23/06/09
「末日に退職すると厚生年金保険料の負担が多く損する」は本当なのか
会社の退職日が末日になると、厚生年金保険料の負担が1か月分多くなると聞いたことはありませんか?会社を退職して一時的に収入が途絶えることを考えると、できるだけ出ていくお金を減らしたいものです。そんなとき、保険料が1か月分多く徴収されるのは損をしているように感じてしまいます。そこで今回は、退職日が末日になると厚生年金保険料の負担が多くなる理由と、末日の退職は本当に損することになるのかどうか解説します。
退職日が末日だと1か月分、厚生年金保険料の負担が増える
会社を退職する日が末日の場合、退職月の厚生年金保険料を支払わなければなりません。それなのに、退職日が月の途中で末日ではないときは、退職月の厚生年金保険料を支払う必要はないのです。どうして退職日が末日になると、退職月の厚生年金保険料を多く支払わなければならなくなるのでしょうか?
こうなる理由は、厚生年金の資格喪失日にあります。会社を退職すると厚生年金の被保険者資格はなくなります。その資格喪失日は「退職日の翌日」なのです。
月の途中で退職する場合、厚生年金の資格喪失日は退職日の翌日になるので、退職月の途中で資格がなくなります。この場合、資格喪失日がある月の保険料は支払う必要がなくなるため、退職月の保険料は発生しません。
けれども末日に退職する場合、厚生年金の資格喪失日はその翌日になるので、翌月の1日になります。この場合、退職月は末日まで被保険者だったことになるので、保険料を支払わなければならなくなるのです。
厚生年金保険料は会社と折半になるため、月末に退職を希望する人に対して、末日の1日前を退職日に設定する会社もあります。そうすれば、会社側も折半した保険料の負担がなくなるからです。
保険料の負担が1か月分増えるのなら、会社の退職日を考える必要があるかもしれませんね。
厚生年金保険料の徴収ルールは?
ここで、厚生年金保険料の徴収ルールを確認しておきましょう。厚生年金には次のような徴収ルールが決められています。
・厚生年金被保険者の資格を失うのは、退職日の翌日
・厚生年金保険料は月単位で徴収し、日割り計算はしない
・厚生年金の資格喪失月の保険料は発生しない
・当月分の給与からは、前月分の保険料を徴収する
上記のルールによると、末日に退職する場合、退職月の給与から前月分の保険料に加えて、退職月の保険料も一緒に徴収されることになります。つまり末日に退職すると、保険料が2か月分天引きされるので、手取りが減るのです。こうなると、やっぱり末日退職は損をしているように感じるかもしれませんね。
保険料負担が1か月分多くても、決して損しているわけではない
末日に退職すると、厚生年金保険料を1か月分多く支払うことになるため、損をしているように感じる人も少なくないのではないでしょうか?でも、実際には損をしているわけではありません。
長い目で見ると、厚生年金の加入月数が1か月分増えるので、将来もらえる老齢厚生年金が増えます。日本の年金制度は2階建てで、厚生年金に加入している月数が増えるほど、2階部分の老齢厚生年金が増えるのです。それに、厚生年金保険料は半分を会社が納めてくれます。全額自己負担ではないので、決してデメリットというわけではありません。
退職日を末日にしたことで、厚生年金保険料の負担は1か月分増えます。しかし、その代わりに老齢厚生年金が増えるのです。もらえる年金が少しでも多くなるのなら、長い目で見ればお得なのではないでしょうか。
まとめ
会社を末日付で退職すると、厚生年金の被保険者資格の喪失日が翌月1日になるため、退職月の厚生年金保険料を支払う必要があります。しかし、末日の1日前など月の途中で退職すれば、退職月の保険料は支払う必要はありません。こうなると会社を末日付で退職すると保険料負担が1か月分多くなるので損をしていると感じるかもしれません。しかし、厚生年金の加入月数が1か月でも増えれば、将来もらえる老齢厚生年金が増えるので決して損をしているわけではないのです。退職日によって保険料の負担が変わること、またそうなる理由をぜひ覚えておいてくださいね。
ちなみに健康保険料も末日付退職の場合は、厚生年金と同じく保険料の負担が1か月分増えるので留意しておいてくださいね。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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