22/04/25
「LIVE WITH ほぼゼロ」家庭では乗り越えられない2つの山場
誰もが豊かな人生を送りたいと思っています。「アリとキリギリス」のキリギリスのように遊んでばかりでも、アリのように働くばかりでも、限られた人生を有意義に過ごすことができません。「DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール」(ビル・パーキンス著)という本には、人生を豊かにするためのお金の使い切り方が書かれています。
しかし、生活するにも、価値のある経験をするにも、ある程度のお金が必要です。人生には万が一に備える以外にも、教育資金や老後資金といったまとまったお金が必要で、準備なしにはこの山場を乗り越えることができません。
今回は、貯蓄ゼロ世帯から脱却する方法と、教育資金と老後資金を準備するためのポイントをお伝えします。
「DIE WITH ZERO」の人生を豊かにするお金の使い切り方
「DIE WITH ZERO」では、人生を最適化していくためのルールが書かれています。人生は有限で、節約にばかり目を向けていると、その時にしかできない経験ができず、人生を楽しむことができないことになります。貯蓄は、今を楽しみつつ、将来にも備えられるバランスが求められます。また老後資金を確保した上で、遺産として残すより、お金の効率を考えて生前贈与で資産を渡し、計画的にお金を使い切って死ねればベストだとしています。必要以上のお金を貯め込んで死んでいくのは、お金の使い方として効率よい方法だとはいえません。
しかし、漠然と生きていて日々衝動的にお金を使ってしまえば、使うべきときに資金がなく、人生でやりたいことを我慢する結果になります。「LIVE WITH ほぼゼロ」、つまり「貯蓄ほぼゼロで生きる」と、安心や安全が確保できず、教育資金と老後資金の2つの山場を乗り越えられないため、人生を後悔することになるでしょう。そこで、今を楽しむことを忘れず、明確な将来の計画を持つことが重要になります。
では、貯蓄ゼロ世帯はどのようにお金を貯め、教育資金と老後資金を用意していけばいいのでしょうか。
貯蓄ゼロ世帯が取り組むべき「先取り貯蓄」
「貯蓄ゼロ世帯」と聞くと驚きますが、まったくお金がないというわけではありません。日本銀行が事務局を務める金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、貯蓄がない世帯でも現在有している現預金残高の平均は、単身世帯で270万円、2人以上の世帯で576万円、総世帯では443万円になっています。
この調査では、金融資産の定義を「運用のためもしくは将来に備えるためのお金」としており、日常生活に使うお金や事業性資金は含まれていません。ですから日々の生活はカツカツ回せても、お金を貯める家計にはなっていない状態だということです。
しかし、どの世代にも貯蓄ゼロ世帯がありますし、2人以上の世帯よりは、単身の世帯のほうが貯蓄がない割合が高いことがわかります。
●「金融資産を持っていない」とする世帯
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」をもとに筆者作成
もちろん、この20年間、日本では給料が上がっておらず、個人の資産が増えないのは当然だと感じる方もおられると思います。しかし、貯蓄ができるかどうかは、年収の多い少ないとは関係ありません。年収が増えれば増えた分だけ消費に回してしまえば、貯蓄や資産が増えることはないからです。
まずは、毎月の収入から1割から2割程度のお金を強制的に貯蓄する仕組みを作りましょう。そして、貯蓄を差し引いた範囲内の収入で生活するスタイルを身につけましょう。
お金を着実に貯めるには、使う前に貯蓄する「先取り貯蓄」が有効です。貯蓄に回すお金は、最初からないものとして習慣化できれば、しめたものです。金利が低いので、もっと増える投資商品に目が行きそうですが、基盤となる半年から1年間の生活費相当の預貯金が貯まるまでは預金を継続しましょう。またお勤め先に財形貯蓄や社内預金などの利率がよいものがあればぜひ活用しましょう。
教育資金を貯めるポイント
子どもを持つご家庭の場合、どんな教育を受けさせるのかで、大きく教育資金の額が変わってきます。また教育資金は、入学・卒業などのスケジュールが決まっているので、計画的に準備することができる特徴があります。子どもが高校を卒業するまでの教育費は、毎月の収入の中でまかない、大学の費用となる教育資金は子どもが生まれたらできるだけ早く準備を始めましょう。
教育資金は、コツコツ貯めていくのが基本です。たとえば15歳の中学校卒業までもらえる児童手当を貯めると約200万円になります。200万円は国公立大学の4年分の学費に相当します。さらに生まれてから月々1万円を18年間積み立てると、216万円になります。児童手当と月1万円の積立をして約400万円貯まれば、私立大学文系の資金が実現します。積立貯蓄や財形貯蓄、つみたてNISAなども活用して教育資金を準備していくといいでしょう。
かつて教育資金を貯める方法として、学資保険を活用していた時期もありましたが、現在では予定利率が下がっており、魅力が乏しくなっています。外貨建ての学資保険を検討する場合には、為替のリスクについて十分な理解を心掛けてください。
また、ご自身が学生の頃とは入試のシステムや時期が異なっていることもあります。特に少子化の影響により、推薦入試などが増えています。推薦試験に合格すれば、秋に入学金の納入が必要になります。さらに学費以外にも入試に多額の費用が必要です。お金が必要な時期や教育資金の概算が把握できていると、慌てずに済みます。どうしても教育資金が足りない場合には、奨学金制度を検討するのも一つの方法です。
老後資金を貯めるポイント
どうしても避けることができないのが老いです。平均寿命が延び続けており、人生100年時代がリアルに感じられます。子どもがいるかいないかに関わらず、老後資金は早い段階から貯めることをおすすめします。老後資金を貯める際は、計画的に長期にわたって資産を積み上げていくことと、運用のリターンの2つの側面から資産形成を考えていきましょう。
老後資金は、半強制的に貯める制度で、税制で有利な取り扱いのあるiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やつみたてNISAを利用するとよいでしょう。
老後が近づく50歳代には、仕事とお金の工夫の両方から取り組んでみましょう。仕事継続の準備を行うとともに、老後の生活水準をダウンサイジングすることを検討します。収入増・支出減により、老後資金を用意します。
2021年4月から70歳までの雇用機会の努力義務化がなされ、働き続ける環境が整ってきました。働くことにより収入の不安が軽減され、将来の老後資金や年金額を増やすことにもつながります。さらに、生活費を少なくできれば貯金や投資に回すお金が増え、老後資金も増やせます。さらに働くことで健康が保てるとなれば、一石二鳥ですね。
まとめ
貯蓄ゼロの世帯の増加の背景には、生活スタイルやマインドが大きく影響しています。特に貯金がない人ほど生活設計を立てていない傾向が強く、お金を貯めることに途中で挫折してしまうことにつながっています。しかし、それでは教育資金・老後資金の山場は乗り越えられません。「LIVE WITH ほぼゼロ」から脱却し、貯蓄を習慣化しましょう。
また貯蓄ゼロ世帯は、今の余暇を充実させる傾向にあり、万一の事態は自分には起こらないだろうと構えています。しかし、年収の伸び悩みもありますし、今まで以上に今後の情勢が不透明で、物価が高騰しています。限られた収入でどう生活していくのか、そして教育資金・老後資金どう用意していくのか。お金の使い方を吟味して、メリハリのある使い方に変えていく必要があるでしょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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