16/07/25
病気で退職した時の、失敗しないお金の話
ここ数年、キャリアプランニングを意識している女性が増えています。理想の自分の実現に向けて、課題を見つけ克服していくことは、これからも重要視されていくに違いありません。
今回は、相談事例をもとに、病気で退職した時の、お金について一緒に見ていきましょう。
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有給休暇を利用して検査と治療をスタート
筆者が相談を受けたユリさん(神奈川県在住、29歳、独身)は、将来へ向けて前向きな女性でした。ユリさんは都内の大学を卒業してから、金融関係の企業に就職していたのですが、ある朝ひどいめまいに襲われ、どうしても起き上がることができませんでした。その日は会社に電話をして急きょ休みをとり、めまいがおさまってきた午後に、近所のクリニックを受診しました。
ところが、そこでは診断がつかず、大学病院で精密検査を受けるよう勧められ、医師には紹介状を書いてもらいました。
翌日はめまいが軽くなったため、ユリさんは出社して上司と相談することにしました。大学病院で検査を受けるためには、会社を休まなくてはなりません。忙しい部署だったので、有給休暇をとることに、はじめは難色を示されましたが、早めに受診するように、クリニックの医師に指導されていることを話して理解を得ることができました。
検査の結果メニエール病※が疑われましたが、しばらく経過観察と治療が必要とのことでした。めまいはいつも突然なので、急な休みや早退などが増えていきました。そして、まじめな性格のユリさんは、「これ以上職場に迷惑はかけられない」と思いつめるようになってしまったのです。
※メニエール病は、内耳のリンパ液が過剰になり、めまい・耳鳴り・難聴がおきる病気です。ストレス・睡眠不足・疲労・気圧の変化・几帳面な性格などが原因であると考えられています。
休職期間に受け取れる「傷病手当」は、条件次第で退職後も受け取れる
ユリさんは退職を考え始めましたが、上司の勧めで休職をすることにしました。社会保険に入っていたので、休職して給料がなくても傷病手当が受取れます。金額は給料の3分の2程度ですが、なんとかやりくりできました。
メニエール病と確定診断されたユリさんは、薬を飲みながら生活改善を心がけました。ストレスと過労がいけないとのことで、のんびり過ごすようにしていくうちに症状はおさまってきましたが、会社に戻ればまた忙しく働くことになり、体調も逆戻りしてしまうかもしれません。考えた結果、ユリさんは退職を決心したのです。休職をして半年後のことでした。
さて、ユリさんが受取っていた傷病手当ですが、退職後にも受け取れる場合があります。退職日までに継続して1年以上健康保険に加入していて、傷病手当の受給があれば、退職してからも受取れるのです。もちろん医師の診断は必要です。傷病手当は最長で1年6ヶ月間受取れるので、ユリさんは退職後も収入が途絶えずにすみました。
「雇用保険の基本手当(失業給付)」の受給期間の延長手続きも忘れずに
ところで、会社をやめたら、雇用保険の基本手当(失業給付)を受取れる、と考える人も多いと思いますが、失業とは、「就職の意思と能力があるにもかかわらず職業につくことができない」状態です。つまり、病気で仕事ができない場合、失業給付は受取れません。
そこで、失業給付の受給期間を延長する手続きをしておくと安心です。失業給付は原則として、離職した日の翌日から1年間ですが、病気やケガで30日以上働けない場合は、最長3年間延長できます。
これで、傷病手当の給付が終わっても、失業給付を受給することもできるようにしておけます。
民間保険の「就業不能保険」が役に立った
今回のことでは、治療はすべて外来で、入院も手術もしていません。そのため、一般的な医療保険や生命保険から受け取れる保険金はありませんでした。傷病手当や雇用保険の給付で、まったくの無収入にならないのは会社員のメリットですが、受取れる金額が給料の3分の2では、やはり少なく、心細いものです。
実は、ユリさんは「就業不能保険」に加入していました。これは、病気やケガで、入院や在宅療養をして60日以上働けない場合に、給付金が受取れるものです。働けない間は月10万円受取れるコースだったので、傷病手当とあわせると生活費と治療費の心配をしなくてすむようになりました。
ユリさんは現在も療養中です。体調が良くなったらまた仕事をするつもりですが、これからは自分に合った働き方を重視するつもりです。「ゆっくり探そう、と思えるのも、社会保障と就業不能保険があったから」と穏やかに話してくれました。その笑顔を見て、この試練を糧に、さらに大きく成長していく可能性を感じました。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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