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24/10/24

家計・ライフ

老後破綻を招く「たった1つの悪習慣」

老後破綻につながる「たった1つの悪習慣」

現役で働いている人でも、老後の暮らしに不安を感じている人は少なくありません。特に経済的な心配は切実です。人によっては50代から年収が減りはじめ、60歳以降の再雇用・再就職では手取りが大きく減るとなれば、お金が足りなくなってしまいます。

老後の暮らしに不安を感じる主な原因は、支出がいくらになるか予想ができないからではないでしょうか。
たとえば「リタイアしてからの支出は年間250万円、それが10年間」と予想できれば、2,500万円の貯蓄があれば安心、公的年金をあてにしなくても大丈夫です。しかし実際には、リタイアから亡くなるまでの期間はわかりませんし、病気やケガで医療費や介護費がかかるかもしれません。ただでさえ物価が上がっている昨今、これからもインフレが進んだとすれば、年間250万円ではやがて足りなくなってしまうでしょう。

そう考えると、いくら貯蓄があっても不安はぬぐえないでしょう。
貯蓄は使えば減ってしまい、底をつけば老後破綻は避けられません。では、どのようにすれば老後破綻を避けられるのでしょうか。

老後破綻の原因は収支のアンバランス

老後破綻の原因は、実はとてもシンプル。老後破綻するたった一つの悪習慣は、「収入よりも支出が多い」、これにつきます。

収入<支出 ・・・ 老後破綻の危険
収入=支出 ・・・ バランスがとれている
収入>支出 ・・・ ゆとりの老後

老後破綻の危機は、収入よりも支出が多い状態が続いてしまうために訪れます。
では、具体的にどのようなことが原因なのでしょうか。

●仕事をやめた

当たり前のことですが、仕事をやめたら収入は減ります。生活を考えたら簡単にはやめられないところですが、子どもの成長などをきっかけに人生観が変わるかもしれません。
自分の時間を大切にしたい、ずっとやりたいことがあったなど、定年退職前に仕事をやめる人もいます。特に、会社が従業員を減らすために、退職金を上乗せして退職者を募るケースでは、まさに渡りに船です。

たしかに、お金より大事なものはありますが、それでも生活のためにはお金は必要です。
人生設計には、老後破綻をしないマネープランも一緒に立てておきましょう。
定年退職して、その後就職しない場合も同様です。

●ハイリスク投資で失敗し

仕事をやめても、まとまった金額の退職金が入れば当面の生活には不自由しません。
しかし、そのお金を貯蓄をしているだけでは、月日とともになくなってしまいます。
そこで投資によって増やしながら使う方法がおススメですが、ハイリスク投資に手を出してしまうのはとても危険です。

レバレッジを大きくきかせたFXや、先物取引などは、大きなリターンを期待できる反面、損失も大きくなります。それだけに、投資のプロでも難しいと言われています。
大切な老後資金ですからハイリスクの投資で欲張るのは禁物です。
着実に増やせる、ローリスクからミドルリスクの商品を複数選ぶ、分散投資が適しています。

●住宅ローンが残っている

老後になって収入が減っても、住宅ローンが残っていると、支出を減らすことが難しくなってしまいます。住宅ローンを組む時、返済期間を長くすれば毎月の返済金額を抑えられるので、返済を70歳まで、あるいはそれ以上の年齢に設定した人もいるかもしれません。

しかし、その年齢になってからの返済の負担は予想以上に重くなっていないでしょうか。
負担が大きいようなら、住宅ローンの借り換えや、住み替えなど、さまざまな選択肢が考えられます。前向きに考えられる時期に検討するのは、その後の人生にもよい影響が出ると思います。

●生活費が現役時代のまま

一般的に、50代半ばは給与金額がピークです。管理職についている人も多いので、生活にゆとりを感じられることも多いでしょう。
ただ、その後は役職定年があり、60代で受け取る給与はかなり少なくなってしまいます。
ですから、50代の高収入時に生活レベルをあまり上げてしまうと、その後の生活が苦しくなることに注意が必要です。

旅行などのイベントで、少々財布のヒモがゆるくなる程度であればそれほど心配することはないかもしれません。
しかし、日常的に食べるものや、着るもののグレードを上げると、その後になって下げるのはなかなか大変なものです。
50代、収入が増えても贅沢はほどほどに、60代以降を見越して生活費のダウンサイジングを意識しておきたいものです。

