22/12/15
管理職は残業代がもらえない?もらえる残業代もあるのは本当か
この数年、働き方改革によって長時間労働の是正が進み、残業時間の上限を超えて残業させると会社側が罰せられるようになりました。こうした取り組みとは逆に、一般に、課長職以上には残業手当を支払わなくてもいいとされています。昇進して管理職になったばかりに責任だけが重く、手当が少ないとぼやく声が聞こえてきそうですね。
今回は、管理職と労働時間に焦点を当てて解説していきます。
管理職になると残業代が出ないわけ
労働者はさまざまな法律によって保護を受けています。そのなかでも、劣悪な労働条件にならないよう歯止めをかけるための法律が「労働基準法」です。働くときには、労働者と会社の間で労働契約を結びます。しかし、雇われている労働者は発言力が弱いため、自由に契約を結んでいいことにすると、低賃金・長時間の労働を強いられるといった、不利な条件になる可能性があります。労働基準法は、そうしたことから労働者を保護するために作られた法律です。
労働基準法は、労働者のための法律とはいえ、すべての労働者に当てはまるわけではありません。労働時間においては、事業の種類や職責による適用除外が定められています。
一般に管理職は、労働基準法では「監督もしくは管理の地位にある者」とされ、労働基準法上の労働時間、休憩、休日の規定が適用されないため、通常は時間外手当(残業代)が出ません。残業代の代わりに管理職手当が支給されます。
どんな場合に管理監督者と扱われるのか
管理監督者といえるかどうかは、形式的な役職の名称で決まるわけではありません。つまり、課長や店長だから管理監督者と扱われるわけではないということです。管理監督者というためには、実際の職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇がどうであるかという点から総合的に判断されます。たとえば課長職だから残業代を支払わないと会社が決めたとしても、労働基準法上の管理監督者に該当しなければ、残業代を支払わなければなりません。
過去には、店長という立場が管理監督者か否かが争われた裁判(日本マクドナルド事件・東京地裁2008年1月28日)があり、店長が管理監督者に当たらないという判断した裁判例があります。これは十分な権限や相当の待遇等が与えられないのに、管理職として扱われているのはおかしいという内容でした。「店長」や「課長」などの役職であっても、権限がないまま役職名だけ与えられた「名ばかり管理職」を管理監督者として扱うのは、労働基準法違反になります。
名ばかり管理職の判断基準には、
・店舗での採用や解雇、人事考課などの権限がない
・自己の労働時間に関する裁量がない
・基本給、役職手当が充分に優遇されていない
などがあります。この基準に1つでも該当すると、裁判所は管理監督者として認めないケースがあるのです。
管理職であっても残業代が不要というわけではない
役職手当があるからといっても、管理監督者にすべての残業代を支払わなくてもよいわけではありません。例外規定は、労働時間、休憩、休日の規定だけであり、深夜業や年次有給休暇に関する規定は適用されますので注意が必要です。夜10時から朝5時までの深夜労働については、管理監督者に対しても割増賃金の支払いが必要です。深夜労働は、通常の賃金の25%増しの割増賃金になります。
また、強制的に有給休暇を取得させる制度が設けられ、年間10日以上年次有給休暇が付与される者は、最低5日は年次有給休暇を消化しなければなりません。対象は、年次有給休暇が10日付与される者なので、部長や課長などの管理職でも該当します。
働き方改革と労働時間のルール
働き方改革法は、労働時間の短縮や労働条件の改善、多様な働き方の実現を目的としてします。労働時間は、三六協定(時間外労働や休日労働の労使協定)を締結しているなど例外的な事由がなければ、週40時間、1日8時間が法定労働時間です。
また、働き方改革関連法が成立したことによって、時間外労働は年720時間、月100時間未満までに。これを超える残業は禁止されました。
管理職だから残業時間の上限がないといっても、できるだけ残業をせずに生産性を上げ、時代の変化に合わせて対応していく必要がありますね。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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