20/05/26
結婚後のお金の管理、お金のプロが教える7つの正解
結婚後は、自分のお金に加えて家のお金(家計)も管理しなくてはなりません。でも、これまで家計の管理をしてこなかったふたりがいきなり上手にできるわけもありません。何となく家計の管理をスタートした結果、お金が貯まりにくくなってしまうことも……。
そこで、ファイナンシャルプランナーとして多数のセミナー・講演を行い、家計のアドバイスをしてきた高山一恵さんに、結婚後のお金の管理の「正解」を聞いてきました。ぜひ参考にしてくださいね。
●教えてくれたのは…
高山一恵さん
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書は『税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『つみたてNISAでお金は勝手に増えていく!』(スタンダーズ)、『パートナーに左右されない自分軸足マネープラン』(日本法令)など多数。
結婚後のお金の管理の問題点は?
愛があればお金なんて関係ない! なんて、悠長なことは言っていられません。結婚し、一緒に生活するにはもちろんお金がかかります。「結婚後、お金の管理に悩む夫婦は多いですね」と高山一恵さんはいいます。
「どちらかというと、専業主婦の家庭よりも共働き家庭のほうが多くの悩みを抱えているようです。忙しくて家計管理がちゃんとできない、収入が多い割にお金が貯まっていないなどと、よく相談を受けます」(高山一恵さん)
専業主婦の家庭の収入源はひとつですが、共働きの家庭だとふたつになります。一見、共働きの家庭の方が収入も多そうですし、問題がなさそうに感じます。しかし、この「収入も多そう」ということが、家計に関してはかえってマイナスに働いてしまうことがあるそうです。
「お金が貯まらないと悩む多くの共働き家庭に共通しているのは、専業主婦の家庭に比べて支出のチェックが甘いということです。専業主婦の家庭よりも自由になるお金が多いからか、お互いの支出に無頓着なケースが多いのです。そうした共働き家庭の場合、お金のことはどうしても隠したがる傾向にあります。その理由は結局、自分のお小遣いを守りたいからなんですね。これでは、お金は貯まっていきません」(高山一恵さん)
結婚後にかかる費用は、毎月の生活費だけではありません。出産・教育・住宅購入・介護・老後など、まとまったお金のかかるライフイベントはたくさんあります。結婚後のお金の管理をしておかないと、あとで困ったことになりかねません。
「相手が貯蓄していると思っていたら、実はお互い好きなようにお金を使っていて、全然貯蓄できていなかった……ということもよくある話です。そうならないためにも、結婚後のお金の管理の方法については、早い段階からきちんと考えておいて、実践していくことが大切です」(高山一恵さん)
結婚後のお金の管理の正解はこれ!
では、結婚後のお金の管理はどのようにしていけばいいのでしょうか。高山一恵さんに7つ、挙げてもらいました。
●結婚後のお金の管理の正解①:お金の価値観をすり合わせる
新婚さんに限らず、すでに夫婦の方でも「家でお金の話はほとんどしない」ということが多いようです。そういう場合は、先にお金の価値観をすり合わせる作業が必要でしょう。その手始めとして、これからの人生をどんな風に過ごしていきたいのか、全体的なプランを話し合う機会を持つことが大切です。
「これまで話をしてこなかった夫婦なら特に、話を切り出しにくいこともあるでしょう。お金の話をしようとかしこまってしまうと、かえって不信感が募ってしまうかもしれませんので、肩ひじはらずに話してくださいね」(高山一恵さん)
●結婚後のお金の管理の正解②:共通の財布を作る
人生の全体的なプランがイメージできたら、共通の財布作りに取りかかりましょう。住居費、水道光熱費、通信費、食費、被服費、医療費……。家計の支出の種類はさまざまです。これらの費用は、夫婦のどちらが負担していますか。
・それぞれの財布型(住居費は夫、通信費は妻という具合に、項目別に負担)
・全額負担型(収入の多い方がまとめて負担)
・共通の財布型(夫婦の収入をいったん一つにまとめ、そこから負担)
家計管理の形は人それぞれですから、いろいろな方法があると思います。ただ、お金を貯めるという観点からいうと、共通の財布型がおすすめだと高山一恵さんはいいます。
「共働きの場合、一番多いのが「それぞれの財布型」でしょう。この方法は自由になるお金は多いのですが、相手の支出に無関心になりがちです。また「全額負担型」は夫婦の収入差が大きいときにはいいのですが、負担が少ない方が貯蓄をしないとお金が貯まりにくくなりますし、負担が多い方に不満がたまりやすくなります。その点、「共通財布型」なら、家計管理が一元化でき、お金の流れがわかりやすくなります」(高山一恵さん)
