23/05/10
50代、貯蓄いくらあれば安心?
50代は老後が現実的になってくる時期です。勤務先では役職についている人も多いので高収入かもしれませんが、定年はもうすぐそこまで近づいています。定年後に再雇用で働いても収入は減り、やがて年金生活です。
そんな50代は、今の貯蓄で安心できるのか、心配に思うこともあるでしょう。
今回は、50代にとって貯蓄はいくらあれば安心なのか、各種データから考えてみたいと思います。
50代の平均貯蓄額は?
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2022年)」によれば、50代の平均貯蓄額(総世帯)は、1199万円です。
しかし、この数字は実態を表しているとは言えません。平均額は、単純に調査対象となった人の貯蓄合計金額を人数で割った数字。つまり、とても高額な貯蓄をしている人が少数でもいれば、平均額が高くなってしまうのです。
この場合、実態を知るには中央値が適しています。中央値は、貯蓄が少ない人から多い人まで順番に並んだ場合に、ちょうど真ん中にいる人の貯蓄額だからです。
50代の貯蓄金額の中央値は260万円。
しかも、貯蓄ゼロの人は28.4%、4人に1人は貯蓄がないという結果です。
貯蓄がある人とまったくない人がいるのですが、老後の暮らしを考えると、やはり貯蓄は必要です。なぜなら、公的年金だけでは不足する懸念があるからです。
年金だけではいくら足りない?
では、公的年金はいくら受け取れるのでしょうか。
これは、20歳から60歳までに納めた年金の保険料でほぼ決まります。国民年金は、20~60歳までの40年間の全期間納めた人は満額もらえますが、納めていない期間があるとその分減ってしまいます。
また、厚生年金の保険料は、給料が高くなればその分高くなります。保険料の上限はありますが、ざっくり言って、多くの保険料を納めると年金額も増える仕組みです。
年金の実際の受取額はその時にならないと厳密にはわかりませんが、ねんきん定期便で目安の金額を確認することは可能です。
50歳になってからのねんきん定期便の棒グラフのところには、今の加入状況を60歳まで続けたと仮定して、65歳から受け取れる見込み年金額が印字されています。同時に、70歳・75歳まで受け取りを遅らせた場合の金額も知ることができます。
年金の平均金額は、国民年金のみの場合には月当たり5万6368円、厚生年金の場合(国民年金を含む)には14万3965円です(厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(2021年度)」より)。
この年金額と、老後の生活費の見込み額をくらべてみて、年金だけで暮らせるならいいのですが、それだけでは不足と感じる場合が多いと思います。
老後の生活費は、現在の家計をサイズダウンしていくことになるでしょう。
総務省「家計調査報告(2022年)」によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の支出は、食費などの消費支出が23万6696円、税金などの非消費支出が3万1812円で、夫婦の年金合計額などの収入で不足する金額は、約2万2000円です。
65歳以上の単身無職世帯では、消費支出が14万3139円、非消費支出が1万2356円で、毎月の不足金額は約2万1000円です。
平均寿命は男性が81歳、女性が88歳ですから、65歳から考えてそれぞれ不足金額の16年分、23年分の貯蓄が欲しいところです。
仮に夫婦世帯で88歳まで生きるとしたら、
2.2万円×12か月×23年=約607万円となります。
また、単身無職世帯で男性81歳、女性88歳まで生きるとしたら、
男性:2.1万円×12か月×16年=約403万円
女性:2.1万円×12か月×23年=約580万円
となります。
さらに、医療費や住宅の修繕費、家電の買換えなどにまとまったお金が必要になることもありますので、そのための備えもしておきたいですね。1人あたり500万円を見込んだとすると、
・夫婦世帯:約1600万円
・単身世帯(男性):約900万円
・単身世帯(女性):約1100万円
は貯蓄を用意しておきたいところです。
50代から貯めるには?
50代は、子育てなどがひと段落して、定年退職までの最後の貯めどきと言えます。
学費などの支払いがなくなると家計にも余裕ができますが、羽をのばし過ぎるのは禁物です。学費の分を貯蓄にまわすくらいの気持ちで貯めていきましょう。
貯蓄だけではなく、投資も組み合わせると資金づくりにはずみがつきます。iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)や、NISA(ニーサ、少額投資非課税制度)といったおトクな制度の利用がオススメです。
しかし、目的は大切な老後資金ですから、リスクを抑えた手堅い運用が適しています。インデックスファンドでコツコツと運用していくといいのではないでしょうか。
そして、できるだけ長く働いて収入を得ることも大切です。年金の受取りを遅らせればその分年金額は増えますし、働いて厚生年金に加入すれば、それもまた年金を増やすことにつながります。
自分らしい老後の暮らしを実現するためにも、早めの準備をしていきましょう。
【関連記事もチェック】
・国民年金保険料「40年間全額免除」だと、年金はいくらもらえるのか
・「ねんきん定期便久々に見たら大幅増額」年金額が数十万円増えている驚きの理由
・年金を「月22万円」もらえる人の現役時代の年収はいくら?
・年金受給者に1月届く「公的年金等の源泉徴収票」チェックすべき3つのポイント
・「64歳で退職するとお得」は本当?失業給付は65歳退職といくら違うのか
タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
この記事が気に入ったら
いいね!しよう