。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーをはじめとする専門家も活用しながら、豊かな老後のくらしに向けた準備を始めていきましょう。

神中 智博 ファイナンシャルプランナー(CFP®)

1992年宮崎県生まれ。関西学院大学会計大学院を修了後、NTTビジネスアソシエ西日本で、NTT西日本グループの財務や内部統制等の業務に従事。2022年10月に兵庫県神戸市で独立系FP事務所ライフホーカーを開業し、現在に至る。家計相談に加えて、公的年金や確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)を活用した資産形成に関するテーマを中心に、執筆・講演活動も展開。「老後不安バスター」として、だれもが老後に向けて自信を持てる社会を目指して奮闘している。CFP®(日本FP協会認定)の他、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー、企業年金管理士(確定拠出年金)、一種外務員資格等を保有。
X(旧Twitter)→https://twitter.com/lifehawker

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