21/12/22
投資信託とETFの違いは? どちらから投資すべきなのか
今や資産形成の主役の「投資信託」は100円と少額から、自動で積立することが可能で、仕事に家事にと忙しい日常を送っている方でも、あるいは面倒くさがりでズボラな方でも始めやすい投資商品といえます。
個人で購入できる投資信託は、現在、約6000本あります。
投資信託の中には、証券取引所に上場しているものがあります。これらは「ETF」と呼ばれます。
今回は、投資信託とETFの違い、どちらから投資すべきかについて考えていきます。
投資信託とETFは似ているようで大きく違う
ETFは、証券取引所に上場している投資信託。日本語でも「上場投資信託」などと訳されます。ETFのほとんどはインデックス型で、TOPIXや日経平均株価など、指数に連動することを目指しています。アクティブ型のETFもあるのですが、数は少なめです。
インデックスファンドとETFの主な違いを示しました。
著書「投資信託勝ちたいならこの5本!」(河出書房新社)より
インデックスファンドは銀行や証券会社など、その商品を取り扱う金融機関で購入できます。一方、ETFが購入できるのは、証券会社のみです。
投資信託の基準価額は1日1回更新されるだけです。しかし、ETFは上場していますから、市場が開いている間、株式と同じように価格が刻々と変動します。成なり行ゆき・指さし値ね といった注文方法も株式と同じなので、タイミングを見計らって売買することも可能です。
インデックスファンドは購入時手数料がかからないものが多いのですが、ETFの場合は株式と同様に売買手数料がかかります。また、保有中の信託報酬は、インデックスファンドもずいぶん安くなってきましたが、それでもETFのほうが安くなっています。
インデックスファンドは金融機関によっては100円から購入できますが、ETFは最低でも取引価格×1取引単位の資金が必要。おおよそ1万円〜10万円ほどの資金が必要です。
また、インデックスファンドの場合は分配金を自動で再投資できるのですが、ETFにはそうしたしくみが少ないため、再投資する場合は、自分で手続きする必要があります。
ここまでお話ししてきた違いを、実際の商品で確認してみましょう。
下に示したのが、「楽天・全米株式インデックスファンド」と「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)」を比べた表です。
著書「投資信託勝ちたいならこの5本!」(河出書房新社)より
楽天・全米株式インデックスファンドは、投資信託を通じてVTIを購入している商品です。
大きく違うのはやはり信託報酬でしょう。楽天・全米株式インデックスファンドの信託報酬は年0.162%。インデックスファンドの中ではかなり安い水準です。しかし、VTIはわずかに0.03%ですから、投資信託よりもさらに安いのです。
信託報酬は、ほんのわずかな違いであっても、長期間保有するほど大きな差になっていくので、当然安いほうが有利です。
また、取引単位や取引価格、分配金の自動再投資なども違います。より少額で手間がないのがインデックスファンド、リアルタイムの取引ができるのがETFです。
楽天・全米株式インデックスファンドはつみたてNISAやiDeCoの対象ですが、VTIはそもそもつみたてNISAやiDeCoで購入できないのも大きな違いです。
「ETF」と「投資信託」どっちから始めるべき?
ETFのメリットは、次の2点にまとめることができます。
①リアルタイムでいつでも取引できる
②インデックスファンドより低コストで分散投資が可能
ETFならば、市場の開いている時間に機動的に売買できます。市場での値動きによっては、思ったより安く買えたり、高く売れたりすることもあるでしょう。加えて、インデックスファンドより手数料が安いことがほとんどなので、コストを抑えた投資ができます。
とはいえ、ETFにもデメリットはあります。ETFのデメリットは、次の4点です。
①売買時・運用中にコストがかかる
②iDeCoは対象外・つみたてNISAは本数が少ない
③自動積立できる証券会社が限られている
④分配金が自動的に再投資されない
株式投資では売買時にしか手数料がかかりませんし、投資信託は販売手数料無料の商品も増えています。しかしETFの場合は売買時にも運用中にもコストがかかります。加えて、iDeCoではETFをそもそも購入できません。つみたてNISAにはETFがあるのですが本数は限られています。
さらに、ETFでは毎月一定額ずつ自動で買い付ける「自動積立」のサービスが限られています。自動積立したい場合は、本稿執筆時点では、SBI証券(米国株式・ETF定期買付サービス)、マネックス証券(ETF自動積立サービス)、PayPay証券(つみたてロボ貯蓄サービス)のみです。
また、分配金は自動的に再投資されないので、投資の利益で新たなお金を生み出す複利効果を生かすには、手動で再投資する必要があります。本稿執筆時点では、マネックス証券の「米国株定期買付サービス」のみが米国ETFの分配金の自動再投資に対応しています。
以上を踏まえると、ETFがおすすめな人は、
①iDeCoやつみたてNISAに上限まで投資し、次の投資先を探している人
②自分でタイミングを計って売買したい人
③手数料の低い海外ETFに投資してみたい人
といったところでしょう。iDeCoやつみたてNISAといった、非課税で投資する制度を目一杯使い切りましょう。そして、さらに投資できる場合に「その次の投資先」としてETFを活用するのがおすすめです。
『2022最新版 投資信託 勝ちたいならこの5本!』 頼藤太希 著
資産形成の主役である「投資信託」。
6000本ある投資信託、そのほとんどは売る側に都合がいい商品という実態。
二択形式で、投資信託の必勝法を客観的な立場からコーチ。さらに、現行商品を分析し、投資ビギナーにおすすめできる「いま選ぶべき5本の商品」を紹介。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、TBS「情報7daysニュースキャスター」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍100冊、累計180万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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