20/06/24
繰上償還で実現損を生む「損失限定型ファンド」はそもそも買うべきなのか
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大による株価の大幅下落により、「損失限定型」の投資信託が相次いで繰上償還に追い込まれています。
「損失限定型」投信とは、基準価額に下限値を設定して、その水準まで下落したら繰上償還する仕組みを導入している投資信託のこと。損失が限定される安心感から、近年安定運用を求める個人投資家の注目が高まっていました。
しかし、突然の繰上償還は、資産運用の計画を狂わせますし、損失が発生した場合には、個人投資家に痛手を残します。そこで、もし投資信託が繰上償還した場合、持っている投資信託はどうなるのか、お伝えします。
運用が途中で終了する「繰上償還」
投資信託の繰上償還とは、通常の償還と違い、あらかじめ決まっていた信託期間が終了する前に、投資信託が償還される、つまり運用が途中で終了してしまうことをいいます。
繰上償還される理由は投資信託によって多少異なります。具体的には各投資信託の目論見書に記載されていますが、投資信託の資産総額が小さくなり運用会社が効率的に運用できないと判断した場合や、一定の条件を満たした場合などに繰上償還を行うことが予め定められています。この場合、条件が整うと自動的に繰上償還が行われます。
今回のような損失限定型ファンドは、最初から「基準価額が一定額未満に下落した場合」繰上償還を行うと予め定められています。例えば設定からわずか1ヶ月半の繰上償還となり話題となった「りそな・リスクコントロールファンド2020-02(愛称:みつぼしフライト2020-02)」は、当初信託期間は10年(満期償還日は2030年1月15日)でしたが、基準価額が繰上償還決定の基準値である9500円まで下落したことから、繰上償還決定となりました。
投資信託を保有している場合はどうなるか
一般的な投資信託が繰上償還を行う場合、運用会社は受益者(投信の保有者)の意向の確認を行う必要があります。意向の確認は運用会社が書面で告知して、異議申し立ての受付する形で行います。
投信を保有している場合には、「繰上償還のお知らせ」が運用会社から書面で送られてきますので、繰上償還を賛成するなら何もしなくて大丈夫です。もし運用の継続を望む場合は異議申し立て期間中に異議を申し立てます。受益者の3分の2以上の賛成を持って、繰上償還が決定します。
一方、「損失限定型」ファンドの場合は、最初から約款に予め償還の条件が明記されていますので、異議申し立てなどの手続きは行われず、自動的に繰上償還が行われます。
繰上償還が決定したらどうすべきか
保有する投資信託が繰り上げ償還となった場合、解約するか償還まで持つかは、購入時の価額から償還価額を引いた差がプラスかどうか? がポイントとなります。しかし、残念ながら償還価額は償還日の取引終了後に決定されるため、購入時の価額より利益が出ているかどうかは、償還日にしか分かりません。
一般的には、繰上償還が決まった場合は、組み入れ資産の売却→現金化のプロセスに入るため、償還日に向かって基準価額の変動も小さくなっていきますが、償還前に、新たに買いたい投資信託がある場合には、速やかに解約することをお勧めします。
「損失限定型」の場合は、例えば、先の「みつぼしフライト2020-02」の場合、基準値を下回ることなく繰上償還する「保証契約」が付いているため、償還価額が条件の9500円を割り込むことはありません。投資家は特別な手続きをしなくても、償還代金を受け取ることができます。また、申込期限までに申し込めば前倒しで換金される選択肢も用意されており、換金手数料もかかりません。しかし、「保証契約」がついていない投資信託は、償還価額が条件値を下回る可能性がありますので、注意が必要です。
こんな事態になる損失限定型はそもそも買うべきなのか
繰上償還となれば、予定していた運用ができず、別の投資信託を新しく探したり、別の方法での運用を再検討したりする必要が出てきます。また償還によって利益が出た場合は、税金を負担することになり、損失の場合は、実現損が確定してしまいます。これらは、繰上償還にならなければ生じなかった問題です。受益者にとって、繰上償還はデメリットでしかありません。
そもそも投資信託は長期でコツコツ積立がメインの投資商品。
今回の「損失限定型」のように、投資家として将来的に繰上償還する可能性が高いならば、実現損というリアルな痛みを負う可能性も高くなりますので、手を出さないほうが賢明ともいえそうです。
*本記事で紹介する個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として申し述べたものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。購入する場合は自己責任でお願い致します。
【関連記事もチェック】
・株式投資でやってはいけない、貧乏投資家10の習慣
・暴落・暴騰時にかなり役立つ!賢人が残した投資格言10選
・つみたてNISA、制度改正で2020年から始めれば累計920万円非課税投資ができる!
・NISA改正でどう変わる?「新NISA」の仕組み、非課税期間、投資額など変更点をプロが解説!【Money&You TV】
・「ほったらかし投資」を今すぐやるべき10の理由【Money&You TV】
岡田 禎子 「投資は面白い」がモットーなFP日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴しさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう、執筆とセミナーなどで活動中。
TVドラマ「インベスターZ」の脚本協力なども行なっています。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう