24/01/22
東京23区の私立中進学率ランキング「2人に1人が私立中」は本当?
少子化により子どもの数が減っているなかで、私立中学校への進学者が増えていることをご存じでしょうか。文部科学省が2023年12月に発表した「令和5年度学校基本統計」によると、中学生全体の人数は前年より27,000名以上減ったにもかかわらず、私立中の生徒は約1,280名増えています。
また首都圏模試センターの発表によると、2023年3月の首都圏私立・国立中学校の受験者数は52,600名でした。前年より1,500名増えており、102.9%の増加となっています。
首都圏内で私立中への進学者が多いのは東京23区ですが、区によって割合に差があることはご存知でしょうか。多い区では、なんと約半数が私立中に進学するそうです。今回は、東京23区の私立中進学率について紹介します。お子さんの中学受験を検討している方は、参考にしてください。
私立中受験者が増えた理由とは
首都圏模試センターの調査によると、私立・国立中学校の受験者数は2014年から9年続けて増加しており、2023年は過去最多となっています。これまで、リーマン・ショック後や東日本大震災後には私立中受験者が減少しましたが、コロナ禍では減少せずに右肩上がりの状態です。
コロナ禍でも受験者数が増加した理由のひとつとして、私立中のオンライン対応への迅速さや充実度があげられます。探求学習やグループ学習もオンラインで対応可能だった点が、公立中との差別化につながったようです。
また私立中は、中高6年の一貫教育である場合が少なくありません。独自のカリキュラムを組めるため、最初の5年で中高6年分の学習を行い、高校3年時には大学受験に集中する学校もあります。さらに大学付属の中学校ならば、エスカレーター式に内部進学できる可能性がある点も大きな魅力でしょう。
東京都内23区の私立中学校進学率ランキング
東京都教育委員会発行の令和5年度 公立学校統計調査報告書をもとに、2022年度 東京23区私立中学校進学率ランキングを作成しました。
<2022年度 東京23区私立中学校進学率>
東京都教育委員会令和5年度 公立学校統計調査報告書をもとに筆者作成
ランキング上位の区を紹介します。
●第1位:文京区
東京23区内で、私立中進学率がもっとも高いのは文京区です。およそ2人に1人にあたる49.50%が私立中に進学します。国立中も合わせると51%を超えるため、過半数が中学受験を経験する計算になります。
文京区には、日本の学校教育発祥の地である湯島聖堂や、東京大学本郷キャンパスがあります。教育熱が高いのは、土地柄かもしれません。
文京区には名門女子校として有名な桜陰中や、男子校の独協中があります。さらに筑波大付属中や、お茶の水女子大付属中など、有名な国立中も文京区にあります。
●第2位:中央区
中央区の私立中進学率は43.14%です。割合としては、5人のうち2人以上が私立中に進学している計算になります。
中央区にある私立中は、中高一貫校の開智日本橋学園です。
また中央区には、名門小学校の泰明小と久松小があります。両校とも難関私立中合格者を輩出しています。銀座5丁目にある泰明小は、アルマーニの制服でも話題になりました。
●第3位:港区
港区の私立中進学率は42.47%です。港区には、人気の高い私立中が集まっています。
慶応義塾中等部、麻布中、東洋英和女学院中などは、多くの人が知る有名校でしょう。また広尾学園中や芝中学などもあります。
港区には東京三大名門小学校のうち、白金小と青南小があります。どちらも進学への意識が高い小学校ですし、港区自体、教育熟度が高い地域であると言えそうです。
●第4位:目黒区
目黒区の私立中進学率は39.43%です。目黒区には、私立中高一貫校の八雲学園中や目黒日本大学中があります。
さらに、都立の名門校と呼ばれる桜修館中等教育学校も目黒区にあります。
自由が丘駅周辺に受験対策塾が多いことからも、目黒区は中学受験が盛んな地域だと言えるでしょう。
●第5位:千代田区
千代田区の私立中進学率は37.50%です。千代田区といえば、名門女子中を思い浮かべる方が多いでしょう。
私立女子御三家のうち、女子学院中と雙葉中は千代田区にあります。さらに白百合学園中や共立女子中、大妻中などの有名校も千代田区にあります。
千代田区は、女子中学校の受験が盛んな地域だと言えるでしょう。
●第6位:渋谷区
渋谷区の私立中進学率は36.53%です。渋谷区には、渋谷教育学園渋谷中や青山学院中等部などの有名な中学校があります。
渋谷教育学園は、東京大学や京都大学など国内トップ大学への合格者を輩出しています。
青山学院は大学への内部進学も可能とあって、昔から人気の高い学校です。
さらに渋谷区には、東京女学館中や実践女子学園中などの有名女子中もあります。
私立中進学率と親の年収には関係がある?23区年収ランキングを調査
東京23区の私立中進学率を紹介しました。東京23区内でも、私立中への進学率が高い地域と低い地域では差があります。
区によって私立中への進学率に差がある理由は、保護者の年収に関係するかもしれません。私立中に進学すると、初年度の学費が100万円を超えると言われています。入学金や授業料のほかに寄付金や制服代も合わせると、さらに高額になります。中学受験までに通う塾の費用も高額なため、裕福な家庭のほうが有利になるでしょう。
そこで、総務省のデータをもとに、東京23区の平均年収ランキングを作成しました。上で紹介した私立中進学率ランキングの順位も一緒に並べて紹介します。
<東京23区平均年収ランキング>
総務省「課税標準額段階別令和4年度分所得割額などに関する調」をもとに筆者作成
課税対象所得÷所得割の納税義務者数 にて算出
結果を見ると世帯平均年収1位の港区では1,471万円、2位の千代田区では1,077万円となっています。
3位以下は渋谷区、中央区、目黒区、文京区の順になります。私立中進学率の順と完全に一致するわけではありませんが、私立中進学率1位から8位までの区が年収でも1位から8位であることから、やはり私立中進学率には保護者の年収が影響すると考えられます。
私立中への進学には教育資金の準備が必要
私立中に進学すると、授業料や入学金など多額の費用がかかります。しかし中学生の場合は、高校生と違い国からの支援制度がありません。
高校生には国による高等学校等就学支援金制度があり、私立高校生も授業料支援が受けられます(支給の有無や額は世帯収入による)。中学生の場合は、地方自治体独自の就学奨励金や授業料軽減補助金を利用する方法があります。しかし、私立中に通う生徒は対象外の自治体も少なくありません。
ちなみに東京都では、2023年度より私立中に在籍する都内在住生徒の授業料を助成しています。とはいえ年額10万円で、保護者の住民税納付額によっては対象外となります。
そのため私立中への進学を検討する場合は、教育資金の準備が欠かせません。2024年から始まった新NISAを活用するなどして、早い段階から教育資金を用意しましょう。
教育資金の準備に不安がある場合は、プロに相談するのもひとつの方法です。
私立中に進学するかも含めて、お子さんに適した進路選びと教育資金の準備に取り組みましょう。
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原田 文香 ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
公務員や会社員を経て、2021年よりライターとして活動。金融関連の記事執筆を担当した際に、豊かに生きるためには『正しいお金の知識が必要である』と強く実感する。正しいお金の知識を、世のなかに広く伝えたいと思い、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。多くの方が安心して豊かに生きられるように、生活に密着したお金の知識をわかりやすく伝えます。
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