22/10/31
老後破綻を防ぐ、年金生活までに節約すべき5つの支出
現役に比べ、収入がタイトになる年金生活ですから、「年金生活に向けて生活をダウンサイジングしましょう」などと言われることがあります。何もせずに年金生活に突入してしまえば、日々の生活に追われ、ダウンサイジングする余裕もないかもしれません。そうならないためにも、年金生活までに、少しずつ支出を見直しておきましょう。今回は、老後破綻を防ぐために、年金生活までに節約したい5つの支出をまとめます。
年金生活までに節約したい支出1:住居費
賃貸物件にお住まいの方、持ち家の方、いろいろあると思います。それぞれの住居費を考えてみましょう。
●賃貸物件に住んでいる場合
賃貸住まいの場合、家賃だけでなく、共益費や管理費などもずっとかかり続けます。生活に必要な支出項目の中でも家賃等の占める割合が最も大きいため、節約することで大きく支出を減らせます。
家の中にあるモノを整理し、コンパクトな物件に引っ越すことを検討してみましょう。65歳からもらう予定の年金などの収入を早めに確認し、手取り額の2~3割程に収まる物件を探します。仮に家賃が月1万円減らせれば、10年間で120万円の節約につながります。
●持ち家に住んでいる場合
持ち家に住んでいる方は、家賃のように毎月かかる費用はありません。しかし、住宅ローンが残っていたら、老後生活に大きな負担となり、結果的に老後破綻を招くこともあります。ただでさえ、年金収入だけでは収支がマイナスに傾きがちなのに、現役時代と同じローンを支払うことは容易ではありません。住宅ローンを退職までに返済する方法を考えるか、あるいは借り換えで、月々の負担を安くすることを検討しましょう。
年金生活までに節約したい支出2:保険料
毎月支払う保険料には、万一の死亡を保障するものと、病気・ケガを保障するものがあります。どちらも定期型で更新するタイプのものであれば、将来、更新するごとに保険料が上がってしまうでしょう。今のうちに終身型に切り替えておけば、保険料が上がることを防ぐことができます。
しかし、終身型に切り替えようとすると、今の年齢では保険料が高くなったり、健康上の理由で入れなかったりすることもあるでしょう。そこで、保険の保障の内容を見直しましょう。
たとえば、死亡保障は、家族の生活を守るために加入しているはずです。ですから、子どもが独立した後は必要のない保障かもしれません。また、医療保険は、民間の生命保険に入らなくても、高額療養費制度を利用すれば大丈夫という場合もあります。高額療養費制度とは、1ヶ月に支払う医療費が所得ごとの上限を超えた場合に、差額が戻る制度です。つまり、高額療養費制度の上限額を医療費として貯蓄しておけば、医療費をカバーできます。
固定費となる保険料は、払いすぎていると、後々になって負担を感じる支出となります。今のうちに、必要性を見極めましょう。
年金生活までに節約したい支出3:レジャー費
レジャー費には、友人とのランチや映画鑑賞など少額なものから、旅行に出かけるなど高額のものまであります。年金で生活するようになると、時間的なゆとりができることが多いですが、いつも外出となると、交通費や休憩時のお茶代など諸々の費用もかかります。友人とのランチは月1回だけ。旅行は年1、2回だけというようにメリハリをつけたルールを設けましょう。その際、さまざまなサービスで「シニア割引」があります。自分にあったものを積極的に活用するようにしましょう。
シニア割引には、たとえば次のようなものがあります。
●JR各社の「ジパング倶楽部」
JR各社の「ジパング倶楽部」を利用すると、年間で20回まで、日本全国のJRの運賃・料金が2割引または3割引で利用できます。また、JRホテルグループのホテルの宿泊料金割引などの特典を受けることもできます。女性満60歳以上、男性満65歳以上であれば誰でも入会可能(夫婦どちらかが満65歳以上ならば夫婦で入会可能)。年会費は3,840円(1人分)、6,410円(2人分)です。
●イオン「G.G感謝デー」
イオンでは、毎月15日の「G.G感謝デー」に買い物が5%割引に。55歳以上の方に発行されるG.Gマーク付きの電子マネー・クレジットカードで買い物をした場合に対象となります。なお、55歳を迎えたら、お持ちのイオンカードを設定変更することでもG.G感謝デーの割引が受けられるようになります。
