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21/10/23

相続・税金・年金

半世紀以上変わらない「モデル年金」 年金受給額の実態とはいくらズレているのか

政府が年金の現在の支給額や将来の見通しについて公表するとき、「モデル年金」がよく目安として使われます。これは、夫が40年間厚生年金に加入して平均的な収入を得て、妻は40年間専業主婦である世帯を標準的な世帯とした上で、その世帯に支給される年金額を算出したものです。しかし今の時代、この前提に違和感を覚える人は少なくないと思います。今回は、政府が標準的とするモデル年金の年金額と実際の受給額とはどのくらい違うのかを把握するため、夫婦の職業や年金種類等のパターン別に比較をしていきます。

半世紀以上変わらない専業主婦世帯の前提

「モデル年金」という概念が誕生したのは高度経済成長期の真っただ中にある1965年頃のようです。当時は未婚率も低く、出生率も2を少し超える水準で安定していました。

この頃、総務省の家計調査では「夫婦のうち一方が働き、子どもが2人いる4人世帯」を標準世帯と名付けて家計収支の算出を始めました。そして、「夫が働き、妻は専業主婦で、子どもが2人」の世帯を標準モデルとした税制や社会保障制度が整備されていきました。公的年金制度についても同様で、「夫が働き、妻が専業主婦」という標準的な世帯の年金額を「モデル年金」として定め、厚生労働省が毎年公表を続けています。

しかし、雇用の流動性が増す現在では、男性(夫)側は一度の空白期間もなく、40年間きっちりと会社員人生を勤め上げることはまれで、キャリアは多種多様化しています。一方、女性(妻)側も就業率はどんどん上昇し、1997年以後は専業主婦世帯よりも共働き世帯の方が多くなっています。2020年には専業主婦世帯が571万世帯なのに対し、共働き世帯はその2倍以上となる1240万世帯にまで増加しているのです。

●専業主婦世帯と共働き世帯(1980年〜2020年)

独立行政法人労働政策研究・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計」より

時代は昭和から平成、令和へと時代が移り変わっているにもかかわらず、この「モデル年金」の前提条件は、半世紀以上変わっていないのです。

標準的なモデル世帯の年金受給額

まずは、厚生労働省が発表した2021年度の年金額についてご紹介します。国が標準的とする厚生年金額の標準的なモデル世帯は、「夫が平均的収入(賞与含む月額換算で43.9万円)で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯」を前提として試算され、厚生労働省より以下のとおり公表されています。

●夫婦2人分の標準的なモデル年金額(月額)

厚生労働省発表「令和3年度の年金額改定について」より筆者作成

国民年金から支給される老齢基礎年金は、20歳から60歳まで40年間保険料を支払った人で、1人月額65,075円。また、厚生年金から夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額として220,496円と公表されています。

しかし現実的に考えて、夫が20歳から60歳まで40年間ずっと会社員で、妻が20歳から60歳まで40年間ずっと専業主婦という設定は相当無理があるようにも思えます。
​​​そこで、モデル世帯の年金受給額と実際の受給額とはどのくらい違うのかをパターン別に確認していきましょう。

専業主婦と共働き夫婦、実際に公的年金はいくらもらえるのか

夫婦2人で、実際に公的年金はいくらもらえるのでしょうか。会社員と専業主婦、自営業と専業主婦、夫婦ともに会社員の共働き、あるいは、妻が結婚前の一定期間働いているケースなどを例に挙げ、パターン別に算出していきます。実際の年金受給額は、物価の変動にも影響を受けるため、あくまでも概算としての試算結果としてご参考にしてください。

●夫婦世帯のパターン別年金受給額(例)

※計算方法
国民年金部分:40年間加入したものとして計算
厚生年金部分:「平均月収×55×勤続年数」の簡略的な計算式を使用

・パターン①「夫:会社員」×「妻:専業主婦(パート)」の場合
夫:20歳から60歳まで会社員(平均月収:40万円)
妻:20歳から専業主婦(もしくは扶養内でパート)
これはモデル世帯に最も近いケースになります。会社員の妻は無職、または扶養内でパートしている場合、国民年金の第3号被保険者となり、保険料を負担することなく、保険料納付済期間と扱われます。ほかに未納期間などがなければ、国民年金は満額の支給を受けられます。そのため、20歳から会社員の妻として専業主婦になった場合、保険料の負担なく、月額65,075円の年金を得られるのです。平均月収40万円で40年間働いた夫の収入のみで、夫側の厚生年金が88,000円ほどだとすると夫婦で受け取れる年金額は月額218,150円という試算結果となりました。

