24/02/04
繰下げ増額したのに「65歳時点の金額」になってしまう4つの年金
人生100年時代といわれるようになり、長生きするなら少しでも年金額を増やそうと年金の繰り下げ受給を選択しようと考える人が多くなってきました。しかし、年金の繰り下げ請求は誰にでもできるわけではないことをご存知でしょうか。増やせると思っていた年金が想定どおりにいかなくなるとショックも大きいですね。
今回は、年金を66歳以降に繰り下げても、65歳時点の金額で計算されてしまうものをご紹介します。
年金の繰り下げ受給とは
老齢基礎年金や老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ることができます。しかし希望すれば、65歳で受け取らず66歳以降75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることができます。年金の受け取りを先に延ばすほど増額率が上がります。また65歳を超えて老齢年金の受給資格期間を満たした人は、そのときから1年経過後に繰り下げ請求をすることができます。
年金には老齢年金のほか、万一のとき受け取れる年金として遺族年金や障害年金があります。すべての年金が繰り下げられると勘違いしがちですが、中には次のように66歳以降に繰り下げても増えない年金もあります。
繰り下げても増えない年金1:65歳以降に増えた厚生年金
元気に働けるうちは仕事を続けたいと考える人が増え、65歳以上でも現役という人は珍しくありません。65歳以降も厚生年金に加入して働く人は、在職中でも保険料が年金額に反映されるようになりました。厚生年金は保険料を納めた期間と額に比例する年金ですが、仕事を続けても繰り下げ増額になる対象は、65歳時点の厚生年金のみです。65歳以降に増えた部分は、繰り下げても増額になりません。
繰り下げても増えない年金2:繰り下げた人が亡くなったときの遺族厚生年金
遺族厚生年金は、遺族厚生年金の受給要件を満たした人が亡くなったときに、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族が受け取る年金です。繰り下げ受給を選択して年金を受け取っている人が亡くなったときの厚生遺族年金には、繰り下げで増加した分は反映されません。遺族厚生年金の額は、65歳から受け取っていた場合の本来の額をもとに計算され、老齢厚生年金額の4分の3です。繰り下げ増額された老齢厚生年金の4分の3ではないので注意しましょう。
配偶者が繰り下げ受給して増加した年金を受け取り始めてから亡くなると、配偶者の基礎年金がなくなったうえに、厚生年金は65歳時点をもとに計算されるので大幅減となり、家計に大きな影響を与えます。なお、繰り上げ受給で減額されていても、本来の65歳の年金額を基準に計算されます。
繰り下げても増えない年金3:老齢年金以外の年金を受け取る権利が発生したとき
66歳になるまでに老齢年金以外に障害年金、遺族年金の受給権が発生している場合には、実際には受給していなくても、老齢基礎年金や老齢厚生年金の繰り下げ請求ができません。例外的に障害基礎年金のみ受給権がある人は、老齢厚生年金の繰り下げができます。
たとえば、夫が妻よりも長い期間厚生年金に加入していて、その妻が亡くなった場合で考えてみましょう。夫に支給される遺族厚生年金がわずかで、自分の老齢厚生年金が有利であれば、あえて遺族厚生年金を選ばないでしょう。ところが自分が66歳未満で妻が亡くなり遺族年金の受給権が発生すれば、以後は繰り下げ増額ができないルールになっています。
ただし遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給要件の「生計を維持されている」には、生計が同一であることと収入要件を満たす必要があります。例外的に収入が年収850万円以上あって収入要件を満たさない場合には、繰り下げ請求が可能になります。
また、自分が66歳以上で繰り下げ待機中に配偶者が亡くなると、それ以降の繰り下げ待機はできなくなり、年金の受給が開始されます。
繰り下げても増えない年金4:繰り下げの手続き前に亡くなった場合、一定の遺族が受け取る未支給年金
年金は後払いのしくみになっているので、亡くなる直前の期間分は未支給年金が発生します。しかし、66歳を過ぎて繰り下げ請求をしないまま繰り下げ待機中に亡くなったとしても、繰り下げ請求は、遺族が代わって行うことはできません。
この場合、一定の遺族が65歳からの本来の年金額を請求し、65歳から死亡時までに受け取るはずだった年金の総額が一括して支払われます。ただし、請求した時点から5年以上前の年金は時効によって受取れません。
年金の繰り下げができる条件を要チェック
夫婦2人でなら何とか生活ができても、配偶者の死亡でシングルになれば急に生活が厳しくなることも考えられます。女性は長生きなので、自分自身の年金を増額しておくことはこれから有効な選択肢だといえるでしょう。年金の繰り下げについて条件を確認しておくことをおすすめします。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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