●結婚後のお金の管理の正解③:お小遣いは自分で管理
共通の財布型のポイントは、貯蓄やお小遣いもすべて共通財布から割り振ることにあります。こうすることで、毎月のお金の流れも貯蓄も「見える化」されるので、無駄なくお金が貯まりやすい傾向にあります。
ただこの方法は、自由に使えるお金が少ないと、不満を感じやすくなってしまいます。ですから、固定費や生活費など、家計の分だけを共通の財布に入れ、残りはお互い別々に管理するといいでしょう。
「自由度を増やすと、お互いの記念日にプレゼントを買ったり、食事に行ったりと、ちょっとしたゆとりが出せるでしょう。夫婦円満にはよいかもしれませんね」(高山一恵さん)
●結婚後のお金の管理の正解④:お金を貯めて買いたいもの・やりたいことを明確にする
これからお金を貯める、というときに大事なことは、お金を貯める目的をはっきりさせることです。夫婦で相談して、買いたいものややりたいことを明確にしてください。
「100万円を貯める!といっても、何のために貯めるのかをはっきりさせないと、予定外の出費がでてきた時にうまく線引きができずに貯蓄を取り崩してしまいかねません。また、お金を貯める目的がなければ、貯蓄のモチベーションを維持することも大変でしょう」(高山一恵さん)
●結婚後のお金の管理の正解⑤:お金は目的別に貯める
お金を貯める目的がはっきりしたら、お金を「日々出入りするお金」「使い道が決まっているお金」「将来のためのお金」に分けましょう。
「目的別にお金を分けるときに、それぞれ「いつまでに」「いくら必要なのか」が明確になると、貯蓄しやすくなります」(高山一恵さん)
●結婚後のお金の管理の正解⑥:お金は目的ごとに別の方法で貯める
お金を「日々出入りするお金」「使い道が決まっているお金」「将来のためのお金」に分けたら、それぞれ別の口座や金融商品、方法で貯めるという仕組みをつくりましょう。高山一恵さんによると、要点は以下のとおりです。
・日々出入りするお金とは、もしもの場合に備えるお金や日常生活費です。できれば生活費の6か月〜1年分は確保しておくこと。急な病気やケガで働けなくなったり、リストラや転職などが起こったりしてもあわてなくてすみます。お金を出し入れしやすい普通預金口座で貯めておくとよいでしょう。
・住宅や車の頭金など、5年以内に使い道が決まっているお金は使うまでに時間はありますが、使う時に元本が割れていると困ります。普通預金よりも少し利回りがよく安全性が高い定期預金や個人向け国債などが選択肢となるでしょう。
・老後資金など、将来のためのお金は、使うまでに時間の余裕があるので、元本が割れる可能性はあるけれど、大きく増える可能性がある投資信託(iDeCo・つみたてNISAなど)や株式、外貨などに預けるとよいでしょう。
「お金持ち夫婦は情報のアンテナを高く張っています。少しでも有利な商品があったら乗り換えたり、節税をしたりと、行動力があります。この行動力の差が、貯められるお金の差になっていると思います」(高山一恵さん)
●結婚後のお金の管理の正解⑦:必要な保険を見極める
日本人は保険に入りすぎているといわれています。保険は確かに万が一のときに頼りになるかもしれませんが、万が一を恐れるがあまり保険に加入しすぎていては、かえって保険料貧乏になってしまいます。
「結婚したばかりの夫婦の場合、必要なのは死亡保障よりもむしろ病気や怪我で働けなくなった場合の保障でしょう。ですから、優先順位としては、医療保険やがん保険などの医療保障を充実させるための保険です。また、働くことができなくなった場合の収入減に備えて、所得補償保険のような保険を選ぶのもいいでしょう。死亡保障を考えるのは、子どもが生まれたらで十分です。それも、貯金がたくさんあって、万が一のときに家計がきちんと回っていくのであれば、絶対に必要というものでもありません」(高山一恵さん)
また、保険で貯蓄を兼ねるという方も多いのですが、保険と貯蓄は分けて考えること。保険料の高い保険はたいてい貯蓄型の保険です。掛け捨て型の保険で保険料を抑えつつ、必要な保障を得るという発想が大切だと高山一恵さんはいいます。
「毎月支払う保険料は、家計の5%以内に収めるようにしましょう。商品にもよりますが、がん保険の場合、30代、40代ならスタンダードなプランには月3000円〜4000円程度で加入できます」(高山一恵さん)
まとめ
結婚後のお金の管理の正解について、確認してきました。一緒に生活する以上、お金の話はずっとついて回ります。これを機に、夫婦でお金の管理について話していただき、お金が貯まるようにしていきましょう。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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