20/09/22
年収1000万円でも貯蓄ゼロは10%。生活が苦しい3つの理由は
高収入=豊かな生活、と思いがちですが、年収1000万円でも生活が苦しい家計は決して珍しくありません。収入が多ければ、貯蓄はしっかり作りつつ、好きなモノを自由に買えると思いますよね。
なぜ、年収1000万円でも生活が苦しいのでしょうか。
年収1000万円以上でも貯蓄ゼロは10%
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯、2019年)」によれば、貯蓄額の平均は、年収1000万円~1200万円で1790万円、年収1200万円で4103万円ですから、多くの世帯ではしっかり資産形成ができていると言えるでしょう。
●金融資産保有額
「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯、2019年)」より
しかしその一方で、年収1000万円~1200万円の世帯で、金融資産非保有つまり貯蓄ゼロは10.3%、1200万円以上の世帯でも5.1%いるという結果になっています。
実に、年収1000万円以上あっても10人に1人は貯蓄ゼロ。年収1200万円以上でも20人に1人は貯蓄ゼロなのです。
年収1000万円でも生活が苦しい理由 ①使えるお金が意外と少ない
日本の所得税は超過累進税率と言って、所得が高ければその分所得税が増えます。
住民税は一律10%ですが、所得が増えれば住民税も高くなりますね。
税金の金額は、収入から所得控除を差し引いた「所得」に税率をかけて計算します。所得控除は、扶養家族の有無や生命保険に加入しているかどうかなどで変わるので、収入が同じ1000万円でも、税金の金額は人によって異なります。
そのほかにも、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料も収入の一定割合ですから、収入が高ければ、各種保険料も増える計算です。
2020年9月分以降、東京都の健康保険は9.87%、厚生年金は18.3%です。会社員の場合、保険料は会社との折半ですが、それでも負担は小さくありません。
このように税金と社会保険料が高いので、年収1000万円と言っても、実際に使えるのは750万円程度。独身で扶養家族がいなければ、税金が高くなって730万円程度になる場合もあります。
年収1000万円でも生活が苦しい理由 ②各種補助金の対象外
さらに、年収1000万円以上になると、各種補助金の対象からはずれてしまいます。
たとえば、中学生以下の子どもがいる世帯が受け取れる児童手当。所得制限限度額は扶養している親族の数で決まりますが、配偶者と子ども2人を扶養している場合、年収960万円を超えると手当の金額がグッと下がります。
児童手当は、1カ月あたり3歳未満は1万5000円、3歳以上小学校修了前は1万円(ただし第3子以降は1万5000円)、中学生は1万円です。しかし、収入が限度額を超えると1カ月あたり5000円に減額されます。
また、私立高校授業料の実質無償化が2020年4月から始まりましたが、支援を受けられる人の年収の目安は910万円未満です。
税金は高いが補助金は受けられない、年収1000万円の人は、トータルでは決して使えるお金が多いとは言えないのです。
年収1000万円でも生活が苦しい理由 ③マイホームが高すぎる
それにもかかわらず、年収1000万円以上の人は高すぎるマイホームの購入を決断しがちです。年収が1000万円以上で安定していると、高額なローンが組みやすくなることも原因のひとつでしょう。
また、年収1000万円もあるのだから、という自意識がワンランク上の物件を選ばせてしまうのかもしれません。
頭金が準備できないままにフルローンでマイホーム購入をすると、多くの場合、支払が厳しくなってしまいます。
今やサラリーマンでも業績によって給与の削減もありうるご時世です。特に、基本給は少なめでボーナスが多いというケースは要注意です。ボーナスは従業員に支払いを約束しているものではないため、業績が悪化すれば「今年のボーナスはゼロ」ということもあり得ます。
ローンの支払いに追われて、いざと言う時の貯蓄ができないと、何かあった時に家計が破綻しかねません。無理のないローンを組んで、貯蓄もできるような家計管理をしていく必要があります。
結局…やっぱりお金の使いすぎ
年収1000万円の人は、ローンだけではく、普段の生活費にもお金を使い過ぎてしまう傾向があります。食材にする野菜やお肉もちょっといいもの、ティッシュペーパーはふんわりしているもの、食器はブランド物、おしゃれな雑貨に囲まれて…と、ひとつひとつはお買い得品との価格差が小さくても、身のまわりをすべて「ちょっといいもの」にすると全体としては大きな違いになります。
いったん生活のレベルを上げると、下げるのは大変です。年収1000万円は、確かに高収入です。
しかし、贅沢や浪費ばかりをしていては、あっという間になくなってしまうのがお金です。ちょっとした節約を習慣にしていきたいですね。
かの資産家ウォーレンバフェット氏は、生活が質素であることでも有名です。食事はハンバーガー、飲み物はコーラが好きで、自宅は邸宅ではなく普通の家とのこと。
どんなにお金を稼いでも、収入とのバランスがとれない支出では生活が苦しくなるのも当たり前。少し質素すぎるかな、と思うくらいがちょうどいいのかもしれません。
【関連記事もチェック】
・共働きの年代別世帯年収と貯蓄額の実態
・50代独身の4割が貯蓄ゼロ! 平均はいくら? 50代のお金の増やし方・資産寿命の伸ばし方
・1000万円貯めた人は、貯蓄ゼロの人よりアレが3倍以上!
・アラフォーで1000万円貯蓄ある! それでも不安な場合の処方箋
・1000万円以上貯蓄している人が、最低限守る3つのルール
タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
この記事が気に入ったら
いいね!しよう