23/10/27
定年後70歳代、年金・生活費・貯蓄の平均はいくら?
最近では平均寿命がどんどん延び、90~100歳まで生きることも現実的になってきました。そうなると、本格的な年金生活が始まる70代以降、今ある貯蓄や公的年金だけで生活できるのか、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
今回は、定年後の70代の貯蓄額や受給できる年金、生活費を確認したうえで、余裕のある70代以降を過ごすためにやるべきことを4つ紹介します。
単身世帯と2人以上世帯、70代の貯蓄はどのくらい?
最初に70代の貯蓄額とその分布をデータで確認してみましょう。
●70代の貯蓄額
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(令和3年)より作成
70代の貯蓄額の平均は、単身世帯で1433万円、2人以上世帯で1905万円です。ただし、平均値は貯蓄額の大きい人たちの影響が大きく出ます。そのため、より実態に近い数字を確認したいときは、中央値(データを小さい順に並べた時の中央の値)の方が適しているといえます。70代の貯蓄額の中央値は、単身世帯が485万円、2人以上世帯が800万円となっています。
グラフの分布をみても、単身世帯の方が2人以上世帯よりも「金融資産非保有」の割合が高かったり、貯蓄額2000万円以上を持っている人の割合が少なかったりしています。単身世帯の方が、2人以上世帯よりも貯蓄額は少ない傾向にありそうです。
単身世帯と2人以上世帯、70代の年金額・生活費はどのくらい?
70代以上になれば、多くの人は年金での生活がメインとなります。年金額が思っているよりも少ないことで、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。実際、70代の方々がどのくらいの年金をもらっているのか確認してみましょう。
●国民年金・厚生年金の平均月額
厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より
表は年齢ごとの老齢年金の受給者数と受給額の平均をまとめたものです。70代の国民年金月額は5万6000円〜5万7000円ほど、厚生年金月額(国民年金含む)は14万1000円〜15万1000円ほどとなっています。
仮に夫が会社員、妻が主婦だった夫婦であれば、年金収入は夫の厚生年金・妻の国民年金を合計して20万円ほどになります。
また、総務省「家計調査報告(2022年)」によると、70代の1か月あたりの生活費は、
・65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯):14万3139円
・65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯):23万6696円
となっています。
なお、この支出には、社会保険料や税金は含まれていません。社会保険料や税金を含めるなら、上記の支出に10~15%ほど上乗せする必要があります。
また、家計調査の結果は、主に持ち家の方が対象となっています。賃貸にお住まいの方は、家賃分を追加して考えなければなりません。さらに、老後になれば、病気や介護などでさらに支出増加する可能性もあるでしょう。
そう考えると、老後生活を年金だけでまかなうのは至難の業といえるのではないでしょうか。ゆとりある余生を送りたいと思うのであれば、少なくとも50代になったら、相応の準備が必要といえます。
余裕のある70代以降を過ごすためにやるべきこと
余裕のある70代以降を過ごすためには、少なくとも50代からの準備が必要です。そのための取り組むべきことを以下に4つ紹介します。
●余裕のある70代以降を過ごすためにやるべきこと1:支出を管理する
70代以降は、多くの方が本格的に年金だけの生活になります。ですから、収入があったときと同じ金銭感覚のままで暮らせば、たちまちお金に困窮してしまうでしょう。そうならないよう支出を管理しましょう。
まずは、固定費(通信費、保険料、住宅費、水道光熱費、駐車場代、サブスクの定期購入代、スポーツジム会費など)で削減できるものがないかチェックしましょう。たとえば、保険料に複数加入しているのであれば、重複した保障を見直せば月々の負担が抑えられます。スマホは料金プランの見直し、格安SIMへの乗り換えで利用料を安くできます。スポーツジムに通うよりも、自治体主催のスポーツクラブの方が自宅から近く、月々の利用料も安く済ませられるかもしれません。また、解約し忘れたサブスクはありませんか?たとえ月々500円でも長く支払えば大きなお金になります。「解約手続きが面倒…」と思わず、スグ連絡を。
高齢になっての自動車の運転は危険性が高まります。なるべく公共交通の利用を心掛けましょう。地方などのように車がないと生活できない場合は、小型な車に乗り換え、維持・管理費の負担を減らしましょう。
固定費は一度見直せば、削減効果が高く、継続性もあります。月に1個ずつでも見直せば、1年後はかなりスッキリするはずです。
●余裕のある70代以降を過ごすためにやるべきこと2:70歳まで働いて収入を確保する
もし90~100歳まで生きるのであれば、たとえ70歳を迎えてもまだまだ「老後生活は長い…」と感じるはずです。「お金が足りるかどうか?」という不安を抱えながら生活するよりも「働けるうちは働き、収入を確保する!」ようにしてはどうでしょう。雇用側も、働く意欲があれば、年齢に関係なくという企業が増えています。今までの経験を活かした仕事であれば、歓迎されるはずです。
その際、週5日稼働は体力的にキツいというのであれば、週3~4日に減らすこと検討しながら、自分に合った働き方を探しましょう。
なお、厚生年金保険は、70歳になるまで加入できます。65歳以降、年金をもらいながら働く場合には「在職定時改定」の対象に。65歳から70歳までの年金額は、厚生年金を掛けた期間(前年9月から当年8月まで)を反映して、毎年10月分(12月受取分)から改定となり、年金額が徐々に増えていきます。
●余裕のある70代以降を過ごすためにやるべきこと3:年金の繰り下げ受給を選択する
厚生年金や国民年金は原則65歳からもらうことができます。しかし、もらう時期を繰り下げることで、1か月あたり0.7%年金額を増やすことができます。仮に、70歳まで繰り下げた場合は42%、最長75歳まで繰り下げれば84%も多くの年金がもらえます。
ただし、年金を繰り下げしている間は、当然、年金がもらえません。その場合は、2階建てになっている厚生年金と国民年金のどちらか一方だけの繰り下げであれば、可能かもしれません。
たとえば、65歳から受け取る老齢基礎年金が月額6万5000円の人が、老齢基礎年金だけを繰り下げ受給をした場合、
・70歳まで繰り下げ:6万5000円×1.42=9万2300円
・75歳まで繰り下げ:6万5000円×1.84=11万9600円
という具合に、年金額を増やせます。
このように、年金の繰り下げは、出来る範囲で検討するとよいでしょう。
●余裕のある70代以降を過ごすためにやるべきこと4:住んでいる場所を整備する
長い老後を安心して暮らすには、住む場所を心地よく整備しておくことが大切です。50~60代時点で持家の築年数がある程度であれば、台所、風呂場、トイレなどの水回りのリフォーム、バリアフリーにするなど検討しておいた方がよいでしょう。
50~60代の認識で、なぜか寿命はせいぜい80歳ぐらいと思いこみ「この先、短いのにわざわざ家を修理するなんて」という人がいます。しかし、思いの外長生きとなり、90歳を過ぎてから「水回りが不便、段差が危険…」と不満を漏らします。
また、賃貸にお住いの方は、自分が何年生きるか分からない中で、家賃を払っていけるのか、不安を感じずにはいられないはずです。
平均寿命が延びている現代ですから、50~60代のうちに、老後の住まいについて考えておきましょう。
老後の準備は50代から
生きていくには、いかなる場合も相応のお金が必要です。平均寿命が長くなり、年金だけに頼る生活が長くなればなるほど、老後の生活に困窮する長生きリスクの可能性が高まります。先々の憂いを現実のものとしないよう、老後の準備は少なくとも50代から始めるようにしましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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