【結論】モデル年金より約2,300円少ない(ほとんど変わらない)
会社員×専業主婦(パート)の夫婦の合計金額:月額218,150円

・パターン②「夫:会社員」×「妻:会社員→専業主婦(パート)」の場合
夫:20歳から60歳まで会社員(平均月収:40万円)
妻:20歳から30歳まで会社員(平均月収:20万円)、31歳から専業主婦(もしくは扶養内でパート)
妻が会社員として働いている期間があると、その期間と収入に応じて厚生年金を受給できます。しかし、平均月収20万円で10年間働いていたケースでは、年金受給額は月額にすると11,000円です。大きく家計に貢献する金額ではなく、妻が20歳から専業主婦のケースと比較して大差ないと言えます。会社員の妻として専業主婦となった期間は、ずっと専業主婦のケースと同様に保険料を納付することなく保険料納付済み期間とされるため、国民年金は満額が支給されます。

【結論】モデル年金より約8,600円多い
会社員×会社員から専業主婦になった夫婦の合計金額:月額229,150円

・パターン③「夫:会社員」×「妻:会社員」の場合
夫:20歳から60歳まで会社員(平均月収:40万円)
妻:20歳から60歳まで会社員(平均月収:30万円)
会社員の共働き夫婦で、平均月収が夫40万円、妻30万円で40年間働いているケースでは、月額284,150円の年金を得られます。とはいえ、会社員の妻は仮に専業主婦であっても国民年金が受け取れること、公的な年金制度の1階部分となる国民年金は収入によらず一定額であることから、会社員と専業主婦の夫婦の2倍になるわけではありません。また、共働き夫婦は現役時代の生活水準が高いことが多く、年金だけで生活費を賄うには、生活水準を落とすことが課題となります。

【結論】モデル年金より約63,000円多い
会社員×会社員の共働き夫婦の合計金額:月額284,150円

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・パターン④「夫:自営業(フリーランス)」×「妻:会社員」の場合
夫:20歳から60歳まで自営業(平均月収:40万円)
妻:20歳から60歳まで会社員(平均月収:30万円)
自営業(フリーランス)の夫が受け取れる公的年金は国民年金のみであり、収入によらず一定額です。そのため、40年間の平均月収が40万円あっても、夫の年金受給金額は月額65,075円だけとなり、同じ収入の会社員よりも、受け取れる公的年金の受給金額は大幅に少なくなります。このケースでは妻が会社員で、平均月収30万円で40年間働いているため、妻の厚生年金を含めると、夫婦で月額196,150円が受給できる試算結果となりました。
【結論】モデル年金より約24,000円少ない
・自営業×会社員の夫婦の合計金額:月額196,150円

・パターン⑤「夫:自営業(フリーランス)」×「妻:会社員→専業主婦」の場合
夫:20歳から60歳まで自営業(平均月収:40万円)
妻:20歳から30歳まで会社員(平均月収:20万円)、31歳から専業主婦(扶養内でパート)
自営業(フリーランス)の夫が公的年金として受給できるのは、国民年金の月額65,075円のみです。妻は会社員として働いていた期間の分で厚生年金も受給できますが、平均月収20万円で10年間働いたケースでは、11,000円です。また、会社員の妻の場合、第3号被保険者として保険料を納付することなく、国民年金を受給できるのに対して、自営業の夫と専業主婦の妻の場合、保険料は2人分の支払いが必要になります。公的年金で受給できる額が少ないことから、定年のない自営業のメリットを活かして、長く働くことも選択肢のひとつです。
【結論】モデル年金より約79,000円少ない
・自営業×会社員から専業主婦になった夫婦の合計金額:141,150円

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まとめ

各世代における男女の平均賃金や厚生年金加入率の実績やその見通しは、半世紀でかなり変わっています。今回の試算では、モデル年金よりも金額が多くなったのは、パターン②の「夫:会社員」×「妻:会社員→専業主婦(パート)」と、パターン③の「夫:会社員」×「妻:会社員」の2つでした。

会社に属さないフリーランスという働き方も増えている今、多くの人にとって、将来受給できる見込みの年金額は、モデル年金の水準より低くなることが予想されます。特にパターン⑤「夫:自営業」×「妻:会社員→専業主婦」の場合、モデル年金の水準とは大きくかけ離れてしまうことが分かりました。

公的年金は一生涯受給できる大切な収入源ですので、なるべく受給できる年金額を増やす努力をしつつも、独自で自分年金づくりなど老後の資金準備をしておくという2本立ての対策がとても重要です。

KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士

長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。

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