22/03/19
子持ちでサイドFIREを実現する方法
FIRE(経済的自立と早期リタイア)では、支出を減らして資産運用を行い、そこから得られる収入で生活することで、早期リタイアを目指します。
しかし、子どもができたら教育費がかかるため、FIREは厳しいと考えられがちです。そんななかでも、子持ちでサイドFIREを実現するにはどうしたらいいのか一緒に考えていきましょう。
日本でおすすめのFIREのスタイルは「サイドFIRE」
FIREには大きく分けて2種類のスタイルに分かれます。
・完全に仕事をやめ、資産運用の収入だけで生活する「フルFIRE」
・勤労収入+資産運用の収入で生活する「サイドFIRE」
フルFIREは「早期リタイア」、サイドFIREは「セミリタイア」を目指すといってもいいでしょう。
FIREというと、フルFIREを想像する人が多いでしょう。しかし、フルFIREの達成は困難です。フルFIRE達成のためには、激しい節約を行い、貯蓄したお金を全額投資する必要があります。それに、フルFIREが実現したとしても、いつまでも安定した利率で運用できるとは限りません。さらに、会社を早期退職すると厚生年金に加入できないため、老後の年金が減ります。その分まで資産運用に頼る必要があるのです。
その点、サイドFIREであれば、資産運用で収入を得ながらも働いて、収入を得ながら生活します。勤労収入は現役時代ほど必要ないため、好きな仕事や時短勤務を選ぶなど、労働面での自由度は高くなります。
ご飯を食べるために働く「ライスワーク」から脱却できるでしょう。サイドFIREは、人生のリスクを抑え、日々の充実感を得て楽しく生活できるFIREといえます。
FIRE資金と教育資金の両立が必要
子持ちでサイドFIREを目指す場合には、サイドFIREのための資金と教育資金の両立が必要になります。子どもの教育資金を節約してまでサイドFIRE資金を優先するのはおかしな話です。また、子どもが自立してからサイドFIRE資金を用意するのでは、もう「早期リタイア」ではなくなってしまいます。
ですから、子どもができたら、あらかじめ子どもの教育をどうするのか、次のようなことをパートナーと考えておきましょう。
①子どもにどんな教育を行うか
わかりやすいのは、公立に通わせるか私立に通わせるかです。後述しますが、それだけで大きく金額が変わります。子どもに習わせたい習い事なども検討します。
②住まいはどうするか
教育の環境も、地域によって大きく変わります。都市部の有名校に通うのか、あるいは地方でのびのび学ばせるか、考えてみましょう。どこに住むかでも費用はかわりますし、持ち家か賃貸かでも変わってきます。
③保育をどうするか
共働きの場合、子どもが小さいときに保育園などの施設に預けるか、それとも家で育児を行うかによっても、収入や支出が変わってきます。
④教育資金をどう貯めるか
教育費は毎月かかります。また、ピークは大学入学時です。その費用をどう用意するかについて、考えておく必要があります。
⑤サイドFIREをいつ実現するか
子どもができ、支出が増えることで、サイドFIREに必要な資産が貯まるまでの期間にも見直しが必要です。サイドFIREをいつ実現するのか、子どもが自立してからなのかなど、検討します。
「子持ちでサイドFIRE実現」に向けてどう働く?
子どもがいようといまいと、サイドFIREの実現のためには、基本的には支出を抑えつつ収入を増やし、お金を投資に回していくことに変わりありません。子どもが生まれると、家族が1人増えるわけですから単純に生活費が増えます。そのうえ、教育費もかかることになります。共働きの夫婦の場合、出産前後は収入が減ります。そして子どもが育つと、徐々に教育費が増えていきます。支出の増加に対応するための収入の増加が求められるわけです。
また晩婚で、子どもを遅くに授かったという場合、教育費に加えて老後資金も用意する必要がでてきます。人生の後半で教育費と老後資金を同時に貯めるのは厳しいものがあります。この場合は、早期リタイアはいったんあきらめ、まずは経済的自立(FI)の確立に取り組みましょう。
共働きであれば、できる限り夫婦とも正社員として働くようにしましょう。正社員のほうが、社会保険の制度が充実しているからです。
●子どもができたときに支給されるお金
著書『はじめてのFIRE』より
たとえば子どもができたときに支給されるお金。出産育児一時金の42万円は妻が正社員でなく、国民健康保険や夫の扶養に入っていてももらえますが、出産手当金や育児休業給付金は本人が会社の健康保険や雇用保険といった社会保険に加入していないと受け取れません。また、社会保険に加入していれば、老後に受け取る厚生年金も増えます。社会保険に入ると保険料がかかりますが、その分年金が増えることも忘れてはいけません。
正社員はパートよりも時給単価が高いのもメリット。せっかくサイドFIREをめざすのに、勤労収入を増やすためにパートでたくさん働くようでは本末転倒です。育児で時間がとれなくなりそうなら、時短勤務やフレックス勤務などを選んで働く、夫が育児休暇をとってフォローするなどして、夫婦ともにできるだけ正社員で働き続けましょう。
なお、「子どもができたから退職して、数年後にパートで仕事復帰」というかたちは避けるべきです。給付金がもらえなくなるのはもちろんのこと、仕事に復帰するといってもブランクがあるので、正社員として復帰しようとしてもなかなか仕事が見つからない…という事態にもなりかねません。
子どもの教育費、どのくらいかかる?
