21/12/19
定年後の働き方「再雇用」と「再就職」ではもらえるお金が全然違う
「人生100年時代」と言われるようになり、現在は男性の80%以上、女性の約60%が60歳以降も就業しているなど、定年以降も働く人が増えています。しかし、定年後に同じ会社に再雇用され働くとなるとそれまでより賃金が下がることがほとんどです。また、定年退職後一定期間をあけて再就職したいと考える人もいるでしょう。
では、60歳で定年を迎えた後、すぐ再雇用で働いた場合と、休んで失業手当を受け取ってから再就職した場合では、どちらがお得なのでしょうか。
定年退職後の働き方「再雇用」と「再就職」ではもらえるお金が違う
60歳で定年退職を迎えた後、会社に勤めて働く方法には、大きく分けて
①同じ会社に再雇用され勤務する
②定年退職し失業保険を受け、再就職する
の2つがあります。
2つの働き方の主な違いは「高年齢雇用継続基本給付金」を受け取ることができるかと、雇用保険の「基本手当」が受け取れるかどうかです。それぞれみていきましょう。
●①同じ会社に再雇用され勤務する
再雇用とは、定年後一度退職し、新たに同じ会社と雇用契約を結んで働くことです。再雇用された場合、60歳の時点の賃金よりも賃金が大きく下がってしまう場合があります。再雇用後の賃金低下率(60歳以降と60歳以前の賃金の差の割合)が一定以上になると受け取れるのが「高年齢雇用継続給付金」。65歳まで受け取ることができます。
具体的には、次の式で計算した金額が受け取れます。
・高年齢継続給付金の早見表
厚生労働省の資料より
・賃金低下率75%以上:支給なし
・賃金低下率61%超〜75%未満:実際に支払われた賃金額×支給率
・賃金低下率61%未満:実際に支払われた賃金額×15%
例えば、定年退職前の賃金が40万円、再雇用後の賃金が20万円だった場合、賃金低下率は50%ですから、20万円の15%の3万円が支給されます。65歳までの5年間では180万円受け取ることができます。
●②定年退職し失業保険を受け、再就職する
定年退職後でも雇用保険加入要件を満たし、働く意欲があればハローワークに登録することで基本手当(いわゆる失業手当)をもらうことができます。
基本手当の給付日数は雇用保険の被保険者期間によって異なります。20年以上であれば所定給付は150日です。また、基本手当の上限日額(基本手当日額)は離職時の年齢や離職前6か月間の賃金により異なります。60歳から64歳までの基本手当の上限金額は日額7096円ですので、最大106万4400円です。
また、この基本手当の受給開始から50日以内に再就職し、再就職先の賃金が60歳時点の賃金の75%未満になった場合は、1年間「高年齢再就職給付金」を受け取ることができます。高年齢再就職給付金の金額は最大で再就職先の賃金月額の15%です。
例えば、基本手当が上限(7096円)受け取れる方が50日間基本手当を受け取ったのちに再就職したとします。再就職先の賃金が50%に減って20万円の場合、1年間「高年齢再就職給付金」が15%受け取れます。つまり、基本手当35万4800円、高年齢再就職給付金36万円、総受取額は71万4800円となります。
今回の例では、すぐに再雇用で働いて5年間「高年齢再就職給付金」を受け取ると180万円、雇用保険の基本手当を受け取る場合は約106万円、そして基本手当と高年齢再就職給付金を受け取った場合は約71万円がもらえることがわかりました。これなら、定年後すぐに再雇用で働いたほうがお得ですね。同じ再就職でも、100万円以上の差がつくことがわかります。
定年退職後も働くとメリットがある
定年退職後に再雇用されて働く場合のメリットは、高年齢継続給付金がたくさんもらえるだけではありません。健康保険や厚生年金の面でもメリットがあります。
60歳で退職した場合の健康保険は、2年間は勤務先で任意継続できますが、保険料は全額自己負担になります。さらにその後は家族全員が国民健康保険に加入する必要があるため、扶養家族がいる場合は全員分の保険料の負担が多くなります。加えて配偶者が60歳未満の場合には国民年金の1号被保険者になるため保険料の納付が必要になります。
一方再雇用で働く場合は、それまで通り自身の厚生年金保険料を納付し続けます。配偶者の国民年金保険料の免除に加え、今後受給予定の厚生年金が増えていくといったメリットもあります。さらに、健康保険では事業主負担があるため、保険料は半分で済みますし、扶養家族の保険料の負担もありません。
定年後に働くことは、収入を増やすだけでなく、支出も抑えることにもつながるのです。
まとめ
人生100年時代と言われ、60歳以降も働く人は増えています。そのまま再雇用される場合はいいですが、一度退職して再就職する場合は、希望通りの仕事に就けるのか、希望通りの給与がもらえるのかはわかりません。今後の収入や、支出、さらに社会保険など総合的に考えるとできる限り長く再雇用で働く方が安心だと言えるでしょう。
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黒須 かおり ファイナンシャルプランナー(CFP)
女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてmoney&キャリアのコンサルティングを行う。幸せになるためのお金の知識など幅広い資金計画とライフプランのアドバイスを手がけている。金融機関にて資産形成のアドバイザーとしても活動中。FP Cafe登録パートナー
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