22/03/18
「不動産投資だけでFIRE」は難しいが、FI(経済的自立)の安定度は上げられる
経済的自立をして早期リタイアする「FIRE」が日本のみならず世界中で話題です。FIREでは、資産運用の収入で生活費をまかなうことを目指します。
「不動産投資だけでFIRE」することは難しいのですが、不動産投資はFIREに大いに役立ちます。不動産投資成功のポイントと合わせて、紹介します。
FIREにはコア・サテライト戦略が欠かせない
FIREでは、資産運用による収入で生活費をまかなうことで早期退職を目指します。資産運用による不労所得が生活費よりも多くなれば、生活費を使っても資産を減らすことなく生活できる、というわけです。その実現のための投資先には株や投資信託、ETFなどがよく取り上げられますが、不動産投資も役立ちます。
しかし、だからといってリスクの高い投資ばかりしていてはお金が大きく減るかもしれませんし、預貯金だけにしていてはお金がほとんど増えません。
そこで活用したいのがコア・サテライト戦略です。
●コア・サテライト戦略のイメージ
著書『はじめてのFIRE』より
コア・サテライト戦略は、総資産の7割〜9割を堅実に増やす「守り」の資産(コア)、残りの1割〜3割を高いリターンを目指す「攻め」の資産(サテライト)に分けて運用する方法です。
コア資産には、現預金やインデックス型・バランス型の投資信託、ETF(上場投資信託、不動産投資などがあります。対するサテライト資産には、日本や米国の株式、アクティブ型の投資信託などがあります。
不動産投資をすると「FI」の安定度が上がる
不動産投資は、FIREのFI(経済的自立)を安定させるのに役立ちます。
FIREでは、市場が暴落したときにも不労所得で生活する必要があります。しかし、市場が暴落した場合には、資産運用で生活費がまかなえない可能性があります。
こんなときの対処法として、まずは「FIREの資産とは別の預貯金を取り崩す」ことが考えられます。しかしこれでは、どれだけ預貯金があるかで暴落を乗り切れるかが変わります。「勤労収入を一時的に増やす」こともできます。サイドFIRE(資産運用に加えて無理のない仕事をして勤労収入を得るFIREの形)であればこの方法は取りやすいですが、働く時間が増えます。
これらが難しい場合「FIREの資産を取り崩す」ことになります。しかし、FIRE資産を減らしてしまうと、その後の資産から得られる収入も減ることになります。
ここに不動産投資をしていれば、FIの安定度が上がります。
不動産投資で得られる家賃収入は、簡単には減りません。市場が暴落したからといって、入居者がすぐに引っ越すわけではないからです。家賃収入は、FIREの「FI」の安定度を上げるのに役立つ、というわけです。
信用力があるなら不動産投資を活用
それならば不動産投資を始めたい…といっても、不動産投資は誰でもできるものではありません。通常、不動産投資ではローンを組んで物件を購入して貸し出し、家賃収入で返済していきます。このローンを組む際に、ある程度の年収と信用が求められるからです。
ひとつの目安ですが、ローンを組むには年収500万円以上ないと有利な条件で借りにくくなっているのが現状です。年収400万円台でも不可能ではないのですが、「良い条件でローンを借りられない」「ローンを組む際に300万円程度の頭金が必要」といった問題が生じることもあります。
年収500万円以上であれば、不動産投資にも取り組みやすいでしょう。上場企業勤務、公務員…といった信用力のある方には特におすすめ。不動産投資のローンの判断は、本人の属性(年収・勤務歴・貯蓄額)と物件の価値(賃貸ニーズの高さ)によって決まります。
不動産投資のローンで借りられる額(与信枠)は一般に年収の5倍〜10倍と、自宅を買うときよりも多くなっています。家賃収入で返済できると見込まれているためです。そのため、与信枠いっぱいで借りてもあまり大きなリスクにはなりません。
不動産投資はスタートすれば家賃収入からローンを返していくため、毎月の手出しが少なく済みます。そのため、自己資金を投資信託や株式投資に振り向けやすいのがメリット。もし可能であれば、両者を併用するのがおすすめです。
