22/05/04
私の年金が減るのはなぜですか?考えられる7つの理由
65歳になると受給できるようになる老齢年金。20歳から60歳までの40年間、国民年金に加入すると満額の年金をもらうことができます。しかし、実際に受け取れる老後の年金が満額よりも少ない額だったり、前年までと比べると明らかにもらえる年金が減らされていたりと、期待するほど受け取れないことがあります。そこで今回は、どうして年金が減ってしまうのか、その7つの理由をご紹介します。
国民年金保険料の支払いや手続きが原因で年金が減る場合
老齢年金は、国民年金保険料の支払いや手続きが原因で減額することがあります。老後の年金が減額される5つの理由をご紹介します。
●老後にもらえる年金が減る理由1:国民年金保険料の免除制度を利用した
失業などで収入が途絶えたり、所得が減少したりして国民年金保険料を支払うのが厳しくなったときは「保険料免除制度」を申請できます。申請後承認されれば、保険料の全部もしくは一部の支払いが免除になります。
免除の種類は「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」の4種類です。ただ、免除になった期間は老齢基礎年金の受給資格期間には含まれますが、年金額は免除割合に応じて下記のように減額となります。
・全額免除→保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1
・4分の3免除→保険料を全額納付した場合の年金額の8分の5
・半額免除→保険料を全額納付した場合の年金額の8分の6
・4分の1免除→保険料を全額納付した場合の年金額の8分の7
●老後にもらえる年金が減る理由2:国民年金保険料の納付猶予制度を利用した
20歳から50歳未満の本人・配偶者の前年所得が一定額以下になり、国民年金保険料を支払えなくなったときは「保険料納付猶予制度」を申請することができます。保険料納付猶予制度の適用が承認されれば保険料の支払いは猶予されます。ただし、猶予を受けた期間は老齢基礎年金の受給資格期間には含まれますが、受給額には反映されず、減らされてしまいます。
●老後にもらえる年金が減る理由3:学生納付特例制度を利用した
すべての人は20歳になると国民年金に加入することになっています。しかし、まとまった収入のない学生は国民年金保険料を納められないことがあるかもしれません。そんな場合は「学生納付特例制度」を利用すれば、納付を猶予してもらえます。この制度を利用した期間は老齢基礎年金の受給資格期間には含まれます。しかし、受給する年金は減額となってしまいます。
●老後にもらえる年金が減る理由4:国民年金保険料の未納期間がある
そもそも日本人は国民年金への加入が義務となっています。そして、きちんと保険料を納めている人に対して、老齢年金や障害年金、遺族年金が支払われます。しかし、保険料の未納期間があると、受け取れる老齢年金が減額されます。また、未納期間が長くなり保険料納付済期間が支給要件に満たないと、病気やケガで障害を負ったときに受給できる障害年金や、万が一のときに残された家族の生活を支える遺族年金が受け取れなくなってしまうのです。そればかりか、未納を放置していると催告や督促が行われます。無視していると最終的には財産の差し押さえが行われることもあるので注意が必要です。
●老後にもらえる年金が減る理由5:繰上げ受給をしている
原則的に、老齢年金は65歳から受給することになっています。しかし、繰上げ請求の手続きをすれば60歳から65歳になるまでの間に受給することも可能です。ただし、受け取れる年金は月単位で減額となります。減額率は「繰上げ請求した月から65歳の誕生日の前月までの月数×0.4%」で、最大24%も減額となるのです。また、減額率は一生変わらず、老齢基礎年金と老齢厚生年金は一緒に繰上げとなるため、もともと受給できるはずの年金額よりも減ってしまいます。
さらに繰上げ受給をすると、次のようなデメリットがあります。
・繰上げ請求をしたら取り消しはできない
・国民年金の任意加入や追納ができなくなる
・65歳になるまでは、雇用保険の基本手当や高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金を受給すると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になる
・65歳になるまでは、遺族厚生年金など他の年金を同時に受給することはできず、どちらか一方を選ばなければならない
