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22/12/23

家計・ライフ

「役職定年で年収5割減」起こりうる4つの問題、解決策は?

「役職定年で年収5割減」起こりうる4つの問題、解決策は?

役職定年とは、役職者(管理職、部長、課長など)が一定年齢に達したときに、ライン系の管理職ポストなどをはずれて、非ライン等の専門職などに異動する人事制度です。組織の新陳代謝を促すことなどが目的になり、大手企業を中心に導入されています。役職定年が始まる年齢は、企業によって違いがありますが、55歳ごろからというのが一般的と考えられます。

今回は、公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団が実施した50歳~69歳までの6250人を対象に行われた調査の報告書をもとに、年収が減ってしまうことでの影響、問題を紹介して、その対策をまとめます。

役職定年でいくら収入は減る?

役職定年経験者に、役職定年後の年収がいくら減少したか尋ねたところ、以下の結果になりました。

●役職定年後の年収の変化

ダイヤ高齢社会研究財団「50代・60代の働き方に関する調査」より

役職定年後も年収が変わらない、または増えたという人はわずかに7%ほど。全体の93.1%が定年後、年収が減ったと回答しました。

50代半ばの「役職定年」は、収入が減る最初の節目といわれます。実際、4割近くの人が「年収50%未満」なのですから、大幅な収入減を経験していることがわかります。

ここまで収入が減ると、仕事に対するモチベーションがどうなるのか、心配なところです。調査結果をみてみましょう。

●役職定年後の仕事に対するモチベーション

ダイヤ高齢社会研究財団「50代・60代の働き方に関する調査」より

グラフから、年収が大きく減るほど、モチベーションが大きく減っている様子がよくわかります。年収が減ったことに対し、モチベーションが下がったと答えた人が全体の63%もいることがわかりました。50代半ばという働き盛りであっても、年収が減ればやる気が低下するのは普通のことに思えます。

役職定年のリスクにどう備える?

実際、役職定年となり年収が大幅にダウンすると、次のような4つの問題が起こりえます。

①住宅ローンの返済に困る可能性がある
②子どもがまだ大学に通っているので学費が必要になる
③将来もらえる年金が少なくなる
④やりたいことが多く、より豊かな生活を理想としているが実現できない

役職定年により年収が下がることで起こりうるこれらの問題に備える方法を紹介します。

●役職定年のリスクに備える対策1:定年退職を織り込んだライフプランの作成

企業に勤めている場合、役職定年は誰にも等しくあることで、最初からわかっていることです。役職定年時にどのくらいの年収になるのか、40歳代のうちに確認して、それにあわせたライフプランを作成しておくとよいでしょう。

年収を減らしたくないというのであれば、転職も視野に入れる必要があります。50歳以降になってから、今よりも良い条件で転職をするとなれば、特別なスキルや実績が必要となるはずです。そうであれば、30歳代・40歳代という相当若いときからの準備をしておく必要があるかもしれません。必要とあれば、早いうちに新しいことにチャレンジするためにも、定年退職を織り込んだライフプランはとても重要といえます。

●役職定年のリスクに備える対策2:生活レベルを一定に保つようにする

若いうちに比べ、役職手当や家族手当などさまざまな手当がつくことで、徐々に年収が上がっているはずです。収入が膨らむにつれ、生活レベルがあがるのは普通のことと思っていませんか。そのような考え方で過ごしていると、役職定年で収入が減ったときに、生活そのものが贅沢になってしまい、生活レベルを下げるのに苦労します。

住宅ローンを含めた日々の生活のすべては手取りの7割でするようにして、残り3割は必ず貯蓄するようにしましょう。そのような習慣にしておけば、将来、収入が減った場合でも、窮屈でストレスのたまる生活をすることがなくなります。




●役職定年のリスクに備えるの対策3:早いうちから投資に取り組む

役職定年では、年収が大きく減少します。そう考えると、老後資金などの準備は早いうちから取り組む必要があります。その際、普通預金や定期預金などで行う方法もありますが、現状の金利はほとんどゼロです。お金の増やし方としては効率的とはいえません。同じ時間をかけてお金を増やす場合、投資に取り組んでみてはどうでしょう。

たとえば、毎月3万円・4万円・5万円を25年間、仮に2%複利で運用した場合の結果は以下のとおりです。

・毎月3万円(年間36万円)→1166万円
・毎月4万円(年間48万円)→1555万円
・毎月5万円(年間60万円)→1944万円

投資にはリスクがあり、状況によっては、お金が減ってしまう場合もあります。しかし、長期間にわたり、分散しながら、少しずつ積み立てていけば、短期的には損失を被る場合があったとしても、その損失をカバーできる期待ができます。

