20/04/10
withコロナの時代、トランプリスクと世界経済の行方は

2020年11月に米国では大統領選を迎えますが、市場関係者たちはトランプ大統領が再選されるのか、要は、市場を揺るがすトランプリスクが続くのかを気にしている人が多いと思われます。
一方で、新型コロナウイルスの猛威はアジアから欧米に移っています。米国では、感染拡大がニューヨークを中心に広がり、ロックダウンの状況が続いています。新型コロナウイルスが長期化すればするほど、秋の大統領選への影響が大きくなることは間違いありません。
民主党の候補はバイデン氏が圧倒的有利
これまでの民主党予備選では、オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏が圧倒的有利な状況になっています。
3月10日に国内6州で行われた民主党予備選の結果、バイデン氏は4州で勝利し(執筆当時)、代議員数を806人に伸ばし、662人となったサンダース氏との差を広げました。
バイデン氏は当初アイオワ州とニューハンプシャー州で実施された予備選で大敗し、先行きが不安視されていました。しかし、2月29日のサウスカロライナ州の予備選で圧勝して勢いをつけました。また、3月3日のスーパーチューズデーでも、14州中10州で勝利し、一気に本命候補に名乗り出ました。
既に、同じ中道派の前サウスベンド市長のブティジェッジ氏、前ニューヨーク市長のブルームバーグ氏もバイデン氏支持にまわっています。指名候補を勝ち取るには、全米各州に割り当てられた代議員数3979のうち1991を獲得する必要があります。そして、17日に行われた予備選でも、バイデン氏はフロリダ、イリノイ、アリゾナ州でサンダース氏に圧勝しました。事実上、秋は「バイデンVSトランプ」の決戦となるでしょう。
民主党は「1つ」になれるのか
しかし、民主党代表はバイデン氏が本命でほぼ決まったとしても、秋の「本番」でトランプ大統領に勝てるかは未知数です。民主党に求められるのは1つになることであり、バイデン氏とサンダース氏との間で亀裂が激しくなるようであれば、それだけトランプ大統領に有利に働くことになります。民主党の中にも、中道派を中心にサンダース氏では勝てないとの見方があり、民主党が1つになれる可能性は極めて低いと考えられます。
トランプ大統領もそういった民主党の弱点を突く形で選挙戦を進めていくことは想像に難くありません。
トランプ大統領も、民主党がバイデン氏を本命として1つになって挑んでくることを警戒しているはずです。バイデン氏にも若者票をどう取り込むかなどの課題はありますが、副大統領の経験を武器に、この4年間のトランプ政権によって生じた課題(移民・難民と白人との亀裂、国際協調主義の衰退など)を強調していくことになると思います。
トランプ大統領が誕生して以降、市場関係者や投資家たちは、トランプ大統領の何をするか分からないという“不透明戦略”に悩まされてきました。2017年の北朝鮮危機、米中貿易摩擦、2020年1月のイラン危機などは “トランプリスク”としてたびたび市場関係者たちを動揺させました。
トランプ大統領の一期目の政策は、簡単に言うとオバマ政権の否定といえます。
2015年イラン核合意からの脱退、地球温暖化のパリ協定からの脱退など、オバマ政権時の外交成果をことごとくゼロに戻し、国際協調主義から米国第一主義に舵を切りました。市場関係者の中にも、オバマ政権の8年間はある程度安心して動向を見ることができた一方、トランプ政権になって突如怖くなったと感じる人もいるのではないでしょうか。
トランプ大統領はコロナ対策の成果をアピールできるのか
トランプ大統領が勝利した場合、当然ながら、トランプリスクがさらに4年間続くことになります。そして、仮にバイデン氏が大統領選に勝利すれば、何をするか分からないというトランプリスクはなくなることになります。しかし、バイデン氏がどう政権を進めていくかが分かれば、それに応じた新たな影響が市場に出ることでしょう。それはそれで、別種のリスクだといえます。
もちろん、冒頭でも紹介したように、新型コロナウイルスの影響がどうなるかも大きなカギになりつつあります。トランプ大統領は2兆ドル(230兆円)規模の大規模な経済対策を講じています。また、自動車大手ゼネラル・モーターズに対し国防生産法を適用し、不足する人工呼吸器の製造を命じるなど、これを一種に有事と捉え、そこでの成果を秋に持ち込もうとする戦略を取っています。
新型コロナウイルスが国内で終息の兆しが見えたとき、「俺はコロナに勝ったんだ! まさにアメリカファーストだ!」などと自画自賛する姿は想像に難くありません。新型コロナウイルスの問題が終息に向かえば、トランプ大統領は勢いを付けて秋に望みますし、反対に、この問題が長引けば、バイデン氏はトランプ政権のコロナ対策の課題をどんどん突いてくることでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスは大きな問題となっており、それが世界経済に大きな影響を与えることは言うまでもありません。トランプ政権による新型コロナウイルス対策の有効性、さらには選挙への影響について、注目していただければと思います。
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和田 大樹 OSCアドバイザー/清和大学講師
OSCアドバイザー/清和大学講師。岐阜女子大学特別研究員、日本安全保障・危機管理学会主任研究員を兼務。専門分野は国際安全保障論、地政学リスクなど。日本安全保障・危機管理学会奨励賞を受賞(2014年5月)、著書に、「2020年生き残りの戦略 -世界はこう動く!」(創成社 2020年1月)、「技術が変える戦争と平和」(芙蓉書房2018年9月)、「テロ、誘拐、脅迫 海外リスクの実態と対策」(同文館2015年7月)、「技術が変える戦争と平和」(芙蓉書房2018年9月)など。研究プロフィールはこちら。

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