20/11/10
「積み立て投資は最強」ではない? 不利になる3つのケース
投資信託をつかって長期にコツコツ投資する積み立て投資は資産形成の王道です。
しかしそんな積み立て投資も、マーケットの環境によっては不利になるケースもあります。
今回は、意外と知られていない積み立て投資の思わぬ落とし穴をご紹介します。
王道の投資でも思わぬ落とし穴はある
資産形成をする場合、投資信託を使った積み立て投資が王道です。
近年では、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)やつみたてNISAなどの口座を使ってコツコツ投資をする人も増えてきました。
積み立て投資では、投資タイミングを判断することなしに、機械的に毎月決まった日に一定額の投資信託を買い付けることが可能。安いときにたくさん買い、高いときに少なく買うことで、結果的に購入単価を引き下げる効果が期待できます。
ただ投資信託の基準価額は相場に左右されるため、その環境次第では積み立て投資が不利になるケースも出てきます。
そこで資産形成の王道である積み立て投資にどんな思わぬ落とし穴があるのか?
ドカンと一括投資が得意なAさんと、コツコツ積み立て投資が性に合っているBさんに登場してもらい、3つのケースをご紹介しましょう。
積立投資が不利なケース1:基準価額が右肩上がりの場合
投資信託の基準価額が10000円、10500円、11000円……と右肩上がりに上昇を続けるケースの場合を見ていきます。
同じ投資信託に投資した場合、5ヶ月後二人はどうなったのか試算結果は以下の通り。
一括で購入したAさんは、投資元本は5万円、保有口数は5万口。
積み立て投資で購入したCさんは、投資元本はAさんと同じく5万円ですが、保有口数は45645口です。
5ヶ月後の評価額は、Aさんが6万円で、Cさんが54774円。表の通り、Aさんの評価額の方が大きくなっています。
なぜ、同じ投資信託を購入したのに、AさんとCさんで差がついたのでしょうか?
それは積み立て開始後に基準価額が上昇を続けると、高い基準価額で毎月投資信託を購入することになるからです。そうすると、購入できる口数(※)はその都度減っていってしまいます。
※購入できる口数=(10000口÷基準価額)×購入金額
投資信託の評価額は、多く口数を保有する方が評価額は高くなるために、最初に一括投資をしたAさんの方に軍配が上がるという訳です。
積立投資が不利なケース2:基準価額が上昇後下落した場合
同じように今度は一度基準価額が上昇したのちに下落するパターンを見てみましょう。
積み立て開始時点の基準価額は1万円。それが2ヶ月目に10500円、3ヶ月目に11000円まで上昇したのち、再び10500円、1万円と下落したとします。
一括で購入したAさんは、投資元本は5万円、保有口数は5万口。
積み立て投資で購入したBさんは、投資元本はAさんと同じく5万円ですが、保有口数は48139口です。
5ヶ月後の評価額は、Aさんが5万円で、Bさんが48139円。表の通り、基準価額は上下したもののAさんの投資元本は変わらないまま。しかしBさんはAさんに負けたのと同時に投資元本をも割り込む結果となりました。
積立投資が不利なケース3:右肩下がりの場合
3つめは、基準価額が右肩下がりとなった場合を見てみましょう。
一括で購入したAさんは、投資元本は5万円、保有口数は5万口。
積み立て投資で購入したBさんは、投資元本はAさんと同じく5万円ですが、保有口数は51034口です。
5ヶ月後時点の評価額は、Aさんが40000円で、Bさんが44723円です。評価額を比較すると、Bさんが勝っています。ただAさんもBさんも投資元本を割り込む結果となり、損をしている状態となってしまいました。
投資初心者にとっては強い味方
積み立て投資を行ったBさんの立場からすると、3ついずれも不利な結果となりました。とくにケース1では、Aさんのように、一括で購入した方が含み益も多かったことになります。
しかしマーケットは日々動いており、基準価額が上下どちらに動くかは、投資する段階では誰にもわかりません。
結果そうなったというだけで、もしも基準価額の下落が続いた場合は、ケース3のAさんのように、一括で買った場合の方が含み損が膨らむのです。
また9月以降の基準価額の動向次第では、評価額が増える可能性も十分あります。
さらに中長期的な視点で考えれば、積み立てを継続することで、積み立て効果がさらに効いてくるので、利益が増える可能性も高まります。
まとめ
マーケットは、誰も先が読めません。
そのときの状況次第では今回の3つのケースのように積み立て投資が不利になる場合もあります。
ただ落とし穴はあるとはいっても、投資タイミングを計る必要がなく機械的に投資を行える積み立て投資は、投資初心者の人、長期で資産形成を行いたい人、にとっては強い味方だといえるでしょう。
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岡田 禎子 「投資は面白い」がモットーなFP日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴しさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう、執筆とセミナーなどで活動中。
TVドラマ「インベスターZ」の脚本協力なども行なっています。
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