16/05/21
老朽化マンションがタダで新築に生まれ変わる? 中古マンションは「敷地持ち分」で選ぶべし!
マンションを購入すると、部屋だけでなく、そのマンションが建っている敷地も部屋の広さと同じ割合で所有することになります。これを「敷地の持ち分割合」と言います。築年が浅い物件だとあまり気にしないで購入してしまいがちですが、築30年以上のマンション購入ならばぜひ重要視してほしい点です。契約前にしっかりチェックしておけば、将来の建て替えの際にほとんどお金がかからず、ピッカピカの新築に暮らせるかもしれません!
20㎡の土地に200㎡の部屋をつくる?
例えば、Aさんが購入したマンションの敷地面積が1,000㎡で、建物の延べ床面積が5,000㎡、部屋の専有面積が100㎡だとします。そうすると、Aさんの敷地の持ち分割合は5000分の100で、実質的な敷地所有面積は、1,000㎡×5000分の100=20㎡となります。
竣工から年月が経ち、建物が老朽化し、修繕では補えず建て替えが必要となったら、マンションの所有者で構成される管理組合は、修繕積立金、またそれで足りない場合は銀行融資等を利用して建て替えを行うことになります。この時に敷地の持ち分割合が重要になるのです。敷地所有権を持つ人たち(地権者と言います)は、建て替え時にかかる費用を、修繕積立金でも銀行融資でもなく、この敷地の持ち分割合で賄うことができます。要はマンションの敷地を地権者全員で売り、その利益を工事費に充てるのです。「いやいや、敷地を売ってしまったら、建物が建てられないじゃないか」と思いますよね。そこにからくりがあります。
このからくりを前述のAさんの例で説明します。現在は1,000㎡の敷地に、5階建て延べ床面積5,000㎡のマンションが建っています。これを取り壊し、10階建て延べ床面積10,000㎡のマンションに建て替えると、延べ床面積は従前の倍になります。この増床分を新たに分譲販売して、そこから建物全体の工事費を捻出するという仕組みです。当初、Aさんの部屋は100㎡でした。物理的には無理ですが、20㎡の敷地上に100㎡の部屋が存在していたわけですから、建て替え後、200㎡の部屋をつくることも理論的には可能なのです。
法改正により建て替えが容易に
一昔前まで、マンションの建て替えは容易なことではありませんでした。それは法の壁があったからです。建物の高さ、容積率、建ぺい率の制約が当初の新築時より厳しくなり、建て替え増床が困難となるケースが多かったのです。しかし、昨今の法改正で状況は変わってきました。
国土交通省の推計によると、2012年末時点で国内マンションストック総数は約590万戸。そのうち旧耐震基準のマンションが約106万戸。すなわち、約6分の1のマンションが耐震強度に問題あり、ということになります。この事態に政府は、耐震強度不足のマンションの建て替え・再生を促進するため、2014年に「改正マンション建て替え円滑化法」を施行しました。
この法改正で大きく変わったのは、「敷地を含めた全体の売却」ができることと、「耐震強度不足のマンションには一定の容積率の緩和」が認められたことです。これにより、老朽化して耐震性に不安のあるマンションに活路が生まれました。マンションデベロッパーに敷地の権利を譲渡し、そこにタワーマンションを建ててもらい、地権者は敷地持ち分相当の部屋を譲り受けます(これを「等価交換」と言います)。そして地権者住戸以外の部屋を新たな購入者を募り分譲販売してもらいます。ここで建て替え工事費に充てる資金を調達するのです。
これまでの建て替え成功事例
近年、「改正マンション建て替え円滑化法」を活用して建て替えを行った例をいくつかご紹介します。
<成功例①>昭和一ケタ築・旧同潤会アパートの場合
※データ出典:マンション再生協議会ホームページ
初回竣工から建て替え竣工まで86年。建て替え協議開始から竣工まで6年。延べ床面積は約4倍になりました。
<成功例②>世帯数が少ない小規模・公社マンションの場合
※データ出典:マンション再生協議会ホームページ
初回竣工から建て替え竣工まで52年。建て替え協議開始から竣工まで6年。延べ床面積は約2.4倍になりました。
<成功例③>敷地が隣接する2つのマンションの共同事業の場合
※データ出典:マンション再生協議会ホームページ
初回竣工から建て替え竣工まで39年。建て替え協議開始から竣工まで5年。延べ床面積は約2.7倍になりました。
広い駐車場や庭園があるマンションが狙い目
建て替えを見込んで築年の古いマンションを購入するときは、必ずその部屋の敷地持ち分面積を計算してみてください。平均的に20㎡前後の物件が多いのですが、40㎡以上あれば掘り出し物の可能性があります。広い平置き駐車場や庭園がある物件を探すのが一番簡単な方法です。
ただし、めでたく建て替えとなるまでには長い道のりを覚悟しなければなりません。成功事例を見ていただくとわかるように、建て替え協議が始まってから竣工までは数年かかるのが実情です。長引く原因はさまざま。建て替え時期を迎えるマンションには新築当時から暮らすお年寄りも少なくなく、工事中の引っ越し、仮住まいが面倒だと言います。また当初描いていた理想の計画が法規制などで縮小されて士気が下がったり、デベロッパーやコンサルティング会社と意見が合わず決裂したりもします。
予測し得ない理由で頓挫、または振り出しに戻るケースも数例あるなか、やはり成功の秘訣は日ごろからマンションの方々が仲良くすること。些細なことですが、比較的早期に建て替えを実施できた管理組合はいずれも「組合員の団結」を成功理由に挙げています。向こう三軒両隣に限らず、コミュニティ全体が円満であることが明るい未来を拓きます。
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入江 敦子 ブリングエステート代表
住宅情報誌「suumo」の元レポーター。取材で訪れた不動産物件は数知れず。得意分野は区分所有不動産(マンション)。長年の執筆活動で培った知識を活かし、2014年よりブリングエステートを設立し、不動産業者として独立。ライターとしても活躍中。一児の母。7歳から始める不動産投資企画「子ども大家さん」を立ち上げ、母娘で物件模索中。宅地建物取引士、2級FP技能士。
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