24/10/31
個人向け国債と定期預金の違いは?どちらが得?使い分け方はあるのか
2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除し、金利のある世界へと動き始めました。7月にも利上げが行われたことから、これからの金利上昇の期待が高まるとともに、個人向け国債や定期預金といった安全資産に注目が集まっています。
今回は、元本保証のガッチリ商品代表格の個人向け国債と定期預金について解説していきます。
個人向け国債とはどんなもの?
国や企業などが投資家からお金を借りるために発行する有価証券のことを債券といいます。このうち、発行元が国である国債は、名前は聞いたことがあるけれど、購入がむずかしいイメージがないでしょうか。そこで、購入単位を小さくし、国債を個人向けに買いやすくしたのが「個人向け国債」です。個人向け国債は、証券会社や銀行、郵便局などの金融機関で購入することができます。
個人向け国債は1万円から購入可能で、元本割れがなく、年12回毎月発行されています。
個人向け国債を購入すると、毎年の発行月と発行月の半年後の年2回、15日に利息が支払われます。そして満期になると、貸したお金(元本)が戻ってきます。
なお、個人向け国債の中途換金も1年以上たてばできます。ただし、中途換金すると直前2回の税引き後の利息分が差し引かれます。
現在発行されている個人向け国債には、固定金利の3年、5年、変動金利の10年の3つのタイプがあります。中でも、半年ごとに金利を見直す変動10年は、今後、基準金利が上昇していけば、運用中に金利が上がることも期待できます。反対に、基準金利が下落しても最低金利の年0.05%は保証されます。
定期預金はどんなもの?
定期預金は、あらかじめ預入の期間を決めて金融機関に預け入れる商品です。預入の期間はおおよそ1か月〜10年程度で、金融機関により取扱いのある期間が異なります。また定期預金には元本保証があり、預金保険の対象です。
定期預金は普通預金とくらべると金利が高い傾向にあるので、ある程度の金額になったら定期預金に預け替えるやり方をしている人もいます。預入期間が長いほど高い金利を得やすくなりますが、低金利の今はあまり違いがありません。
定期預金は、1円以上1円単位から預け入れできます。はじめに預け入れしたときの金利が満期日まで適用されます。満期日までは基本的には引出しができませんが、中途解約をすることができます。しかし、中途解約をすると利率も変わり、普通預金並みの「中途解約利率」や「期日前解約利率」になってしまいます。
利上げがあったとはいえ、定期預金はまだまだ利率が低い状態が続いています。そこで利用したいのがネット銀行やネット取引専用の定期預金です。通常の取引にかかるコストを削減できる分、普通の定期預金よりも金利が高くなっていることが多くあります。
個人向け国債が向いている人と定期預金が向いている人
個人向け国債と定期預金、どちらを選ぶべきでしょうか。自分の投資スタンスをさまざまな角度から確認して、どちらが向いているか検討してみましょう。
●高い利率で運用したいなら個人向け国債
利率の面からいうと、少しでも高い利率で運用したいと思っている人は、個人向け国債が向いています。
たとえば、2024年10月募集(11月発行)の個人向け国債の適用利率(税引前)は、
・変動10年…年0.57%
・固定5年…年0.46%
・固定3年…年0.34%
となっています。そのうえ、変動10年の場合は今後金利が上昇する可能性もあります。
それに対して、定期預金金利は銀行により多少異なりますが、大手銀行の場合1年で年0.125%、5年で年0.2%〜0.25%、10年で年0.3%〜0.4%などとなっています。キャンペーン金利(最初の一定期間のみ適用される金利)がある場合もありますが、それが終わってしまえば、個人向け国債のほうが高めです。
●積立で手間なく増やすなら定期預金
定期預金のなかでも、毎月一定額を自動的に積み立てる積立定期預金を利用すれば、毎月一定額ずつ自動的に貯めることができるので、手間がかかりません。一方、個人向け国債には積立で購入する仕組みがないため、積立で購入したければ毎月購入の手続きをする必要があります。積立で手間なく増やすなら定期預金のほうが向いています。
●中途換金・中都解約は定期預金のほうがスムーズ
定期預金は、ネット取引ができる銀行であれば、解約はネットで完結する場合が多く、中途解約がスムーズにできます。ただし、積立定期預金では、店頭かATMでの操作が必要な場合があります。また、定期預金の中途解約はいつでもできますが、普通預金並みの低い金利になってしまいます。
個人向け国債は、中途換金において金融機関で違いがあり、手間がかかる場合があります。たとえば、ネット銀行ではネット上の手続きで換金ができますが、店舗を持つ金融機関では来店しないと換金手続きができないこともあります。平日に時間が取れないような方は、中途換金の手続きがどのようになっているかも調べておきましょう。また、個人向け国債では、購入後1年を経過しないと中途換金ができないことにも留意しておきましょう。
●利息を再投資できる定期預金、受け取れる個人向け国債
投資スタンスも重要です。せっかく利回りのよい商品に投資しても、貯める意思を強く持たないと資産は増えません。
定期預金の場合、元利成長型にしておくと、元本に加え利息の部分も含めて再投資してくれます。しかし、個人向け国債は、半年ごとに利息を受け取ることができますが、満期時には、投資した元本のみの償還です。受け取った利息をそのままにしておくと、何となく使ってしまい増やすことができません。ある程度の金額になったら、個人向け国債を買い増したり、他の金融商品を購入したりするなど、積極的な行動を取る必要があります。
個人向け国債と定期預金どう使い分ける?
個人向け国債と定期預金の使い分けは、上で説明した商品ごとの特徴を踏まえつつ、「そのお金をいつ使うのか」という点で考えるとわかりやすいでしょう。
お金を使うまでの期間を「1~2年以内に使う短期資金」「5年以内に使う中期資金」「5年以上先に使う長期資金」と分類して考えてみます。
1~2年以内に使う短期資金であれば、定期預金が向いています。運用期間が短いですし、いつでも引き出すことができるからです。短い期間の定期預金で預け替えれば、金利上昇にも対応しやすくなります。
一方、5年以内に使う中期資金や、5年以上先に使う長期資金であれば、個人向け国債の変動10年を選びます。これらの資金は、使うまでにまだ時間があります。少しでも高い利率で運用したほうがよいでしょう。変動10年であれば金利の上昇にも追従できます。
個人向け国債と定期預金は、どちらも安全性が高く、「お金を絶対に減らしたくないけれどできるだけ増やしたい」というときに活用できる商品です。ただ、今回ご紹介したように、商品の特徴は異なります。「どちらかしか使わない」ではなく、ご自身の資金の用途を考慮して活用していきましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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