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22/03/24

資産運用・経済

資産をどう取り崩すのが正解か 資産運用・FIREの「出口戦略」

資産をどう取り崩すのが正解か 資産運用・FIREの「出口戦略」

資産運用には大きく分けて、投資して資産を築く「資産形成期」と、資産を取り崩して使う「資産取り崩し期」の2つの時期があります。資産形成のことは考えていても、資産取り崩しのことは考えていない方がほとんどでしょう。
でも、そもそもお金は使うために貯めるものですから、どう取り崩すかも大切です。

今回は、資産運用やFIRE(経済的自立と早期リタイア)で貯めた資産をどのように取り崩していくのが正解なのか、出口戦略を考えていきます。

資産運用・FIREの出口戦略1:取り崩し期までは取り崩しは「投資資産の4%以内」

資産運用の目的が老後資金や早期リタイアならば、資産形成期は仕事を辞めるまで。
資産形成期は、資産をなるべく減らさないようにすることが大切です。早期リタイアをして、資産運用の収入だけで生活する場合は投資資産の4%までに収めて、資産を減らさないようにします。これを「4%ルール」といいます。

4%ルールは、FIREをご存じの方にはおなじみのルールです。FIREでは、資産運用による運用益だけで生活費をまかなうことで、資産を減らさずに生活することを目指します。

4%ルールは、仮に資産の4%分を生活費として取り崩しても、4%分を資産運用で増やすことができれば、資産を減らさずに暮らせるという考え方です。いいかえれば、年間支出の25倍の資産を運用し、年4%の利益が得られれば、資産を減らすことなく生活できる、という計算になります。

FIREした方は、年金をもらい始めるまでは、この4%ルールを続け、資産を減らさないようにしましょう。

資産運用・FIREの出口戦略2:「DIE WITH ZERO」の考え方でお金を使い切る

『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著・ダイヤモンド社)という本をご存じでしょうか。同書で語られているのは、お金を使い切って死ぬこと(ゼロで死ぬこと)です。

たとえば、1000万円の資産があれば、その資産を使って1000万円分の経験を得ることができたはずです。しかし、もしもその1000万円を残して亡くなったとしたら、本来得られるはずだった1000万円分の経験を得られなかったと考えられます。
冒頭でも触れましたが、お金は使うために貯めるものです。資産を残して亡くなるのは、もったいないことだと思いませんか。

「亡くなっても、資産を子や孫に相続で残せる」そうおっしゃる方もいるかもしれません。しかし、子や孫にとってみれば、相続でお金を残されるよりも、生前贈与してもらったほうが嬉しいでしょう。なぜなら、若いときのほうがお金の価値が高いからです。

●若いうちのほうが経験を楽しめる

(株)Money&You作成

グラフの青の点線は資産、赤の実線は健康状態がいい人の活動能力(経験を楽しむ能力)を表します。若いうちは資産こそありませんが、活動能力は高いものです。一方で、年齢を重ねると徐々に資産は増えていくものの、活動能力は少しずつ低下していきます。中には、健康状態が悪くなってしまい、早くに活動能力が低下してしまう方もいるのです。
つまり、自分でお金を使うにしても若いうちの時の方が、お金を使う価値が高いということです。

もらう側の立場の話に戻りますが、高齢になり、活動能力が低下してから親から資産を相続しても、そのお金を有益なことに使い切ることはできないでしょう。それに、何かを経験できたとしても、その経験を後に生かす時間は、それほど長くはありません。

しかし、まだ活動能力が高いうちに親から生前贈与を受け、資産を得ることができれば、その資産を使ってさまざまな経験を積んだり、自己投資したりできます。しかも、若いうちにそうした経験を積むことができれば、後に生かす時間もその分長く取ることができます。親としても、生前贈与することで子や孫の喜ぶ姿・成長する姿が見られて嬉しいかもしれません。

さて、自分のお金をどう使うかという話ですが、資産をやみくもに使えばいいというものではありません。後悔しないようなお金の使い方を考えるにあたり、利用したいのが「タイムバケット」というツールです。

ごく簡単にいうと、「死ぬまでにやりたいこと」のリストを年代別に振り分けたものです。タイムバケットを作成することで、残りの人生でいつどんなことをしたいのかを明確にできます。

●タイムバケットのイメージ

(株)Money&You作成

なお、タイムバケット作成の際には健康・お金・時間の面にも注意しましょう。
同じことをするにしても、20代と50代ではできることが変わりますし、経験に際してかかる費用、かけられる金額も変わります。また、将来時間があるときにやろうということでも、むしろ若いときにやったほうがいいこともあるかもしれません。こうしたことを踏まえてタイムバケットを作成し、「DIE WITH ZERO」を実践しましょう。

