19/03/28
40歳女性、不妊治療をあと1回だけ…やめられずにほぼ貯金ゼロの妊活貧乏。今後どうしたらいい?
人生とお金の相談ダイアリー
今回ご紹介するマネー相談事例は、ファイナンシャルプランナーの稲村優貴子さんのところに実際にあった相談事例です。稲村優貴子さんは、ファイナンシャルプランナーとして15年以上、家計、ローン、結婚、離婚、転職、リストラ、保険などお金にまつわる悩みに3000件以上相談に応じています。
人生にはドラマのようなことが起こりえるもの。今回は、赤ちゃんをあきらめられない40歳女性、真由美さん(仮名)の事例をご紹介します。
▼真由美さんのプロフィール
年齢:女性 40歳(主婦)
家族構成:夫 43歳(食品メーカー会社員 手取り月収35万円、ボーナス50万円)
住居:2LDKアパート(地方の県庁所在地)
貯蓄:10万円
月の支出:35万円
[内訳]家賃8万円、水道光熱費1万円、通信・交通費3万円、食費・雑費その他7万円、外食・レジャー費3万円、保険料5万円、夫の小遣い3万円、不妊治療用資金5万円
相談内容
仕事にやりがいを感じていた真由美さん。バリバリ広告代理店で働き、年収は600万円を超えていました。
広告の営業先である食品メーカーの担当者だった夫と31歳の時に知り合い、真由美さん33歳・夫36歳の時に結婚。夫はすぐに子どもが欲しいと言いましたが、仕事が楽しく二人の時間も楽しみたいので、もう少し後がいいと伝えました。
35歳になり、そろそろ出産をと思ってから1年。授かることができず不妊治療を開始しました。体外受精(卵子・精子をシャーレで受精させてから子宮に戻す治療)は3回流産。顕微授精(卵子の中に直接精子を注入する治療)に踏み切りましたが、授かりませんでした。
体外受精は保険の適用外ですが、自治体によっては「特定不妊治療費」として助成金が受け取れます。しかし、治療費のすべてをまかなえるわけではありません。助成金はさまざまな検査や採卵投薬などであっという間になくなったので、貯金を持ち出して治療をしていきました。
また、妊娠しやすくなるという健康食品を取り寄せ、アシストハッチング(胚移植の際に受精卵の透明帯の一部を開孔して着床率の向上をはかる方法)などの治療のオプションを提案されるとわらをもすがる思いでプラスしていきました。
3年経過した39歳、仕事をやめ妊活に専念することを決意。
このとき、共働きだったので貯金はまだ300万円ありました。しかし退職後は貯金を取り崩しながらあと1回だけと治療を繰り返しているうちに、もう宗教のようにやめられなくなってしまっています。貯金も底をつき、仕事もやめ、ただむなしい日々を過ごしています。今後どうしていけばよいのでしょうか。
ファイナンシャルプランナー稲村優貴子さんのアドバイス
●長期的な視点でライフプランを考えて
やりがいのあるお仕事をやめてまで努力されてきたのですね。お身体も心もさぞしんどかったことでしょう。今までかけてきた費用と努力の積み重ねを考えると、あと1回ともう少しだけ頑張ってみたいお気持ちはよくわかります。
しかし、大切なのは真由美さんご自身と夫の将来です。人生100年ともいわれるように、これからの方が長いのです。ライフプランをあらためてイメージしてみましょう。
●深まった二人の絆はお金に変えがたいもの
目の前のことしか考えられなかった真由美さんは、5年後、10年後…老後、どんなことをするためにいくら必要か具体的に考えてみると、子どもがいない生活もイメージできたようでした。同じことに向かって力を合わせてきたご夫婦。お互いを思いやり、なくてはならない存在になっているようです。辛い決断でしたが、夫婦でどう過ごしていくか前を向いていくことになりました。
●40代で貯金10万円は超危機的状況
夫が一流企業にお勤めで退職金が1000万円でるとしても、このまま真由美さんが主婦のままでもらえる年金は月9万円ほど。夫の年金は月15万円の見込みなので、夫婦で24万円です。老後の生活費が30万円必要とすると、もらえる年金の不足額は6万円となります。毎月6万円を取り崩せば退職金1000万円も14年で底をついてしまいます。
老後は生活費以外にもケガや病気などもしもに備えるお金として、300〜500万円は余分に用意しておきたいところです。
彼女が下した決断:夫婦二人で生きていくためにフルタイムで働く
●就職活動を再開、フルタイムで働くことに
「仕事をやめてから赤ちゃんのことで頭がいっぱい。外出して子連れの家族を見るだけで泣いたこともあります。自宅では社会から取り残された気持ちになっていました。きっと病院に行ったらうつの診断がでていたと思います。もう少し頑張れば報われる。今度こそ…。夫婦二人で生きていくという選択から目を背けてしましたが、お金の相談をすることで前を向いていけそうです」と、就職活動を再開。フルタイムで働くことにしました。
●夫の給料で生活をやりくりし、妻の給料分を貯蓄へ
今まで夫の給料でやりくりできていたので、真由美さんの給料の手取り18万円をなかったつもりで貯めていくことになりました(内訳は夫9.5万円、真由美さん8.5万円)。60歳までの20年で4320万円。これからその預け先をiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)や保険、つみたてNISA(積立NISA)などに配分していきます。
準備したプランはこのような内訳にしています。
・iDeCo 3.5万円(夫2万円、真由美さん1.5万円)…老後資金用。
・つみたてNISA 4万円(夫2万円、真由美さん2万円)…基本的に老後目的だが60歳前でも出金できるように。
・個人年金保険 2万円(夫1万円、真由美さん1万円)…年金生命保険料控除を活用して老後資金形成。
・変額保険 2万円(夫1万円、真由美さん1万円)…一般生命保険料控除があり、死亡保障を確保しつつ、運用もできる。
・自動定期預金か財形貯蓄 6.5万円(夫3.5万円、真由美さん3万円)…すぐに出金できる資金として。住宅を購入することになれば頭金にもできるので当面の目標は300万円。
これによって、再びお金を貯めることができるのはもちろん、老後資金についても準備ができるようになりました。
人生には様々な出来事があります。楽しいことをするにも、悲しいことを乗り越えるためにも、そして生活するためにもお金は必要です。自分だけではどうしてよいかわからないこのような時も、ファイナンシャルプランナーはお客様に寄り添って一緒に考えていきます。
【関連記事もチェック】
・不倫の代償で150万円を支払った30歳女性。今後のライフプランはどうする?
・夫婦のお金は別管理。万が一ひとりになった時も踏まえた家計運営はどうすべき?
稲村 優貴子 ファイナンシャルプランナー(CFP︎︎®︎)、心理カウンセラー、ジュニア野菜ソムリエ
大手損害保険会社に事務職で入社後、お客様に直接会って人生にかかわるお金のサポートをする仕事がしたいとの想いから2002年にFP資格を取得し、独立。現在FP For You代表として相談・講演・執筆活動を行っている。日経ウーマン、北海道新聞などへの記事提供、テレビへの取材協力など各メディアでも活躍中。著書『年収の2割が勝手に貯まる家計整え術』河出書房新社。趣味は、旅行・ホットヨガ・食べ歩き・お得情報収集。FP Cafe登録パートナー
この記事が気に入ったら
いいね!しよう