●博物館や映画館などのシニア割引
たとえば、次のような施設でシニア割引が受けられます。
・国立科学博物館
65歳以上であれば、無料で入館できます。
・上野動物園
65歳以上であれば、300円で入園できます。何回も利用したい場合は、年間パスポート(購入日から1年有効)を1200円で購入すればお得です。
・新国立劇場
65歳以上は5%割引でチケット購入できます。
・TOHOシネマズ
60歳以上の方は入場料1200円で映画鑑賞ができます。
・イオンシネマ
55歳以上になると、1100円で映画鑑賞ができます。
最寄りの博物館や美術館でも、シニア割引制度を設けているのではないでしょうか。出かける際に必ずチェックしてみましょう。なお、利用にあたっては年齢がわかる証明書の提示を求められる場合があるので、必ず持参しましょう。
●外出以外にも楽しみはある
外出ばかりが楽しみというわけではありません。たとえば、ベランダで野菜作りをしたり、絵手紙で友人と近況を伝えあったりするのも楽しいものです。家の近くを散歩したり、自治体が開催しているハイキングの会などに参加したりしてみると、お金がかからず楽しめて、運動不足も解消できるのではないでしょうか。旅行などのイベントもよいですが、日常生活の中でも自分にあった楽しみ方を見つけることをメインに考えましょう。
年金生活までに節約したい支出4:車関連費
車があると、どこでも気軽に出かけられますが、税金、自動車保険、ガソリン代、車検などのメンテナンス代、駐車場代など、さまざまな経費がかかります。もし、車が2台あるのであれば、1台に減らせば相当な経費節約になります。
また、高齢になってくると運転に不安を覚えることもあるでしょう。そう感じるならば、思い切って免許を返納し、車も手放してしまえば、車と関連費用がスッキリなくなります。65歳以上で運転免許証を返納すれば、お住いの自治体ごとで、お得な各種サービスを受けることができます。
たとえば、東京都であれば、「高齢者運転免許自主返納ロゴマーク」のある施設・店舗で運転経歴証明書を提示すれば、高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業のサービスを受けることができます。
●高齢者運転免許自主返納ロゴマーク
高齢者運転免許自主返納サポート協議会ウェブサイトより
年金生活までに節約したい支出5:医療費
65歳を過ぎると感じるのは健康不安ではないでしょうか。多少のものは年相応かもしれませんが、放置しておくと大病に繋がるリスクが高くなるものです。予防という観点から、早期発見・早期治療に必要なお金は削らないように気を付けましょう。国民健康保険などに加入していれば、各自治体や会社などで健康診断を受けられる制度があります。それを利用することで安く健康状態をチェックできます。
一方、医療費の削減には健康寿命を延ばすことが大切です。健康を維持するには「食事」「運動」「休養」がとても大事です。
たとえば食事は、旬の野菜でビタミン・ミネラルをたっぷり摂ること。糖質・脂質を控えること。タンパク質を充分に食べること。過度な飲酒を控えることが大事です。
運動は、よく歩くことが大事。苦しくならない程度での早歩きがおすすめです。また、毎日10分ぐらいの筋トレやストレッチを行い、身体の柔軟性を高めておけば、ケガを予防できます。
休養もきちんとしましょう。高齢になると「よく眠れない」という悩みを抱える方も多くいます。夕食後はスマホを見ないなどのルールを決め、お風呂に浸かってリラックスを心がけましょう。しっかり休養が取れれば、ストレス緩和につながります。
このように普段から健康維持に努めておけば、元気に長く働くこともできますし、医療費を抑えることにつながります。
まとめ
年金生活に向けて生活のダウンサイジングは、生活にゆとりがなくなるイメージを持つかもしれません。一方で、実践してみると「今までムダしていたな…」と気づくキッカケになる場合も多く、浪費が一気になくなってしまうぐらいの効果もあります。面倒だと思わず、できることから少しずつ取り組みましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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