子持ちでサイドFIREするには、FIRE資金を貯めつつ、教育資金も貯めなくてはなりません。
●子どもの教育費の目安
著書『はじめてのFIRE』より
幼稚園から高校までの学習費は、一般的な塾や習い事の費用も含んだ金額で、すべて公立ならば541万円、すべて私立なら1830万円。子どもが公立に通うか私立に通うかで結構違います。また、大学も4年間で300〜500万円程度の費用がかかってきます。
さらに、これらの費用とは別に、
・2歳〜3歳ごろ 早期教育の費用
・10歳〜12歳ごろ 中学受験の塾の費用
・15歳ごろ 高校受験の進学塾の費用
・18歳ごろ 大学進学後、ひとり暮らしする場合の費用
などがかかる場合があります。たとえば中学受験であれば、4年生〜6年生までの塾の費用は総額で300万円にもなります。
教育資金をどう用意する?
もっとも、これらの教育費を一度に用意する必要はありません。高校までは家計でやりくりしつつ、大学のお金は子どもが18歳になるまでに貯めておくのが現実的です。
●教育費と投資額の関係
著書『はじめてのFIRE』より
図は子どもが小学校から大学まで全て国公立に通った場合の教育費と投資額を示したものです。
小学校から高校までの教育費は家計からやりくりします。たとえばサイドFIRE資金のために毎月20万円ずつ投資に回していた場合、毎月の教育費分だけ投資額が減ることになってしまいます。毎月20万円投資している時点で、これ以上の節約はあまり現実的ではないはずです。ですから、収入を増やすか、あるいはサイドFIREを達成するまでの期間を延ばすかして対応することを考える必要があります。
また、大学入学までの300万円もサイドFIRE資金と別に貯めなくてはなりません。おすすめは、児童手当を使わずに貯めること。また、親(子からみれば、祖父母)からの贈与が受けられるなら活用することです。
児童手当は、子どものいる世帯が受け取れるお金。現行制度では3歳未満が月額1万5000円、中学校卒業まで月額1万円支給されます(第3子からは小学校修了まで月額1万5000円)。また、所得が一定以上の場合は所得制限がかかり、月額5000円になります(例:共働きで子ども1人の家族では、所得制限が660万円(収入額の目安は875万円))。
所得制限にかからない場合、子どもが1人の場合、毎月貯蓄に回すと中学卒業までに約200万円貯められます。これは手を付けずに、大学入学資金などにとっておきましょう。大学4年間で300~500万円ほどの教育費がかかりますが、これだけでその約半分は確保できます。
また、親の支援も受けられるならばぜひ活用しましょう。親族間でも、年間110万円超のお金をやりとりすると贈与税がかかります。しかし、教育・結婚・出産目的の贈与であれば、贈与税はかからず、そのまま受け取れます。
教育資金(学校の入学金・授業料・学習塾の費用など)を0歳〜29歳までの子どもや孫に贈与する場合には、1人につき1500万円まで非課税で贈与ができます。
また、結婚・出産・育児にかかわる資金についても、20歳(2022年4月より18歳)から49歳までの子どもや孫に贈与する場合には、1人につき1000万円まで非課税で贈与できます。もし贈与が受けられれば、大きな助けになることは間違いありません。
なお、「大学のお金は奨学金で」という方もいるかもしれません。しかし、サイドFIREを目指して資産が相応にあると、給付型の奨学金はまずもらえません。親の年収や資産の条件があるからです。利息をつけて返済する貸与型の奨学金ならばまだ借りられる可能性がありますが、子どもは「資産はあるのになんで自分が奨学金を借りなければいけないのか」と思われてしまう可能性があります。ですから、子どもの教育資金はやはり、親が用意してあげるべきでしょう。
まとめ
子持ちでサイドFIREを目指すには、サイドFIREのための資金と教育資金を一緒に貯める必要があることと、そのための考え方やするべきことを紹介してきました。
これで不足する金額は、貯蓄する、つみたてNISAやジュニアNISAといった非課税の制度を活用する、スキルアップ・転職などで年収をアップさせる、あるいは副業をするなど、サイドFIREの資産を貯めるのとは別の取り組みで用意していきましょう。
今回の記事の内容は動画でもご紹介しています。ぜひご覧ください。
【関連記事もチェック】
・「不動産投資だけでFIRE」は難しいが、FI(経済的自立)の安定度は上げられる
・「サイドFIRE」こそが日本で目指すべきFIRE 子どもがいる場合の目指し方は?
・日本人がFIREするためには、忘れてはいけない4つの問題点
・FIREで人気の米国株の配当金は税金が二重にかかる!税金を取り戻す方法は?
・誰でも経済的自由を手に入れられる「FIRE」の仕組み おすすめはバリスタFIREとサイドFIRE
頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
この記事が気に入ったら
いいね!しよう