PayPay証券

資産運用・FIREの出口戦略3:コアサテライト戦略のサテライト資産から取り崩す

コアサテライト戦略は、お金を減らさずに増やす運用の方法です。総資産の7割〜9割を堅実に増やす「コア資産」、残りの1割〜3割を高いリターンを目指す「サテライト資産」に分けて運用を行います。
コア資産には、現預金やインデックス型・バランス型の投資信託、ETF(上場投資信託)、不動産投資、金投資、積立FX、米国債などがあげられます。それに対してサテライト資産には、日本株、米国株、アクティブ型の投資信託、FX、仮想通貨(暗号資産)などがあります。

コア資産とサテライト資産、先に取り崩すのはサテライト資産からです。なぜなら、コア資産に比べてサテライト資産は値動きが大きいからです。サテライト資産は、大きく増える可能性がある一方で、大きく値下がりする可能性もあります。取り崩し期に入っているにもかかわらず、サテライト資産を持ったままでいると、値下がりしているにもかかわらず売らなくてはならない…といった事態になりかねません。

ですから、サテライト資産を持っているのであれば、できるだけ早いタイミングで売却することをおすすめします。

資産運用・FIREの出口戦略4:運用を続けながら取り崩す「定額取り崩し」「定率取り崩し」

残るコア資産も、いずれは取り崩していくのですが、いきなり全額売ることはおすすめしません。資産を少しずつ取り崩しながら運用を続けることで、資産が増やせますし、資産寿命を伸ばすことにもつながります。

●資産取り崩しのシミュレーション

(株)Money&You作成

表の縦軸は取り崩す年数(何年で取り崩すか)、横軸は運用で得られる年利を表しています。たとえば、3000万円を25年間にわたって年利4%で運用しながら取り崩した場合、受け取れる金額は3000万円×0.06401=192万300円となります。月額16万円ほどです。

もしも、運用せずに毎月16万円ずつ取り崩したら、3000万円÷16万円=187.5か月ですから、15年半ほどで資産がゼロになる計算。運用しながら取り崩すことで資産寿命が長持ちする、というわけです。

資産の取り崩しの方法には、大きく分けて定額取り崩しと定率取り崩しがあります。定額取り崩しは、「毎月〇円ずつ」と、資産を毎月一定の金額ずつ取り崩す方法。一方の定率取り崩しは、「毎月資産の○%ずつ」と、資産を毎月一定の比率で取り崩して受け取る方法です。

定額取り崩しのほうが受け取る側はわかりやすいのですが、定率取り崩しよりも資産の減りが早いのが難点です。それに対し、定率取り崩しは定額取り崩しより資産が長持ちするのですが、年を追うごとに受け取れる金額が減ってしまいます。どちらも一長一短です。

そこで提案したいのが、「定率+定額」の合わせ技。資産の多い前半は定率取り崩しでお金を受け取り、資産が少なくなってきたら、今度は定額取り崩しを利用します。

たとえば、2000万円の資産を取り崩す際に、資産が1000万円を切るまでは年6%の定率取り崩しを実践し、資産が1000万円を切ったタイミングで年60万円の定額取り崩しに切り替えたとします。この間、運用によって毎年3%増やせたとすると、資産の減り具合は次のグラフのとおりです。

●定率+定額の合わせ技

(株)Money&You作成

定率取り崩しでは、毎年120万円〜60万円程度を取り崩します。年によって金額は異なりますが、毎年だんだん減っていきます。このまま定率取り崩しを続けると、受け取れる金額が年50万円、40万円…と下がってしまうでしょう。そこで、資産が1000万円を切ったら60万円の定額取り崩しにします。そうすれば、30年経過時点でも約690万円の資産が残り、まだまだ年60万円を受け取れる計算です。

金融機関によっては、定額取り崩し・定率取り崩しを自動でしてくれるサービスもあります。たとえば楽天証券の「定期売却サービス」では、楽天証券内で保有している投資信託を自動で売却。現金化して売却代金を受け取れます。毎月1000円以上1円単位で定額取り崩しを行う「金額指定」や、毎月0.1%以上0.1%単位で定率取り崩しを行う「定率指定」などが選べます。

一度設定しておけば、あとは自動的に取り崩してくれますので、手間を省きたい方にも向いています。

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「お金を使う戦略」を立てよう

資産運用の目的は、いくらお金を増やすかではなく、増やしたお金を使って、よりよい人生を送ることにあります。お金は使うためのもの、自分のために貯めたものですから、出口戦略=お金を使う戦略を立てて、「DIE WITH ZERO」を実践しましょう。

今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。

頼藤 太希 マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki

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