一方、年収が500万円ないにもかかわらず、不動産投資をしたいからと300万円の頭金を貯めるまで投資しないとなると、300万円貯まるまでに相当な時間がかかってしまいますし、お金もなかなか増やせません。ですから、条件を満たさない場合は無理に不動産投資を活用する必要はないでしょう。
同じ資産運用でも、投資信託や株式投資であれば、始めるのに年収や信用の要件はなく、数千円程度からでもスタートできます。まずはそちらから取り組むことをおすすめします。
不動産投資がFIREに役立つのはローン返済後
ただ、不動産投資がFIREに役立つのは、ローン返済後です。
不動産投資では、得られた家賃収入をローンの支払いにあてて返済していきます。家賃とローン返済額の差額(キャッシュインフロー)はほとんどプラスになりません。ローンを返済し終わるのは30年〜35年後ですから、不動産投資だけでFIRE、特に早期リタイアを達成するのは難しいでしょう。
しかし、ローンの返済が終わったあとは、家賃収入がそのまま収入になります。すると、キャッシュフローがプラスになるため、安定した収入が手に入ります。
●老後の家賃収入のイメージ
著書『はじめてのFIRE』より
たとえば60歳前後で退職して勤労収入(緑のグラフ)が途絶えたあと、不動産投資のローンの支払いが終わっていれば、家賃収入がそのまま収入になりますので、勤労収入の減少を補うことができるでしょう。
また、不動産投資の家賃収入は、早期リタイアすると減ってしまう年金を補うのにも役立ちます。会社員・公務員の方が早期リタイアした場合、定年まで勤めたときに比べて厚生年金が減ってしまいます。しかし、不動産投資の家賃収入があれば、その分を補えるというわけです。仮に年金が国民年金だけ(月6万円)だったとしても、他に家賃収入月10万円、FIREの資産による運用益が月10万円以上あるとなれば、毎月30万円弱の収入が見込めます。
不動産投資を成功に導く条件
投資信託や株式投資は、最低投資金額がそれほど高くないので複数の銘柄を購入できますが、不動産投資で何十もの物件を購入するのは難しいでしょう。限られた件数で収益を得るには、物件選びや不動産業者選びが大切です。
物件選びの最大のポイントはエリア。長きにわたって賃貸需要が旺盛なエリアに投資することが大切です。人口が減っている日本において、人口流入が進むエリアといえば、やはり東京です。中でも人気が高いのは、女性が住めるエリア・学生や単身者が住みやすいエリア・社宅などに利用されやすいエリア。また、上場企業が集中しているエリアなども狙い目です。生活利便性が高く、幅広いニーズが見込めます。
●信頼のおける不動産業者を選ぶポイント
著書『はじめてのFIRE』より
エリア選びと同じく大切なのが、信頼のおける不動産業者を選ぶことです。物件を自分一人で探すのは限界がありますし、何より不動産投資は数十年と長期間かけて行う投資です。
その期間、安心して付き合える不動産業者を選びたいところです。
「優良な物件を扱っているか」「営業担当者は優秀か」「営業担当者と相性があうか」「長年不動産業を営んでいるか」などをチェック。困りごとが出てきたときになんでも聞くことができ、将来売るときの出口戦略まで相談できるようなパートナーを探しましょう。
まとめ
不動産投資だけでFIREは難しいものの、不動産投資がFIREの助けになることをご紹介しました。金融商品には完璧なものはありません。何事もバランスよくが大事です。
上手にコア・サテライト戦略を活用して、資産形成に取り組んでいきましょう。
今回の記事の内容は動画で紹介しています。ぜひご覧ください。
【関連記事もチェック】
・「サイドFIRE」こそが日本で目指すべきFIRE 子どもがいる場合の目指し方は?
・日本人がFIREするためには、忘れてはいけない4つの問題点
・FIREで人気の米国株の配当金は税金が二重にかかる!税金を取り戻す方法は?
・誰でも経済的自由を手に入れられる「FIRE」の仕組み おすすめはバリスタFIREとサイドFIRE
・日本でも「FIRE」は可能? どのくらいの資産を用意すればいいのか
頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
この記事が気に入ったら
いいね!しよう