22/04/13
つみたてNISAは利益が出ても損失が出ても暴落でも絶対やめてはいけない
つみたてNISAを利用すると、毎年40万円までの投資で得られた利益にかかる税金が最長20年間にわたって非課税にできます。にもかかわらず、短期間で売却してしまう方が多い結果となっています。確かに、つみたてNISAの投資信託はいつでも解約できますが、結論からいうと、それはとてももったいないことなのです。
今回は、つみたてNISAは相場の影響で売却せず、続けたほうがいい理由を解説します。
つみたてNISAは3年未満で売却している人が多い
投資信託は、実際どのくらいの期間で売却されているのでしょうか。QUICK資産運用研究所の調査によると、投資信託の保有期間は次のようになっています。
●投資信託の保有期間
「全ファンド」はすべての投資信託、「DC専用」は確定拠出年金の投資信託、そして「つみたてNISA対象」はつみたてNISAで購入できる投資信託の保有期間を示しています。
2020年末時点の全ファンドの保有期間は2.5年、つみたてNISA対象ファンドは2.1年。20年の非課税期間があるにもかかわらず、つみたてNISA対象ファンドはわずか2.1年という短期間で売られてしまっているのです。
2021年末時点のデータは本稿執筆時にはまだありませんが、おそらくさらに短くなっているでしょう。なぜなら、2021年はマーケットが絶好調だったからです。2021年はつみたてNISAを利用していたほぼすべての人が利益を出せていたはずです。そのため、「このあたりで利益を確定するか」と、売ってしまった人も多いのではないかと考えます。
「利益が出たから」とすぐ売るのはNG
しかし、つみたてNISAで多少利益が出たからといって、すぐに売るべきではありません。
つみたてNISAで投資する投資信託は、長期・積立・分散投資と相性が良い商品です。そしてつみたてNISAは、長期投資をすることで運用中に得られた利益が非課税になり、効率よくお金が増やせる制度です。長く続けることで、複利効果を味方につけることができます。
つみたてNISAの非課税期間は、投資した年から20年です。
・2018年に投資→2037年まで非課税
・2019年に投資→2038年まで非課税
・2020年に投資→2039年まで非課税
という具合に20年の非課税期間が得られ、
・2042年に投資→2061年まで非課税
になるまで続きます。また、20年の非課税期間が過ぎても売却しない資産は、課税口座に資産を移管して引き続き運用できます。しかも、移管した後に売却してもつみたてNISA期間に得られた利益は非課税のままですので、非課税期間が終わるからといって焦って売る必要もないのです。
しかし、たとえば2018年に投資した投資信託を2021年に売却したとすると、2022年から2037年まで、16年分の非課税期間が使えなくなってしまいます。
●途中売却は残りの非課税期間の放棄になる
(株)Money&You作成
この間運用を続けていたら、運用益非課税で効率よく、複利効果を生かしながらお金を増やせていたはずです。ですから、つみたてNISAの場合、基本的には売らずにそのまま保有しておくのがいいでしょう。
なお、教育資金・住宅購入資金・余暇資金・老後資金などの目的でつみたてNISAをスタートしたならば、使う時期がきたときに売却し、それらの資金に充てるのは問題ありません。
損失や暴落が来ても、売るのはNG
つみたてNISAの資産を売ろうと考える人が増えるのは、利益が出たときだけではありません。損失が大きくなったり、暴落が起こったりしたときにも、売ろうか悩む人がいます。しかし、こうしたときも売らずに積立を続けましょう。積立をやめるのも、積立金額を減らすのもNGです。なぜなら、淡々と積立を続けることで、ドルコスト平均法の効果が期待できるからです。
ドルコスト平均法は、定期的に一定額ずつ金融商品を購入する方法。こうすると、商品の価格(基準価額)が安いときにはたくさん買い、高いときには少ししか買わないため、平均購入単価を下げることができます。平均購入単価が下がると、値上がりしたときに利益が出やすくなります。
市場はときに暴落しますが、暴落相場から積立投資を続けても、十分利益が期待できます。
●リーマンショックから月1万円投資した場合の資産総額
(株)Money&You作成
図はリーマンショックが起こった2008年9月から2022年2月まで、米国の株価指標のひとつ、S&P500に毎月1万円積み立てた場合の積立元本と資産総額を示したものです。2022年2月末時点で、積立元本は162万円なのに対して、資産総額は479万円と、約3倍に増えています。運用益は317万円です。
途中、2020年にはコロナショックもあり、一時的には下落しましたが、すぐに回復している様子がわかります。それどころか、その後も積立投資を続けることで資産が大きく増やせています。積立投資においては、暴落は逆にチャンスともいえます。
また、金融庁のレポートによると、国内外の株や債券へ、5年かけて積立で100万円投資した場合と20年かけて積立で100万円投資した場合の運用成果は次のようになっています。
●長期で見れば値動きは一定の範囲に収まる
(株)Money&You作成
5年間の積み立ての場合、うまくいけば173万円にお金が増える一方、元本割れして72万円まで減ってしまう可能性もあります。確かに利益が出ることもあるのですが、損失が出ることもあるのです。それに対し、20年間の積み立ての場合は、うまくいけば321万円に増え、期待外れでも185万円に増えています。元本割れが起きていないのです。
金融庁は期間が20年の場合は収益率が年2〜8%に収まると説明しています。あくまで過去のデータ上の話なので、今後も絶対にそうなるという保証はできません。しかしながら、長期間投資することで、値動きをある程度の範囲に収めることができ、損失の可能性を減らすことができることがわかります。
市場は、短期的には暴落があって大きく値下がりしても、やがて回復し、さらなる値上がりを見せるものです。ですから、ドルコスト平均法を生かして、淡々と長期投資に取り組みましょう。
つみたてNISAのことを「忘れる」くらいがベスト
つみたてNISAで利益や損失が出ると「売ってしまおうかな」と思うこともあるかもしれません。しかし、つみたてNISAの非課税期間は20年。途中ですぐに売ってしまうと、残りの非課税期間を生かせず、複利効果も十分に得られなくなってしまいます。利益が出ても損失が出ても暴落があっても、つみたてNISAは途中でやめず、淡々と続けましょう。
つみたてNISAのことを忘れて、ほったらかしで投資を続けるくらいがベストです。淡々と投資を続けることで、20年後・30年後には大きな資産を築けているでしょう。
この記事の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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