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16/03/07

相続・税金・年金

パートで働く女性必見! 短時間労働者の社会保険適用拡大

「私の働き方は今後どうしたらいいでしょうか?」

週4日、1日5時間、パートで働く主婦のA子さん。年間の収入は103万円以下に抑えながら働き、健康保険と国民年金の保険料は、夫の扶養家族になっていて、保険料は支払っていない状況。

そんなA子さんは、勤めている会社から説明文書を渡されたとの事。「読んでみたけれど、さっぱりわからなくて…」と困って相談に来られました。
2016年(平成28年10月)から始まる「短時間労働者における社会保険の適用拡大」の影響で、このような経験をする人が今後も増えてくるでしょう。今回はこの改正について相談事例を踏まえながら解説していきます。改正で悩む女性のみなさんの力になれればと思います。

社会保険適用拡大後の加入対象者はどんな人?

現在、勤務時間が正社員の4分の3未満の人は、社会保険に加入する必要はありませんし、そもそも、社会保険に加入できないことになっています。従って、自分で健康保険と国民年金の保険料を支払うか、もしくは夫の扶養家族になるかのどちらかです。

ただし、以下の条件に全てにあてはまれば、2016年10月から社会保険に入らないといけないことになり、給料から「健康保険料」と「厚生年金保険料」が自動的に引かれることなります。

【加入条件】
① 厚生年金に入っている従業員が501人以上いる会社に勤務
② 1週間の労働時間が20時間以上
③ 給料が月8.8万円以上(年間106万円以上)
④ 1年以上働くと見込まれている
⑤ 学生ではない

まだ、勤め先から何も言われていなくても、この5つ全てに該当する場合、給料から「健康保険料」と「厚生年金保険料」が自動的に引かれる認識をしておかなければなりません。

改正の狙いは、勤務時間を増やして働いてほしいということ

現在、企業は労働力不足に陥っています。飲食業や介護事業などは特に不足しています。どの企業も優秀な従業員には、なるべく勤務時間を増やして働いてほしいと願っています。

A子さんの話に戻しましょう。週20時間働いている彼女も、この改正のタイミングでもう1日多く働いて、週25時間にして欲しいと言われ、それに伴っての社会保険加入の説明書もらったのでした。
Aさんがもらった書面には、次のような注意点が記載されていました。

・税金(所得税と住民税)と社会保険料の負担が発生すること
・配偶者控除が減るため、夫の税金が増える場合が大きいこと
・夫が勤務先から配偶者手当をもらっている場合、それが無くなる可能性があること

では、勤務時間を増やすべきか

A子さんの家庭背景を見てみましょう。彼女は40代、子どもは中学生と小学校高学年。反抗期ながら元気に学校に通っているとのこと。塾代が増えて、教育費の不安は大きくなるばかり。夫の会社から配偶者手当はもらっていないとのことですが、夫からは「103万円を超えるな」と言われています。

筆者:「今後どうしたいですか?」

A子さん:「仕事は楽しいので勤務時間を増やしてもいいかなと思っています。ただ、塾の費用が不安ですし、自分の老後も不安なので、毎月の手取りが減るのは厳しいです。」

妻が働くことには、収入だけで考えると4つの壁があると言われています。
① 100万円=住民税を払う
② 103万円=所得税を払う
③ 130万円=社会保険料を払う
④ 141万円=夫は配偶者(特別)控除が受けられない
2016年10月からは、③が106万円になる人が出てくるということになります。

世帯の手取りに大きく影響を与えるのは、「③の社会保険料を払う」です。

しかし、妻が厚生年金に加入することによって、妻の老齢年金は増加します。それだけではありません。健康保険には傷病手当金という所得補償の制度があります。また、年金には老齢だけでなく、障害年金や遺族年金があり、国民年金より保障が手厚くなるのです。

では、相談事例に戻ってみましょう。

筆者:「頑張って働いてみましょうよ!会社もA子さんの働きを認めてくれているのだから。会社からすれば経費の負担は増えるわけです。なのに、社会保険加入が必要な働き方を提示しているなんて、有難いことだと思いませんか?
将来受け取る年金も増えるわけです。目先の少し増える負担額よりも、しっかり働くことによる自分のスキルアップを考えてほしいです」

A子さん:「そうですよね。主人に話してみます!」

と、最初に来たときとは全く違う表情でA子さんは帰って行きました。
念のため補足しておくと、A子さんは夫の会社から配偶者手当をもらっていないこと、子どもも大きいので家をあけることに問題がないこと、仕事が楽しいこと、健康であることを確認した上での助言です。

個々の環境が違うので、全員にこのケースがあてはまるとは言えません。それぞれに応じた対応が必要なことは間違いありません。でも、現在どうなるかだけでなく、将来を見据えた長い目線で考えることがとても重要なのです。

小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター

社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。

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