21/12/29
10歳差の夫婦は5歳差と比べて倍の加給年金がもらえるが、得ではない理由
年下の妻を持つ会社員の夫は、要件を満たせば加給年金を受け取ることができます。このとき夫婦の年齢差が大きいほど受け取れる加給年金の額が大きくなるため、お得に感じる人も多いでしょう。しかし、実際は年齢差が大きくなると、妻にある出費が発生するのです。そこで今回は、加給年金をもらえても年齢差によってお得にはならない理由を解説します。
年下の妻がいる会社員が65歳になったら受け取れる年金がある
厚生年金に加入する会社員で、年下の妻がいる人が受け取れる年金があることをご存じですか?その年金とは「加給年金」です。これは、厚生年金保険に20年以上加入している夫が65歳になったときに、一定要件を満たす場合に受け取れるものです。
加給年金を受け取るために必要な要件は下記の通りです。
●夫の要件
・厚生年金保険の被保険者期間が20年以上
・生計を共にしている65歳未満の配偶者または18歳未満の子どもがいる
●妻の要件
・夫と生計を共にしている
・65歳未満である
・前年の収入が850万円未満(所得の場合は655万5000円未満)である
・老齢厚生年金や退職共済年金、障害年金を受け取っていない
加給年金は、一定要件を満たす妻が65歳になるまで受け取ることができます。
その額は下記の通りです。
・加給年金額22万4700円+特別加算額16万5800円=合計額39万500円
(※2021年4月からの場合)
加給年金は自分から請求しないと受け取ることができません。該当するときは、年金事務所または年金相談センターへの届出が必要です。
5歳差夫婦と10歳差夫婦の加給年金
5歳差夫婦の場合、上で紹介した要件を満たしていれば、妻が60歳から64歳までの5年間、加給年金を受け取ることができます。
・受け取れる加給年金 約39万円×5年=約195万円
10歳差夫婦の場合も同様で、要件を満たしていれば、妻が55歳から64歳までの10年間、加給年金を受け取れます。
・受け取れる加給年金 約39万円×10年=約390万円
単純計算では、10歳差夫婦は5歳差夫婦の2倍の加給年金を受け取れるのです。
これを見ると、10歳差夫婦はお得に見えるかもしれません。しかし、10歳差夫婦には5歳差夫婦では発生しないある出費があるのです。
10歳差夫婦は加給年金があっても出費が増える?
ではここで、国民年金の基本をおさらいしましょう。日本では、誰もが20歳から60歳まで国民年金に加入することが義務になっています。自営業者やフリーランスは第1号被保険者となり、会社員は第2号被保険者となります。そして、会社員の夫に扶養されている妻は、第3号被保険者となります。
ただ、第2号被保険者の夫が60歳以降に会社を定年退職した場合、その時点で60歳になっていない妻は第1号被保険者への変更手続きをして、国民年金保険料を支払っていかなければなりません。
加給年金を受け取る5歳差夫婦は、夫が65歳を迎えたとき妻は60歳です。妻の国民年金の加入期間は終了しているため、保険料の負担はありません。しかし、10歳差夫婦の場合は、夫が65歳になっても妻は55歳ですから、妻には国民年金の加入義務があります。
このとき夫は国民年金の加入期間が終了しているので、その妻はこれまでのように第3号被保険者のままでいることはできません。あらたに変更手続きをして、第1号被保険者として60歳になるまでの5年間、国民年金に加入しなければならないのです。
その際の保険料負担は、以下のようになります。
・国民年金保険料 ※2021年4月からの保険料 1万6610円で計算。
1万6610円×12ヶ月×5年=99万6600円
10歳差夫婦は加給年金を10年間受け取れる代わりに、妻の国民年金保険料として約100万円の出費が発生するということです。10歳差夫婦は加給年金が多く受け取れるのでお得に見えますが、実際には大きな出費が待っているのです。
まとめ
これまで解説したように、会社員の夫は加給年金が受け取れる場合があるので、要件を満たす人は忘れず手続きをしましょう。また、夫婦の年齢差が6歳以上になる場合、夫が60歳を過ぎ定年退職した時点から、妻は自分が60歳になるまで国民年金保険料の負担が発生することを覚えておいてくださいね。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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