●遺産相続のあてがはずれた

親世代が、土地建物を所有していると、いずれ相続財産として手に入る、と考える人もいるでしょう。
しかし、遺産をあてにして、老後資金準備をなおざりにしているのは得策ではありません。

土地建物の評価額は変わるものですし、いざ相続となった時に思いがけない遺言書が出てくるかもしれません。
実際、相続をめぐって争いごとに発展する親族は、決して珍しいことではありません。
親族間の争いで疲弊し、相続財産が予想より少なくて、老後のライフプランが一気に崩壊・・・といった事態を避けるためにも、マネープランは人頼みではなく自力を前提にして立てておくべきでしょう。

老後の収支のバランスを見直そう

老後破綻の原因はさまざまですが、上記のような問題を放置しておくと、老後破綻は時間の問題。
すぐにでも収支のバランスを見直す必要があります。
老後の収支を考える時、まずは収入から見込みを立てていきましょう。
老後のメインの収入源は、公的年金です。

国民年金は、満額で月額6万8000円、厚生年金は夫婦で月額23万483円が標準額です。

●2024年度(令和6年度)からの年金額

・国民年金(老齢基礎年金(満額)) 6万8000円
・厚生年金※(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)  23万483円
※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

日本年金機構ホームページより抜粋

自分が実際にもらえる年金額は、50歳以降に届く「ねんきん定期便」をチェック。ねんきん定期便には、今の加入条件が60歳まで続いたときに65歳からもらえると予想される年金額が載っているので確認しましょう。

もし、確実にもらえる公的年金だけで暮らすことができれば安心できます。
しかし、この金額では不足を感じる人もいるでしょう。

老後の収入は増やせる

そこで、貯蓄をはじめとした老後資金の備えが必要になります。貯蓄は元本保証のうえ、すぐに現金として使えることがメリットですが、使えばなくなってしまいます。そのため、貯蓄以外の方法も考えておきましょう。

●投資をする

投資といっても幅広い金融商品があります。老後資金のためであれば、FXや先物取引のようなハイリスク商品ではなく、ローリスクからミドルリスクの投資信託を複数選んで投資すると、リスクをおさえた運用ができます。

その際、2024年から新しい制度にバージョンアップした新NISA(ニーサ、少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)といったおトクな制度の利用がオススメです。

新NISAは投資の運用益が非課税になる制度です。2024年から制度が新しくなったので、1年間に投資できる金額の投資枠が最大360万円に大きくなりました。また、非課税で投資できる期間が無期限に。

新NISAで購入できる投資信託などの金融商品は、手数料が安く抑えられているなど、投資初心者でも比較的安心して運用できる金融商品が揃っています。
投資に馴染みがなければ、まずは新NISAから始める投資がおススメです。

また、iDeCoは自分で出した掛金を運用して、その成果を60歳以降に受け取る制度。新NISAと同じく運用益が非課税にできるうえ、掛金が全額所得控除できるので所得税や住民税を減らすことができます。強力な節税効果で老後資金を用意するのに向いています。

●仕事をする

老後とはいえ、60代、70代はまだまだ元気に働けるような、体力や気力が充実している人も多くいます。会社員の場合、いったん定年退職をしても再雇用制度を利用して働き続けることもできます。それまでの部下が上司になったり、責任者としての権限が変わったりといった変化はありますが、慣れた職場で働けるメリットもあります。

さらに、厚生年金に加入すれば、年金の受取り額を増やすことにもつながります。
年収200万円で1年間働けば、将来の年金は、年額で約1.1万円増やすことができます。60歳から10年間働いたら、年金は年あたり約11万円増えます。

あるいは、経験やスキルを活かして起業をする道もあります。シニア世代の起業であれば、プライベートの時間も大切にした、やりがい重視の働き方もいいでしょう。

●有償ボランティアをする

時間を自由に使いたい、仕事にしばられるのは避けたい、というなら有償ボランティアも選択肢のひとつです。収入の金額はさほど高くはなくても、活動時間は自由度が大きくできますし、人脈も広がります。

NPO法人(特定非営利活動法人)に所属してボランティアをするのであれば、まずは法人としてしっかりと事業計画を立て、活動しているかどうか確認しておきましょう。NPO法人の活動実績や会計などの情報は広く市民に公開されています。

NPO法人の情報は、ホームページだけではなく、総務省のポータルサイト「NPO法人ポータルサイト」でも検索できます。
ポータルサイトでは、エリアや活動分野からNPO法人を探すことができますし、複数のNPO法人を比較するにも便利です。

