22/03/31
つみたてNISA・iDeCo・預貯金の積立配分はどうする?月5万円・8万円のロードマップ
資産の配分を考える際に有効な考え方に、「コア・サテライト戦略」があります。コア・サテライト戦略では、資産の7割〜9割を堅実に増やす「コア」、残りの1割〜3割を高いリターンを目指す「サテライト」に分けて運用することで、お金を減らさずに増やすことをめざします。
今回は、月5万円・8万円を貯蓄していく際に、具体的に何にいくら積み立てていけばいいか、積立配分のロードマップをご紹介します。
コア・サテライト戦略の「コア資産」から作ろう
コア資産には、預貯金や定期預金、インデックス型・バランス型の投資信託、ETF(上場投資信託、不動産投資などがあります。とくに投資信託は、つみたてNISAやiDeCoといった非課税のメリットが生かせる制度と組み合わせると効率よくお金が増やせます。対するサテライト資産には、日本や米国の株式、アクティブ型の投資信託などがあります。
これからはじめて資産運用を行う場合には、コア資産から作っていきます。といっても、いきなり投資をするわけではありません。コア資産には預貯金や定期預金が含まれています。これらがまったくないのであれば、まずは生活費の6か月分の預貯金を貯めましょう。
専門家のなかには、預貯金を貯めずに「投資を始めよう」という人もいます。しかし、仮に暴落が起きた場合、資産が大きく減ってしまい、資産を引き出すにも損失を抱えているから引き出しづらく、生活が立ちいかなくなる恐れがあります。市場が値下がりしているにもかかわらず、お金を引き出さざるを得ない…という状況は悲しいものです。
確かに、預貯金だけではお金は増えません。しかし、預貯金は「元本割れしない」「いつでもすぐに引き出せる」メリットがある、大切な資金です。投資を本格的にスタートする前に、生活費の6か月分の預貯金は貯めておくようにしてください。毎月の貯蓄の目標は手取りの2割。実家暮らしなどで支出が少ない場合は手取りの5割〜8割などと、なるべく多く貯めるようにしましょう。
もっとも、6か月分貯まるまで投資せず預貯金だけだと、お金が貯まるまでにどうしても時間がかかってしまいます。ですから、3か月分の生活費が貯まったら、数千円と少額でもいいので投資をはじめましょう。
毎月の貯蓄額「5万円」の積立配分のロードマップ
では具体的に毎月5万円貯蓄する場合、どのようにお金を貯めていけばいいでしょうか。
例:年収375万円(賞与なしと仮定)
毎月の手取り:25万円
毎月の生活費:20万円→毎月5万円貯蓄する
●生活費の3ヶ月分の預貯金がないとき
・預貯金:5万円
先に紹介したとおり、生活費の3ヶ月分の貯蓄がない場合には、まずは預貯金を貯めることに専念します。この例では、毎月の生活費が20万円ですから、3ヶ月分は60万円です。毎月5万円ずつ貯めれば、1年で60万円が貯まる計算です。
●生活費の3ヶ月分の預貯金はあるが、6ヶ月分の預貯金がないとき
・預貯金:4.5万円
・つみたてNISA:0.5万円
生活費の3ヶ月分の貯蓄が貯まったら、つみたてNISAで投資をスタートしましょう。つみたてNISAは、年間40万円までの投資の利益にかかる税金が20年にわたってゼロにできる制度。金融庁の基準を満たした投資信託・ETF(上場投資信託)に投資し、じっくりお金を増やします。
毎月の預貯金が4.5万円なので、1年と1か月で60万円が貯まる計算。これで生活費の6ヶ月分、120万円が貯まります。
●生活費の6ヶ月分の預貯金があるとき
(株)Money&You作成
生活費の6ヶ月分の預貯金が貯まったら、図のように1万円を預貯金、3万円をつみたてNISA、1万円をiDeCoに振り分けます。
iDeCoは自分で出した掛金を運用して増やし、老後の「自分年金」を作る制度です。つみたてNISA同様、運用益が非課税になるうえ、出した掛金が全額所得控除になるので毎年の所得税や住民税を減らせます。さらに、受け取るときにも税制優遇があります。
もしも急にお金が必要になったとき、つみたてNISAは解約が自由にできます。それに対しiDeCoは原則60歳まで引き出せません。そのため、つみたてNISAを優先し、資産配分を多くしています。
iDeCoでは、掛金全額が所得控除できます。この例の場合、年間の掛金は12万円。そこから、年収375万円だと所得税5%、住民税は一律10%なので、計15%が節税できます。よって、12万円×15%=1.8万円が毎年節税できます(厳密には、所得税は年末調整で還付され、住民税は翌年分が安くなります)。この節税分は毎年貯蓄に回していきます。
以上の資産配分でお金を20年貯めつづけ、その間つみたてNISA・iDeCoで年3%で運用できたとすると、資産は次のように増えます。
●毎月5万円貯蓄の資産推移
(株)Money&You作成
1年目は60万円、2年目は120万円と、お金はほぼ貯蓄した分しか貯まっていませんが、3年目は183万円、5年目は311万円…と、お金が増えるスピードが増すことがわかります。20年目の資産合計は1512万円。つみたてNISAやiDeCoでは複利効果が受けられるため、長く続けるほどお金が増えやすいのです。
毎月の貯蓄額が増やせるなら、つみたてNISA・iDeCoを上限額まで取り組むのがおすすめ。つみたてNISAの上限は月約3.3万円、iDeCoの上限は働き方や企業年金の有無などで異なりますが、企業年金のない会社員の場合で月2.3万円です。また、ボーナスがあるならば3〜5割は預貯金に回しましょう。
こうすることで、預貯金の割合も増やせますし、つみたてNISA・iDeCoの掛金額も増やしていけます。
毎月の貯蓄額「8万円」の積立配分のロードマップ
