18/06/17
夫婦ペアローンの返済、夫の退職金で完済すると贈与税はかかる?
FP Cafe「みんなのマネー相談」
今回、FP Cafe「みんなのマネー相談」に投稿された相談は、「夫婦ペアローンの返済、夫の退職金で完済すると贈与税はかかる?」というもの。
ファイナンシャルプランナーの小野みゆきさん、山田香織さん、中村芳子さんが、家計分析の上、アドバイスしています。一緒に相談内容を見ていきましょう。
※ FP Cafeとは、あなたの思いに共感し、理想とする人生を実現するまで、共に歩んでくれる「伴走者」が見つかるサービスです。数十名の女性ファイナンシャルプランナーが在籍しています。
▼相談者プロフィール
年齢:夫 60歳、相談者 56歳
職業:夫 正社員、相談者正社員(事務)
住居:分譲マンション
今回の相談内容(神奈川県50代 tomotomoさんからの投稿)
●夫婦ペアローンの返済、夫の退職金で完済すると贈与税はかかる?
共働きの夫婦ですが、とうとう夫が定年を迎えました。まだ5年位は、収入は減るものの、働くつもりです。
予定通りに退職金でローンを完済するか、ローンを払いながら退職金を資産運用に回すか検討中です。
住宅ローンは夫婦で借りました。 夫は600万円、私は1000万円残っています。
ご相談したい内容は以下のとおりです。
(1) 夫の退職金を私のローン完済に充てると、贈与税などが発生するのでしょうか。
(2) このままローンを払い続けながら、退職金を保険や国債など満期のある資産運用に回すことは、選択肢としてありでしょうか。ちなみに現在のローン金利は0.9%です。
ファイナンシャルプランナー小野みゆきさんのアドバイス
●夫の退職金で妻のローンを返済すると、110万円超は贈与税がかかる
tomotomoさん、こんにちは。
中高年女性のお金のホームドクター「レディゴ社会保険労務士・FP事務所」の小野みゆきです。
ご主人が定年退職されたとのこと、お疲れ様でした。そしてそれを支えたtomotomoさんも本当にお疲れ様です。ひとつの大きな区切りですね。
退職金の使い方は同年代として、また同じように住宅ローンを抱える身としても、大変共感できるご相談です。
ご質問の回答として、
(1) 退職金はもらった本人の財産、住宅ローンは個人のマイナス財産(その分マンションの所有権持分がある筈)なので、配偶者であっても年間110万円を超えると贈与税の対象になると考えられます。
(2) 退職金の運用についてですが、教科書的な回答としては「ご主人の財産なので、ご本人がどのように考えておられるか」となります。
とはいっても、tomotomoさんとしては気が気じゃないですよね。
住宅ローンの残年数が不明ですが、金利が0.9%と低率であること、団体信用生命保険に加入されているであろうこと、そして国はインフレを目指した政策を行っているので物価の上昇が見込まれること、などを考えると退職金を住宅ローン返済でなく、資産運用にという選択肢は十分あると思います。
とはいえ、この回答は頂いた情報だけからのものです。住宅以外の資産や借金、今後の生活費予測なども含めて、総合的に考えていく必要があります。
ファイナンシャルプランナー山田香織さんのアドバイス
●夫からお金を借りて返済すれば贈与税にはならない
tomotomoさん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの山田です。
ご主人が定年を迎えられ、これからも働かれるということで、本当に素晴らしいことだと思います。
今回は、tomotomoさんの住宅ローンの残高をご主人の資金で完済する場合の贈与税について、それから、住宅ローンを払いながら資産運用することについてのご相談ですね。
まずは贈与税についてです。
「現在お住まいのマンションの所有割合を変更しない」、という前提で説明させていただきます。
ご主人の退職資金をtomotomoさんの住宅ローン完済にあてる場合、住宅ローンの残高分の贈与があったとされ、贈与税の対象になります。
別の方法として、ご主人からtomotomoさんがお金を借りて返済する場合、借りるだけなので贈与税はかかりません。仮に利息をゼロにしてご主人から借りる場合、利息相当額が贈与とみなされますが、年間110万円の範囲内であれば贈与税はかからないでしょう。
●夫婦間の貸し借りは適切に行わないと贈与とみなされる
しかし、夫婦間の貸し借りは、正しく行わないと贈与とみなされますので注意が必要です。
夫婦間でお金の貸し借りを正しく行う方法として、
