24/12/24
【最新版】企業年金はいくらもらえるのか。受け取り平均額は?
企業年金は会社が独自で実施している年金制度。従業員が老後安心して暮らせるように、国民年金と厚生年金からなる公的年金に上乗せして支給するものです。会社の福利厚生の一種ですから、会社によって実施の有無や受け取れる金額、制度の種類などが異なります。
勤めている会社に企業年金がそもそもあるのか、どのような制度なのか、実はよく分かっていないという方も多いのではないでしょうか。また、将来どれくらい企業年金がもらえるかも気になるところです。
そこで今回は、企業年金の種類や受取額の平均、中途退職した場合の対応などについて解説します。
3種類ある企業年金
企業年金には、下記の3種類があります。
・確定給付企業年金(DB)
・企業型確定拠出年金(DC)
・厚生年金基金
なお、厚生年金基金は2014年4月から新規で設立できなくなり、実質廃止となりました。ここでは、確定給付企業年金と企業型確定拠出型年金について紹介します。
●確定給付企業年金
確定給付企業年金は、会社が掛金を出し、運用も会社が行う年金制度です。その名の通り、退職後に受け取れる金額があらかじめ決まっているのが特徴です。運用した結果、掛金が元本より減ってしまった場合、足りない分は会社が負担します。
なお、確定給付企業年金は、別法人の企業年金基金を設立して資産を運用・管理する基金型と、労使合意の年金規約を企業が作成し、それに基づき資産を外部に拠出して運用・管理する規約型の2種類があります。
●企業型確定拠出型年金
企業型確定拠出型年金は、会社が掛金を出しますが、運用は将来受け取る本人が行います。具体的には、企業と契約している運用管理機関が用意した複数の投資信託や定期預金などから、本人が好きな商品を選んで自己責任で運用します。
確定給付企業年金とは異なり、運用結果によって将来受け取る金額が変動するのが特徴です。
企業年金と退職一時金の違い
退職後に企業から受け取れるお金には、企業年金のほかに退職一時金があります。企業年金は退職年金とも呼ばれ、定期的に一定の金額を受け取る方法です。いっぽう、退職一時金はお金を一括で受け取る方法で、いわゆる退職金のことを指します。なかには、退職一時金と企業年金を併用している会社もあります。
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、退職給付制度がある会社の中で、退職一時金のみの会社は69.0%、企業年金のみの会社は9.6%、退職一時金と企業年金を併用している会社は21.4%でした。
企業年金の受取額平均はどれくらい?
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態 」によると、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者における企業年金や退職一時金の一人あたり平均給付額は下記の通りです。
<退職給付制度の形態別の平均給付額>
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態 」
より筆者作成
たとえば大学・大学院卒(管理・事務・技能職)の場合、退職一時金を受け取る人の平均受取額は1623万円なのに対し、企業年金を受け取る人の平均受取額は1801万円と高いことがわかります。また、退職一時金と企業年金を併用する場合、さらに受取額が高くなります。
続いて、確定給付企業年金と企業型確定拠出型年金に分けて、受取額の平均を紹介します。
●確定給付企業年金の受取額平均
企業年金連合会「令和4年度 企業年金実態調査」によると、2022年度末における確定給付企業年金の平均給付額(年額)は、62万6,000円となっています。
なお、先ほど述べたように、確定給付企業年金には基金型と規約型があります。それぞれの企業年金平均給付額(年額)は下記の通りです。
・基金型企業年金の平均給付額(年額):58.5万円
・規約型企業年金平均給付額(年額):98.6万円
●企業型確定拠出年金の受取額平均
運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料」によると、2024年3月末における、1人あたりの企業型確定拠出年金の平均給付額(年額)は、下記の結果となっています。
・年金で受け取る人の平均給付額:70万円
・一時金で受け取る人の平均給付額:492万円
中途退職した場合、企業年金はどうなる?
企業年金は会社ごとに行われている年金制度です。中途退職した場合、それまでに積み立てたお金は、一時金としてまとめて受け取るか、転職先の企業年金制度に移す必要があります。
●前職が確定給付企業年金だった場合
前職の企業年金が確定給付企業年金だった場合、転職先に企業型確定拠出年金があれば積み立てた資金を移すことが可能です(ただし一定の条件があります)。前職が確定給付企業年金、転職先も確定給付企業年金の場合、規約によって資金を移せる場合と移せない場合があります。規約で資金を移せない場合や、転職先が企業年金を実施していない場合、iDeCo(個人型確定拠出年金)や通算企業年金(それまで蓄えた年金を企業年金連合会に預け、将来年金として受け取るもの)に移すことになります。
●前職が企業型確定拠出年金だった場合
前職も転職先も企業型確定拠出年金がある場合、資金を移すことができます。前職が企業型確定拠出年金で、転職先が確定給付企業年金の場合、規約によって資金を移せるかどうかが決まります。規約で資金を移せない場合や、転職先が企業年金を実施していない場合、iDeCoや通算企業年金に移します。
<年金の持ち運び>
企業年金連合会「年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」より筆者作成
企業年金を活用して老後資産を準備しよう
企業年金の基礎知識や平均受取額について解説してきました。企業年金は会社によって制度が異なりますから、まずは勤め先の会社がどんな制度を導入していて、将来どれくらい企業年金を受け取れるのか確認することをおすすめします。給与明細などで情報を提供している会社もありますが、そうでない場合は人事担当者に問い合わせてみてください。
企業年金を導入していない会社や、企業年金があっても老後の資産が足りないと思われる方、自分でも老後資産を準備したいという方は、iDeCoや新NISAを活用するのもよいでしょう。
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木下七夏 Webライター
大学卒業後金融機関に勤め、個人のお客さま向けの営業を担当。退職後にFP2級を取得し、フリーライターに。FPで学んだ知識や金融機関勤めの経験を生かして、生活にまつわるお金の疑問を分かりやすく噛み砕いて解説する記事を作成している。
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