投資に取り組む際には、税制優遇の得られる制度を活用しましょう。
おすすめは次の2つです。

①iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、節税しながら投資で増やす最適な方法です。
iDeCoは、毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された積立・保険・投資信託などの金融商品で自ら運用して、運用の成果を原則60歳以降に一時金または年金で受け取る制度です。
iDeCoの積立額は最低月額5000円からはじめられ、その時々に応じ増やしたり減らしたりできます。上限は加入者の職業で違いがあります。たとえば、会社員の場合は月額2万3000円、公務員の場合は月額1万2000円、厚生年金に加入していない個人事業主(フリーランス)などの人は月額6万8000円まで掛金を拠出できます。

iDeCoの最大の特徴は、拠出時、運用時、受取時に税制優遇が受けられることです。具体的には、次のとおりです。

・拠出時:毎年拠出した積立金はすべて所得控除の対象になるため、所得税や住民税を安くすることができます。
・運用時:iDeCoの運用で得た利息、投資での利益には税金がかかりません。
・受取時:一時金でまとめて受け取るときは退職所得控除、年金のように分割で受け取るときは公的年金等控除の対象になり、所得税を抑えることができます。

iDeCoは、原則60歳まで引き出せませんが、老後資金を確実に用意するためには好都合でしょう。支払う税金額を抑え、効率的にお金を増やすための、うってつけの方法といえます。

②つみたてNISAを利用する
初めて資産運用をするとき「何に投資すればいいのか」がわからない人も多いのではないでしょうか。そういった方には「つみたてNISA」を利用するという方法があります。

つみたてNISAでは、毎月など一定のペースで投資信託などをコツコツ積立購入していきます。そうすることで、得られた利益などに対して、通常であればかかるはずの税(20.315%)がかからなくなる制度です。毎年40万円までの投資の利益にかかる税金を最長20年間非課税にできます。

たとえば、10万円の利益が出た場合、通常であれば10万円の約20%となる2万円ほどが税金で差引かれ、実際もらえる金額は残りの約8万円となります。しかし、つみたてNISAはそのような税金がかかりません。利益の10万円は、そのままもらえます。大変おトクな制度といえます。

つみたてNISAで購入する商品は、国が定めた基準を満たした投資信託・ETF(上場投資信託)のみ。いずれも手数料が安く、長期間かけてお金が増やせると見込まれる商品が揃っています。先述した全世界株型の投資信託も含まれています。
なお、つみたてNISAの資産は、途中でお金が必要になったらいつでも自由に引き出せます。老後資金の準備としても良いですし、それ以外の必要なコトにも活用できます。

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新NISAが始まる

2024年1月から新NISAが始まり、NISA制度の抜本的拡充・恒久化が行われます。簡単に改正点を解説します。

●非課税保有期間が恒久化

長期・積立・分散投資による継続的な資産形成を行うため、非課税保有期間が無期限になります。また、口座開設可能期間はいつでも始められるよう期限を設けません。

●年間投資上限額と非課税限度額が抜本的拡充

・つみたてNISAは「つみたて投資枠」となり年間投資上限が120万円に拡充
・一般NISAは「成長投資枠」となり年間投資上限が240万円に拡充
どちらの投資枠も併用可能になるので、年間投資上限額は360万円になります。
また、新たに生涯にわたる非課税限度額(生涯投資枠)が1800万円という枠組みが設けられます。ただし、成長投資枠は、そのうち1200万円です。
保有する商品を売却するなどして、生涯投資枠に空きが出た場合は、再び商品を購入し、非課税で保有することができます。

●現行の一般NISA・つみたてNISAは2023年末で終了

現行の一般NISA・つみたてNISAは 2023年(令和5年)末で買い付けが終了になります。それまで、非課税口座内で運用している商品は、新しい制度の非課税限度額とは別枠で保有ができます。

●ジュニアNISAも終了

ジュニアNISAは2023年末で制度が終了となります。2024年以降は、当初の非課税期間(5年間)の満了を迎えても18歳まで非課税で保有できます。なお、新NISAを利用できるのは成人のみ、未成年は利用できないので注意しましょう。

成人年齢が18歳に引き下げられたため、人生の早い段階から資産形成が始められるようになりました。NISA制度を利用すれば、得られた利益を投資に回し、さらに利益を生み出す複利効果が期待できます。これからの人生での様々なイベントを支える資金作りに役立つはずです。

まとめ

役職定年で収入が下がればモチベーションが下がるのは普通のことです。しかし、そうなる先が見えているのであれば、対策しておくことがモチベーションダウンにならない秘訣です。「そうなる前に、手は打ってある!」といえるよう、前もって備えておきましょう。

舟本美子 ファイナンシャルプランナー

「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー

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