20/09/25
「火災保険で雨どいが直せる」に要注意!あくどい手口・詐欺はこんなものがある
「火災保険を使えば、壊れた雨どいが無料で直せますよ」などと言って契約を結び、法外な手数料を請求したり、ずさんな工事を行ったりする業者がいます。特に台風や地震など大規模な自然災害が起きた後に、修理業者の営業活動が活発になるようです。そのような被害に遭わないために、私たちが気をつけておくべきことは何かを見ていきましょう。
あくどい事例が多数報告されている
火災保険は、文字通り「火災」が起きた時だけしか保険金の請求ができない、と思いこんでいる人が多いことに目を付けた一部の悪徳な業者が、住宅修理やリフォームに関して「火災保険が使える」と言って訪問・勧誘し、利用者とのトラブルに発展するケースが数多く報告されています。
「火災保険の請求から工事まで一貫して業者が行う。客側の金銭負担は一切ない」という 触れ込みで自宅に訪問し、勧誘してくる業者が多いようです。
実際、国民生活センターによると、
・自宅に突然、業者が訪問してきた。「お宅の雨どいが壊れていますよ。昨年降った大雪が原因かもしれません。加入している火災保険を使ってタダで直せるので、すべてこちらに任せて欲しい」と言われた。
・訪問してきた業者が「雨どいがゆがんでいます。保険金で修理できますよ」と言うので、50万円の見積もりで保険金を請求したが、支払われた保険金は20万円だった。「不足分の30万円を用意できないので、お金の都合が付いたら支払う」と業者に伝えると、「今すぐ保険金の30%を違約金として請求する。申し込み時に承諾しているはずだ」と言われた。契約時に業者は「お金は一切かからない」と何度も強調していた。
・住まいの無料点検をしていると言って訪れてきた業者に、屋根の傷みがひどく、修繕が必要と言われた。工事費用は80万円かかるが、「加入している火災保険で修繕できる。3年前の台風で壊れたと申請すれば保険金が支払われて無料でできる」と言われた。
といった事例が報告されています。
中には、チラシで修理を勧誘する事例もあるようです。
上が国民生活センターの資料にあるチラシのイメージ、下がある地域で実際に配布されていたチラシです。かなり酷似しています。
住宅の修理に関するトラブルは、上記以外にも報告されています。
・契約の内容が十分に説明されず、契約書が渡されていない
・保険金請求サポートの説明を受けていないにもかかわらず、業者から手数料を請求された
・保険金請求の手数料として、保険金の30~40%を支払うよう言われた
・修理依頼をして費用を支払ったが、いつまでたっても工事が始まらない
・見積もりと異なる工事をされたり、修理内容がずさんであったりした
被害に遭わないためには?もし被害に遭ってしまったら?
そもそも火災保険は、火災だけでなく「落雷・破裂・爆発」や「風災・雪災・水災・土砂崩れ」などの自然災害によって「建物」や「家財」に生じた損害を補償する保険です。老朽化や自然消耗による劣化が原因の場合には保険金は給付されません。また、自然災害が原因である場合に保険金を請求する際には、事故が起きた日と家屋などの損傷部分を特定して保険会社に報告する必要があります。
保険金の請求を行うのは、火災保険の被保険者です。意思判断能力を著しく失った場合等、被保険者に保険金を請求できない事情がある場合には、被保険者の親族が代理人として保険金を請求できる場合があります。よって、親族ではない業者が代理で行うことは認められていません。
被保険者が、修理業者から言われるがまま保険会社に虚偽の報告と請求を行なった場合、保険契約が解除されたり、保険金の返金請求をされたりすることがあります。それだけではなく、詐欺罪に問われる可能性もあります。
保険金請求権の時効は3年です。事故が発生した場合には、遅滞なく契約している保険代理店や保険会社に連絡をする決まりになっています。連絡が遅れると、それによって保険会社が被った被害の額が差し引かれて保険金が支払われることがあります。突然自宅に訪問してきた業者の勧誘を受けてから修理をするのではなく、被保険者自身がきちんと補償内容を把握した上で、自ら能動的に行動することが望ましいのです。
このチラシには、「火災保険から自然災害による修理・交換費用が認められ、無料で交換又は修理を行うことができました」「持ち出し金なしで施工いたします」などと書いてあります。これは、火災保険金の受取りが前提の調査と、交換又は修理の勧誘になっている印象を受けます。
被保険者が保険会社に保険金支払いの請求手続きを行うと、保険会社はその請求が補償に該当するものなのかどうかの調査を行います。該当しなければもちろん、保険金の支払いはありません。そうなった時に、果たして修理会社は本当に無料で修理や交換を行ってくれるのでしょうか。
本来、修理や交換は生活に不具合が生じているから行うものであって、保険金の支払いが前提で行うものではありませんよね。事故が起きた場合には、速やかに保険会社に連絡しましょう。また、このような業者が訪ねてきても、契約をしないことが賢明です。何かおかしいと感じた時には、加入している火災保険の損保会社や保険代理店に電話をして相談し、あわせて補償内容をよく確認しましょう。
もしも契約をしてしまって取り消したい場合には、クーリングオフ制度を利用しましょう。また、消費者ホットラインに相談してみるもの良いでしょう。
まとめ
詐欺まがいの話に引っかかってトラブルに巻き込まれないためにも、本来の保険事故の意味をしっかり認識しておくと同時に、加入している火災保険の補償内容について、今一度確認をしておきましょう。
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小河由紀子 「発達障害がある子」を育てる親御さんを元気にするFP
神奈川県出身。結婚・出産後に産婦人科で医療事務に従事。一念発起してCFP®と日商簿記2級の資格を取得。お金の勉強と数字の楽しさに目覚める。その後保険代理店勤務などを経て、2018年に独立系FPのためのプラットフォーム会社に所属。翌2019年に「FPオフィスOgawa」を開業。顧客がお金に振り回されず、自らコントロールする力を身に着けてもらえるよう、分かりやすい言葉で現実的なアドバイスを行っている。FP Cafe登録パートナー
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