・夫婦の間でも金銭の貸し借りに関する契約書を作成する
・返済は銀行口座を通して行う
・金銭の貸し借りについて夫婦間で共通の認識を持つ
などが考えられます。
夫婦間で貸し借りをして住宅ローンを完済する場合は、お近くの税理士さん、または司法書士さんに相談し、慎重に行うようにしてください。
●国債とインデックスファンドを組み合わせて、コツコツ増やす
2つ目の質問、資産運用についてです。
住宅ローンを払い続けながら退職金を原資に資産運用することについて、選択肢としてありだと思います。
現在、tomotomoさんの住宅ローンの年利は0.9%と比較的低利率です。資産運用もそれを超える利回りであれば、なお良いでしょう。
資産運用される際はタイミングを分けて分散投資しましょう。その方が一気に投資を行う場合と比べリスクが分散されます。
また、投資する商品についてですが、国債とインデックスファンドを組み合わせて、コツコツ増やすことをお勧めします。
「インデックスファンド」は比較的手数料が低いのですが、金融機関がおススメする商品は手数料が高いものが多いのです。
また、保険での投資もお考えのようでしたが、実は現在の保険商品は投資には向いていません。加入されるときは自分とご主人を守るため、最低限の保険にとどめてください。
●元気なうちは働き人生を楽しむ
最後に、60歳とはいえ、まだまだ元気に働ける年齢です。
フルタイムでなく、週に数回という働き方もあります。これまでのスキルと経験を活かし、楽しんで働くことは、健康で長生きすることにもつながります。
これからも存分に人生を楽しみましょう。
ファイナンシャルプランナー中村芳子さんのアドバイス
●退職金の活用はは、今後の収入、支出、働き方、暮らし方など総合的に判断
tomotomoさん、こんにちは、ファイナンシャルプアンナーの中村芳子です。
小野FP、山田FPが解説されているとおり、夫の退職金で妻の住宅ローンを返済すると、贈与になり、贈与税が発生します。
しかし、拝見すると、彼にも住宅ローンの残高があるので、こちらの返済にあてることは十分考えられます。
彼のローンを完済すると、その分の住宅ローンの返済が減るので、退職後に彼の収入が減っても、その影響を少なく、あるいはゼロにすることができます。この方法を検討してみてください。
退職金の運用は、住宅ローンの返済にあてるか、貯金するか、運用するか、さまざまな方法が考えられます。どれがよいかは、これからの収入、支出、働き方、暮らし方を考えて、総合的に判断したいところです。また、退職金というまとまったお金を受け取ると、1%の金利差が大きな金額の差になります。よい機会なので、有料相談をお勧めします。
提供:FP Cafe
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FP Cafe エフピーカフェ
あなたの思いに共感し、理想とする人生を実現するまで共に歩んでくれる「伴走者」が見つかるサービスです。数十名の女性ファイナンシャルプランナーが在籍しています。
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小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。
山田 香織 中小企業診断士、 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
FP歴10年。会計事務所で11年間、経営・税務相談業務を経験した後、FP事務所を開業。
個人から中小企業者まで経営に関する相談実績がある。現在は、会計・税務の経験を活かして、家計・経営相談を受ける。執筆活動も積極的に行う。
中村 芳子 (有)アルファアンドアソシエイツ代表
日本の女性ファイナンシャルプランナーの第1号。お金の著書20冊以上。むずかしいお金のことをやさしく解説するのが得意。辛口だが優しいアドバイスに定評がある。現在は、女性とカップル、外国人のお金の相談に力を入れている。証券会社、銀行などのアドバイザーもつとめる。著書は「いま、働く女子がやっておくべきお金のこと」(青春出版社)「結婚したら、やっておくべきお金のこと」「20代のいま、やっておくべきお金のこと」(ダイヤモンド社)、「いま、働く女子がやっておくべきお金のこと」(青春出版社)など多数。FP Cafe登録パートナー
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