NPO法人は、行政では対応が難しいとされる分野においても、きめ細かい活動をして社会的課題に取り組みます。
たとえば、子育て支援、野生動物の保護 災害時の救援活動、地域ブランド作りなど、さまざまな活動分野があるので、興味のある団体を探してみてはいかがでしょうか。

暮らしを見直して支出を減らす

収入を増やすだけでなく、収入の範囲内で暮らせるよう、支出を見直すことも大切です。
何にいくらの支出をするのかは、それぞれの価値観によりますが、目安として平均的な金額も知っておくといいでしょう。

総務省の調べによれば以下の表のとおり、年金だけでは平均的な支出はまかなえない結果となっています。

●2023年高齢世帯の支出

総務省「家計調査報告(家計収支編)」2023年平均結果の概要より抜粋

なお、住居費が安くなっているのは、家賃を支払っていない人も含めた平均値だからです。
また、住宅ローンの返済費も含まれていません。老後も賃貸で暮らすことを考えているなら、家賃の分も見込まなくてはならないでしょう。住宅ローンをはじめとするローンも、もし65歳以降も返済が残るようならその分も加味して考える必要があります。

現役のときに、毎月30万円で暮らしていた人が、急に25万円や15万円にするのはなかなか難しいものです。そこで、50歳を過ぎたら、無理なく老後生活に移行していくためにも、暮らしをコンパクトにしていくことを意識しましょう。

たとえば食費の節約ポイントは、使い切ること。年齢を重ねると多くは食べられなくなりますから、自然と食費は減っていきます。食べきれる分だけ買うようにしていくと、適正体重の維持にもつながります。

光熱費は、今後エネルギー資源の動向によっては単価があがる可能性があります。おトクをうたっていても複雑な料金体系で把握しきれないプランより、省エネ家電に買換えるほうがわかりやすくていいでしょう。

被服費は、毎月の予算分をストックしておき、シーズンごとに長く着られるものを選ぶといいと思います。イベントがあればレンタル利用も一案。クリーニングの手間もなく便利です。

加入したままの生命保険があればぜひ見直しを。契約時の予定利率が今よりずっと高い「お宝保険」なら継続一択ですが、掛け捨て部分は家族の状況や医療の進歩に合わせて検討してもいいでしょう。

おトクな制度はもれなく利用

支出を押さえ、収入を補うものとしてしっかり活用したいのがおトクな制度です。
おトクな制度を利用するには、まずは情報収集。自治体のフリーペーパーや、スーパーのポスターなど、もれなくチェックするクセをつけておきましょう。

●リフォーム支援

住まいをリフォームする際、バリアフリー、耐震、省エネなどの基準をクリアすると、税金の軽減措置や補助金が受け取れます。
国や自治体のほか、介護保険からの給付もあります。
「廊下に手すりなんてまだ早い」、という時期こそ、業者の比較やリフォーム方法のリサーチがしっかりできますので、早めの検討がおススメです。

●シニア割引

鉄道や飛行機などの交通機関、またスーパーやドラッグストアなどで、シニア向けに割引やポイントアップなどのサービスを行っています。
こうした情報は、たとえサービス業であってもなかなか積極的に教えてくれません。どんなに丁寧な言い方でも、「60歳以上限定のサービスで…」と言った相手が50代だったら、クレームになりかねませんよね。
情報は自分から取りに行きましょう。

●ふるさと納税

ふるさと納税は、自分で選んだ自治体に寄付をすると、その自治体から寄付のお礼として特産品などをもらうことができます(なかには返礼品がない寄付もあります)。
寄付した金額から2000円を引いた額の税金が軽減されるので、実質2000円の負担で、特産品のお肉や魚、お米などをもらうことができる制度です。

税金の軽減は、所得などによって上限がありますので、ふるさと納税のポータルサイトなで上限額をシミュレーションしてから利用しましょう。

税金の軽減には、基本的に確定申告が必要ですが、1年間のふるさと納税の寄付先が5自治体以内で、ふるさと納税以外で確定申告が必要ない会社員(給与所得者)の場合には、ワンストップ特例制度といって、確定申告をしなくてもよいようになっています。

ふるさと納税の返礼品を見比べていると、お肉やスイーツなどの食品のほか、化粧品や工芸品、体験ツアーなど目移りしてしまいます。
すぐに利用するものが見つからなければ、地域で使える旅行券や商品券にしておいてもいいでしょう。

ひとつひとつの節約は小さくても、頑張らない節約なら無理なく続けられます。
老後の心配事を解消して、楽しい老後生活をめざしましょう。

タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)

36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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