24/06/20
自己破産しても絶対に免除されない6つの支払い
借金は返さなければならないものですが、どうしても返せないというときの最終手段に「自己破産」があることをご存じの方もいるでしょう。確かに、自己破産をすれば借金などの債務の支払いは原則的に免除になります。しかし、すべての支払いが免除になるわけではありません。今回は、自己破産しても免除されない支払いを6つ紹介します。
年間6万人以上が自己破産を申し立て
借金の返済が困難になったとき、最後の手段となるのが自己破産です。自己破産とは、借金の支払いが不可能なことを裁判所に認めてもらう手続きで、合法的に借金を免除してもらえる唯一の方法と言えます。
裁判所が公表している司法統計によると、令和4年度の個人の自己破産申立件数は6万4833件です。近年やや減少傾向になっているものの、年間6万人以上が自己破産を申し立てていることがわかります。
自己破産のメリットとデメリット
自己破産のいちばんのメリットは、借金の支払いが免除になることです。自己破産の手続きで免責許可決定を受ければ、借入金などの債務は免除になります。滞納している借金も、返す必要がなくなります。金融機関から借りたお金のほか、クレジット代金、奨学金、未払いの家賃などは免除の対象です。
自己破産のデメリットとしては、持っている財産は売却して借金の返済に充てなければならない点があります。家や車は手放さなければなりません。また、士業や公務員など一部の職業につけないことや、ブラックリストに載って新たな借入ができないといった制限もあります。ただし、こうした制限は一定期間経過すればなくなるため、デメリットとして大きすぎるものではありません。
自己破産しても免除されない6つの「非免責債権」とは?
自己破産が認められれば、そのとき抱えている債務は原則的に免除となります。しかし、どんな債務でも免除になるわけではありません。法律上、自己破産しても免除にならない「非免責債権」があります。非免責債権に該当する支払いは、必ず行わなければなりません。
以下、支払義務が残る6つの非免責債権について、どんなものかを説明します。
●自己破産しても免除されない支払い①:税金・社会保険料などの公的な債務
税金や社会保険料などは破産しても支払いが免除されません。具体的には、以下のようなものは支払義務が残ります。
・所得税
・住民税
・贈与税
・相続税
・自動車税
・固定資産税
・国民健康保険料
・国民年金保険料
・下水道料金
なお、水道料金のうちの上水道料金、電気料金、ガス料金などについては、自己破産により滞納している分の支払いが免除されます。
●自己破産しても免除されない支払い②:損害賠償金や慰謝料のうち悪意や重過失で発生したもの
事故などで他人にケガをさせたり迷惑行為を行ったりした場合、損害賠償金や慰謝料を請求され、支払い義務を抱えていることがあるでしょう。損害賠償金や慰謝料については、免除になるものとならないものがあります。
悪意や重過失で発生したものについては、免除になりません。この場合の「悪意」とは相手に損害を与えるという意思を持っていることです。非免責債権となるには積極的な害意が必要と考えられており、悪質な行為にもとづき発生した損害賠償金等は破産しても支払い義務が残ります。
たとえば、以下のような場合には、自己破産してもきちんと支払いを行わなければなりません。
・暴走運転で事故を起こした場合
・飲食店でわざとやった迷惑行為
一方、離婚や不貞行為の慰謝料については、積極的な害意があるとは言えず、自己破産により支払義務がなくなるのが一般的です。
自己破産した後、損害賠償金や慰謝料の支払義務が残るかどうかについては、ケースバイケースで法律的な判断が必要です。自己判断せず、弁護士に相談してください。
●自己破産しても免除されない支払い③:親族間の扶養義務にもとづく支払い
配偶者や子どもなどの親族を扶養するために支払うお金は、破産したからと言って免除になるものではありません。もし免除になるとすれば、家族の生活が脅かされてしまうからです。
たとえば、以下のような支払いは非免責債権であるため、支払い義務が残ります。
・離婚した元夫または元妻に対する養育費の支払い
・夫または妻に対する婚姻費用(生活費)の支払い
養育費や婚姻費用について、公正証書や調停調書で取り決めしている場合には、原則的にその金額を払い続けなければなりません。
●自己破産しても免除されない支払い④:従業員の給料や退職金
個人事業主が自己破産した場合、従業員の給料や退職金の支払いが残っていることがあります。従業員を保護するため、たとえ自己破産しても、従業員の給料や退職金は払わなければならないとされています。従業員に対する預り金がある場合にも、従業員に支払いを行う必要があります。
●自己破産しても免除されない支払い⑤:自己破産する際に明らかにしていない借金
支払いが免除になるのは、自己破産手続きで明らかにし、免責許可を受けたものだけです。たとえば、家族や友人からの借金を申立て書類に記載していなかった場合、その借金は免除にはなりません。
なお、自己破産の際にはすべての借金を明らかにしなければならず、借金を隠しているとそもそも免責が受けられないことになります。
●自己破産しても免除されない支払い⑥:罰金などの制裁金
刑事罰として科される罰金も、支払い義務は残ります。その他にも科料、過料、追徴金と呼ばれる制裁金や刑事訴訟費用なども、自己破産で免除にはなりません。
非免責債権が支払えないときには?
自己破産した場合でも、上記のような支払いは免除されません。自己破産するとブラックリストに載ることになり、一定期間は新たな借入もできなくなってしまいます。支払い義務が残ると言っても、実際に払えないことも多いでしょう。非免責債権が払えない場合には、以下のような対処法をとる必要があります。
●税金等は役所に相談
税金や社会保険料の支払いが困難な場合には、役所に事情を話して個別に相談しましょう。支払いの免除は無理でも、分割納付にしてもらえることはあります。
税金の滞納を続けると、延滞金も加算されるため、支払額が増えます。また、国や自治体は裁判所を通さずに強制執行ができるため、比較的短期間のうちに預貯金などを差押えされることになります。税金は必ず払わなければならないことを認識し、支払えない場合には放置しておかないようにしましょう。
●損害賠償金は債権者と交渉
損害賠償金を予定通り支払えない場合、分割払いや支払期日の延長について債権者と交渉する方法があります。「払えないものはどうしようもない」と放置しておくのがいちばん問題です。何も連絡せず払わずに放置していれば、裁判を起こされる可能性があります。債権者に対して誠実な対応を心がけましょう。
●養育費や婚姻費用は減額調停する方法も
養育費や婚姻費用についても、約束通り払えない場合には、受け取る側に事情を説明して話し合いが必要です。直接の話し合いが難しい場合には、家庭裁判所に減額調停を申し立てる方法があります。調停を申し立てた場合、家庭裁判所で相手と話し合い、調整を図ることになります。
自己破産するときには非免責債権にも注意しておこう
借金を重ねて支払いが苦しくどうしようもない場合、裁判所に申し立てて自己破産するのも1つの方法です。自己破産すれば今ある借金等の債務の支払いを免除してもらえるため、生活を立て直すこともできるでしょう。ただし、自己破産しても免除にならない支払いもあるため注意が必要です。自己破産をするなら、支払いが残る債務をどうやって支払うか、支払えない場合にはどのように対処するかも考えておきましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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