・国民年金の寡婦年金が支給されなくなる
・事後重症の障害基礎年金を請求できなくなる
このように、任意加入や追納で年金を増やすことができなくなるだけでなく、本来なら受給できるはずの他の年金が受け取れなくなることがあるのです。
自分の働き方が原因で年金が減る場合
老齢年金は、自分の働き方が原因で減額されることがあります。
●老後にもらえる年金が減る理由6:在職老齢年金を受け取っている
今は人生100年時代です。長く生きていく分、定年退職を迎える年になってもそのまま働き続ける人もいます。このように、仕事を続けて厚生年金に加入ながらももらえる老齢厚生年金のことを「在職老齢年金」といいます。この場合、年金額は調整されて、老齢厚生年金の一部もしくは全部が支給停止になることがあるのです。
では、在職老齢年金が支給停止になるときの仕組みを見てみましょう。
まず、基本月数(※1)と総報酬月額相当額(※2)を合計します。
その額が47万円以下であれば、在職老齢年金は調整されず、全額受給することができます。しかし、47万円を超えた場合は、次の計算式で求めた支給停止額が在職老齢年金から差し引かれます。
・支給停止額(月額)=(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)×1/2
※1:基本月額とは、加給年金を除いた老齢厚生年金の月額のこと
※2:総報酬月額相当額とは、以下で求めた金額のこと
(その月の標準報酬月額)+(直近1年間の標準賞与額の合計÷12)
定年退職後も厚生年金に加入して働くことで収入を維持することはできますが、受け取れる年金は減額となることは頭に入れておきたいですね。
自分ではコントロールできないことが理由で年金が減る
これまでにご紹介してきた減額の理由は、自らが原因となっていることばかりですが、中には自分ではコントロールできないことが理由で年金が減ってしまうことがあります。
●老後にもらえる年金が減る理由7:物価や賃金の増減など社会情勢の変化
そもそも年金は、現役世代の納める国民年金保険料が使われています。しかし、現役世代の人口減と高齢者の人口増で、需要と供給のバランスが取れなくなってしまいました。そこで国は2004年の年金制度改革で、年金の給付水準を調整するしくみ「マクロ経済スライド」を導入、現役世代の負担を抑えるため、年金給付額の伸びが抑えられるようになったのです。
さらに、2016年に成立した年金改革法により、2021年4月からは名目手取り変動率がマイナスになり物価変動率を下回る場合、年金額には名目手取り変動率が用いられるようになったのです。このケースの場合、名目手取り変動率はマイナスになっていますから、おのずと年金額は減ることになります。
ちなみに、2021年度と2022年度は2年連続で年金額が減少しました。その理由は、両年とも名目手取り変動率が年金額に反映されたからです。
<2021年度の場合>
名目手取り変動率 ▲0.1% ←こちらのほうが物価変動率を下回っている
物価変動率 0.0%
→結果、年金額は前年より0.1%引き下げとなりました。
<2022年度の場合>
名目手取り変動率 ▲0.4% ←こちらのほうが物価変動率を下回っている
物価変動率 ▲0.2%
→結果、年金額は前年より0.4%引き下げとなりました。
つまり、物価が上昇せず賃金水準も上がらないままであれば、年金の給付水準も下げられるということ。賃金や物価の変動といった、私たちではコントロールできないことで年金額が減る場合があるのです。
まとめ
今回は、老齢年金が減る理由を7つご紹介しました。その理由の中には、社会情勢により私たちではどうにもならないことがあります。
けれども、保険料をきちんと納めることで老後の年金額が減るのを防ぐことができます。もし経済的な理由で保険料を納めることができないときは、必ず免除制度や納付猶予制度、学生なら学生納付特例制度を申請しましょう。
免除や納付猶予などの制度を利用すれば、10年以内であれば保険料を「追納」することができます。追納すれば、年金額を増やし満額に近づけることができるのです。そのためにも、経済的に余裕ができたら、できるだけ保険料を追納することをおすすめします。そして、何があっても保険料を未納のまま放置しないようにしましょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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