18/08/21
毎月の支払いに追われる45歳独身女性、返済地獄からの脱出劇
日ごろ、ファイナンシャルプランナーとして個人の家計相談をお受けしていますが、お金に対する意識は人によって実に大きな差があることを実感します。
とてもしっかりと家計管理をしている人がいる一方で、一カ月にかかる生活費すら把握していない人もいるのが実情。家計の収支がきちんとわかっていないような人は、お金の失敗も少なくありません。
今回は、お金に無関心だったために借金を繰り返してしまった女性の事例をご紹介します。
曖昧なマネー意識がピンチを招く
東京在住のトモコさんは45歳独身。長野県出身で、就職を機に東京に引っ越してきました。2回の転職を経て、現在は食品を扱う輸入業者で、総務の仕事を担当しています。
手取りは30万円ほどですが、貯蓄はゼロ。それどころか毎月複数のカードローンやキャッシング、クレジットカードの支払いに追われて、資産はマイナスです。
トモコさんが家計相談に訪れたのは、毎月の支払いが厳しくなり、将来のことが心配になったからとのことでした。
家計相談には大きく分けて2つのタイプがあります。
ひとつは、相談に際して家計簿や預金通帳、保険証券などをまとめてきて、「〇年後にマイホーム購入をしたいと思うが、どうしたらよいか」、など相談の目的がはっきりしているタイプ。ただし、このタイプは少数です。
相談の多くはもうひとつのタイプ。「どうしたらいいかわからないが、このままではいけない気がする」といった、曖昧な不安を抱えているタイプです。
トモコさんも後者のタイプ。毎月の家計収支を聞いても、家計簿はつけていないのでわからないとのこと。給料の手取りが30万円ほどで、貯蓄がゼロなので、「支出も月30万円くらいじゃないかな」という意識です。
しかし、借金があるのですから、30万円以上は使っているはず。
じっくり話を聞いていくと、かなり深刻な状況でした。
返済は5社あわせて、給料の約半分!
給与明細やカードの利用明細、預金通帳などを確認した家計収支は、返済だけで給料の半分近くになってしまうものでした。
ある月の収支を、わかる範囲で書き出すと、次のようになります。
毎月5つのローンやカードの支払があり、この月は合計で14万9000円。給料の約半分が返済になっていました。
しかも、カードローンとキャッシングは毎月定額払いですが、追加の借り入れもしているようなので、その分の現金による支払は不明のままです。
トモコさんは、基本的な生活費以外の出費はほとんどクレジットカードや電子マネーで決済します。
洋服を買ったり、ヘアサロンに行ったりしたときの支払いはクレジットカードを使います。コンビニなどでちょっとしたお菓子やジュースを買うのは電子マネーですが、オートチャージに設定しているDクレジットカードの明細を見ると、たびたび3000円ずつのチャージがあります。しかし、何を買ったのかほとんど覚えていません。そのようなことに3万9000円も使っているわけです。
そのほかに、カードで支払うことのできない支出もあります。友達と食事などに出かけてワリカンにしたり、ご祝儀などを包んだりするときは現金です。そういう時は、カードローンやキャッシングを利用しているとのことでした。
トモコさんは賃貸マンションに住んでいますが、2年ごとの更新月には、更新料もキャッシングです。貯蓄がまったくできていないので、当然ではありますが、前もってわかっている支出なだけに、金利の必要なキャッシングを利用するのはとても損なことです。
トモコさんにとっては、これまでは貯蓄はできないものの何とかなってきたので、危機感がなかったようです。必要なお金はカードを使えばよく、カードローンやキャッシングは毎月定額払いなので、家計に負担もないと考えていました。
ところが、カードローンとキャッシングの借入残高を見て、驚いてしまったのです。カードローンは250万円、キャッシングが70万円にもなっていました。
トモコさんは45歳。のんびり返済していましたが、この調子では定年までに返せないではないかと怖くなってしまったと言います。
確かに、このままでは定年までに返すことは無理です。
収入よりも支出が多くては、返済をしても借金は膨らむばかりなので、老後資金を貯めることはおろか、借金を年金で返済することにもなりかねません。
支払いに追われる日々からの脱却
そこで、まずはクレジットカードをやめることから始めました。
手始めに、電子マネーのオートチャージをやめました。お菓子やジュースは買わなくても生活に大きな支障はありません。お金を使うことも生活習慣のひとつです。改善することは楽ではありませんが、必要なことです。
それから、クレジットカードではなく、デビットカードを使うように切り替えました。デビットカードは、金融機関の預金口座の残高以上には使えないカードです。使い方はクレジットカードと同じですが、収入以上に使う危険がありません。預金口座に今月使えるお金を残し、その範囲でやりくりをするようにしました。
そして、カードローンとキャッシングを完済しなくてはなりません。
トモコさんはコツコツと返済を続けています。もちろん追加の借り入れは厳禁です。しかし、絶対に追加の借り入れをやめなくてはいけないとわかっていても、つい使ってしまいがちなのがカードローン・キャッシングの怖いところです。当初、トモコさんからはカードを使わないように、預かっておいてほしいと頼まれましたが、こうした依頼は断っています。なぜなら、本当の家計改善につながらないからです。今後のためにも、自分の意思で新たな借金をしないことが大切です。
カードローン・キャッシングの返済は、ATMで繰上げ返済も可能です。
現在、トモコさんは給料日の前に、翌月分の生活費の予定を立てて、返済額を計算します。給料が入ったらすぐに予定通りの額を返済し、残りのお金で生活費をやりくりします。これまでとは違い、節約をしていかなくてはなりませんが、時々相談に訪れて返済の状況を確かめながら前向きに取り組んでいます。今では、月に6~7万円を返済にまわせるようになってきました。
生活習慣を変えることは、ひとりではなかなか難しいものですが、家計相談をきっかけに返済に追われる生活から脱却しつつあります。
カードローンやキャッシングは、あまりにも簡単に現金が手に入るので、軽い気持ちで利用する人が後を絶ちません。
しかも、金利は高く、少額ずつの返済ではいつまでたっても返済が終わりません。
いつの間にか返済に追われ、将来設計ができなくなってしまうことになる人もいます。
家計は自分で組み立て、守っていくことが大切です。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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