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19/01/29

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【書評】出口の見えない悩みを解決!『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』

いつの世も人の悩みは変わらない

紀元前1750年頃のメソポタミアの粘土板。歴史的価値の高いものですが、そこに刻まれていたのは、深遠な古代人の知恵ではなく「金を払ったのに店にひどいものをつかまされた」「客にこんな舐めたまねをするのか、ちきしょう!」というグチでした。
3200年前の古代エジプトのパピルスには「自分の誕生日なので2日休み」「二日酔いのため休み」「ミイラを作るから休み」と書かれていました。古代の人々も、考えていることは現代人とそう変わらなかったようです。

はるか昔からずっと、人類は「仕事」「人間関係」「人生」「健康」「お金」などの問題にさいなまされてきました。解決策が見えないものばかりのようですが、実はそうしたさまざまな人類共通の悩みに、哲学者たちが答えを示していたのです。身近な悩みを高尚な哲学に照らし合わせるとは? いったいどんな風に解決するのでしょう?
今回は、ロングセラー『ウケる技術』の著者、小林昌平氏の『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』(文響社)をご紹介します。

有名哲学者たちの豪華な人生相談室

有名な25人の哲学者の言葉から、さまざまな悩みを解決するためのヒントを見出そうとするのがこの本のコンセプト。

「お金持ちになりたい」という悩みには、マックス・ウェーバーが「富への執着をなくし、ストイックに働くこと」と答えています。
自分に向いている仕事で努力し、専念した功績が人々のためになり、結果的にお金が儲かるという考えです。

「将来食べていけるか」という悩みには、アリストテレスが「将来の目的や計画をいったん忘れ、今やりたいこと、やるべきことに熱中せよ」と答えています。
結果を気にせずに途中の作業に集中することで高いパフォーマンスが生まれ、自然と結果がついてくるという「いま・ここ」のプロセスを重視する考え方。やるだけやったら、次があるということです。

「死ぬのが怖い」という悩みには、ソクラテスが「生き延びることばかり考えない」と答えています。生きることに意識が向いていると、その分死が怖くなりますが、魂を高めるような生き方をすると、生死は気にならなくなり、いつ肉体の死が訪れても恐くなくなるといいます。

「自分の顔が醜い」という悩みに苦しんだサルトルは「人は今ある自分ではないものになることができる」という実存主義の考えを支えにして、外見のコンプレックスを克服しました。

哲学とはまったく関係がなさそうな悩みも登場します。「ダイエットが続かない」にはミルが、「恋人や夫・妻とけんかが絶えない」にはヘーゲルが、「不倫がやめられない」にはカントと親鸞が解決策を出しています。

こうして見てみると、難しそうな哲学者の思想は、意外なほどに現代人の日常生活に直結していることがわかります。

哲学が示す答えに勇気付けられる!

最新テクノロジーによる便利な生活を送る現代でも、私たちは尽きぬ悩みを抱えて鬱々と過ごしていますが、人類の歴史と共に多くの哲学者が悩みに向き合い、それを解消する答えを探してきました。さまざまな問題は、すでに先人の哲学者たちによって解決法が見つけられていたのです。

この本は初心者に分かりやすくまとめられており、哲学者の似顔絵もついてテンポ良く読めます。難しくて面白くなさそうなイメージの哲学ですが、私たちが思うよりもずっと生活に即した学問で、人生を救う知恵が満載。どの答えも生きる上でためになるもので、専門書を読まなくても、教養としての哲学を身につけられます。

悩める人にとって現実はうまくいかないものですが、3000年以上も前から人は同じような問題に苦しんできたと知ると、悩んでいるのは自分だけではないと勇気付けられます。
過去の哲学者たちにさまざまなピンチを乗り越えるコツを教えてもらい、ハードな状況を打開する力を身につけていきましょう。

『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』
(文響社)

小野寺 理香 おのでら りか

読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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