毎月の貯蓄額が8万円にできる場合も考えてみましょう。
例:年収500万円(賞与なしと仮定)
毎月の手取り:33万円
毎月の生活費:25万円→毎月8万円貯蓄する
●生活費の6ヶ月分の預貯金があるとき
(株)Money&You作成
生活費の6ヶ月分の預貯金がない場合の考え方は、月5万円の場合と同じです。生活費の3ヶ月分の預貯金が貯まるまでは預貯金一本、生活費の3ヶ月分以上6ヶ月分未満の時は預貯金に加えてつみたてNISAを利用します。
毎月の貯蓄額が8万円にできれば、つみたてNISAやiDeCo(企業年金のない会社員の場合)を上限額まで活用できます。いずれも非課税の制度ですから、まずは上限いっぱいまで取り組みましょう。この例では8万円のうち合計5.6万円はつみたてNISAとiDeCoを利用しています。
残る2.4万円のうち、最低1万円は預貯金に回したうえで、最大1.4万円はつみたてNISA・iDeCoとは別にコア資産・サテライト資産に投資してもいいでしょう。
次の投資先の候補としては、次のようなものがあります。
●純金積立・金ETF(コア資産)
鉱物の金に投資する金投資。金は、世界経済が混乱に陥るような出来事があったとき値上がりする傾向があることから「有事の金」などと呼ばれ、注目されます。
金に投資する手段はいくつかありますが、おすすめは純金積立と金ETF(上場投資信託)です。純金積立は、毎月一定額ずつ金の現物に投資する方法。ネット証券などでは毎月1000円からスタートできます。また金ETFは、金の価格と連動する上場投資信託です。購入することで金を買うのと同じような効果が期待できます。
●米国債(コア資産)
米国の国債、米国債は世界中で広く取引されています。米国債の格付け(債務の支払い能力を格付け会社が評価した指標)は日本の国債よりも高く、年1%以上の金利が受け取れる商品もあります。おすすめはストリップス債。持っている間の金利が支払われずに元本に組み込まれるため、複利効果が得やすくなっています。
●米国株・米国ETF(サテライト資産)
米国は世界経済の中心でありながら、今なお成長を続けています。米国株を購入すると、その成長の力を借りてお金を増やせるでしょう。株主還元に積極的な企業が多く、「高配当株」「連続増配株」が多いのも特徴です。
個別株はリスクが高くて怖いという場合は、米国の高配当株に投資するETFを購入すると、数十〜数百の米国高配当株に投資するのと同様の効果が得られます。
●日本株(サテライト資産)
私たちに身近な日本株の中にも、成長する銘柄、値上がりする銘柄はあります。そうした銘柄に投資することで、お金を増やしていけます。近年は1株単位でも購入できる「スマホ証券」が出てきており、少額でもスタートしやすくなっています。
教育資金を貯める必要がある場合
人によっては、教育資金を貯めなくてはならない場合もあるでしょう。高校までの教育費はまだ毎月の家計でやりくりするのが一般的です。一方で、大学の授業料は半期に納入することになっているので、まとまったお金になります。したがって、大学の資金を家計のやりくりで用意するのは厳しいものがあります。
文部科学省の資料によると、大学4年間の費用は国公立で約242万円、私立文系で約400万円、私立理系で約543万円かかっているからです。
子供が18歳になるまでに約500万円は準備する必要があるということです。
まず取り組みたいのが「児童手当」に一切手をつけず貯めること。児童手当は、0歳から中学校卒業までの子どもを育てる方が受け取れるお金です。世帯主の年収が960万円(専業主婦(夫)+子ども2人の場合の目安)未満の場合、支給される児童手当をまったく手をつけずに貯めると約200万円になります。
これが貯められれば、「残り300万円を子が18歳になるまでに用意すればいい」ことになります。
●毎月の貯蓄額「8万円」の積立配分のロードマップ(大学資金も用意する場合)
(株)Money&You作成
図は大学資金の準備を加味した場合の毎月の貯蓄8万円のロードマップです。預貯金2.4万円のうち1.4万円はもしもに備えるお金、1万円は大学資金用として貯蓄した場合、18年後に大学資金は216万円用意できます。
つみたてNISAとiDeCoを上限まで利用する点は先ほどと同じです。ともに18年間、年3%で運用できた場合、つみたてNISAの資産は944万円になっています。
iDeCoの節税による貯蓄も74.52万円になる計算です。預貯金とiDeCoの節税貯蓄分だけで300万円近くになる計算ですが、つみたてNISAの資金も一部解約して大学資金にあてることができます。
非課税枠をフル活用しよう
今回のロードマップの積立配分は1人分で考えてきましたが、夫婦の場合も同様に考えることができます。夫婦の場合、非課税枠も2人分得られます。ですから、非課税枠を夫婦でフルに使うにはどうすればいいか、夫婦で話し合っていただくといいでしょう。ぜひ、今回のロードマップを参考にしてください。
今回の記事は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
【関連記事もチェック】
・iDeCo・つみたてNISAの次は何に投資するのがよいか
・LINE証券のつみたてNISAは信託報酬ゼロ投信を購入できるのが魅力!その他メリット、特徴、商品、おすすめな人を一挙紹介
・50代からの「つみたてNISA」を始めるのは遅いのか 商品は何を選べばよい?
・つみたてNISA、4年間でもっとも儲かった商品は?
・【2022年版】つみたてNISAでも使える「クレカ投資サービス」厳選5社
頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
この記事が気に入ったら
いいね!しよう